1. HOME
  2. ブログ
  3. マリオ教授の起業ゼミナール
  4. 起業資料編(東峰書房の書籍)
  5. 個人のための不動産売却の税金
  6. Q1 相談

Q1 相談

 

Q1 相談

不動産売却を考えた場合、不動産業者にはいつ頃から相談をした方がよいですか? 

目的達成の具体的な期限があるのであれば、すぐに相談されることをお勧めします。通常でも売却完了まで約半年かかることが見込まれます。
【解説】
 お客様との打合せでは、納期や方法を決めるほか、具体的に納期の障害となる項目がないかを確認します。
1、打合せの事項
(1)動機
 買換え(家族が増えた)、転勤、両親と同居、不要不動産(離婚)、合併統合、事業再生など。
(2)いつまでに(納期)
 納税のために、購入物件の代金支払いに合わせたい、税制上の恩恵を受けるために。
(3)だれが(物件所有者)
 本人、妻が、父、母が、叔父、叔母が、相続人全員で。
(4)何を(対象不動産)
ご自宅、別荘、相続不動産、投資用マンション、事業用物件、自社社宅、遊休不動産、自社社屋など。
(5)どのように(方法手段)
 指定流通機構(レインズ)への登録、ポータルサイトへの掲出、既存顧客へのご紹介、新聞の折込チラシへの掲載、不動産情報誌への掲載、などの媒体を利用する。(OPEN型)
 現在居住中なので…、ご近所に売却をしていることを知られたくないので…、任意売却(債権者との調整を図りながらの売却)なので…、会社の資産を売却するので、風評被害を避けたい。(CLOSE型)
(6)どこで売却(売却の窓口)
 売却依頼をする会社(デベロッパー系不動産会社、金融系不動産会社、電鉄系不動産会社、弁護士・税理士系不動産会社、管理会社系不動産会社、中小不動産会社など。
 と、かなりの情報をお聞きすることとなります。

2、売却の障害、納期の障害となる要因
(1)相続登記が未了
 不動産の登記については、未了であっても罰則や義務の定めはありません。しかし、不動産の売却をする場合には、不動産登記が未了では売却はできません。たとえば相続財産を売却する場合、売却前に、被相続人から相続人に土地や建物の不動産の名義変更手続きを行う必要があります。
「遺産分割協議書」を作成した場合でも、その分割時点では相続人間の合意が取れていても、時間が経過すると、「共有者の一人に二次相続が発生していたり」「後から分割の仕方に不満が出たり」と当時と状況が変化することがあり、その場合は簡単に相続登記を行うことが出来ません。通常の相続登記であれば、1 ヶ月程度で完了するところを、場合によっては登記の完了の目処が立たない場合もあります。
(2)測量図
 測量図の種類には、現況測量図と確定測量図があります。

現況測量図: 民有地について、隣地所有者等の立会いを得て、測量士、土地家屋調査士等の資格ある者により作製された測量図。国または地方公共団体が所有、管理している道路、水路等(官有地)との境界境の確定は必要ありません。
確定測量図: 官有地、民有地について隣地所有者等の立会い(境界確定)を得て、資格ある者によって作製された測量図。

 従前では、一般の住宅地、戸建も公簿売買(登記簿の面積での売買)での取引が行われていましたが、登記簿面積と実測面積はほとんどが一致していないため、後々にトラブルになるケースもあり、買主側がこれらの測量図の作製を求めることが多くなりました。これらの測量図は製作過程で、隣地、近隣に協力を得なければなりません。ふだんよりご近所付き合いをされていれば、協力も得やすくなりますが、全く交流がないと立会いスケジュールも遅れるばかりか、境界石等が不明なケースでは最悪の場合、境界のポイントも定まらないという事態になります。立会い日や、ポイントが定まらない理由には、「知らず知らずのうちに、こちらの塀が隣地に越境していた」「塀の所有がどちらかわからない」「先代より昔と境界石の位置が違うと聞いている」「隣地が所有している測量図をもとに割り出すと、現況のポイントがずれてしまう」「お互いが(先代が)好意を持っていない」等々、様々な理由が考えられます。
 また、相続税の物納申請や法人(宅地建物取引主任業者を含む)との取引となると、確定測量図を作製しなければなりません。確定測量図の作製は、国または地方公共団体の立会いが必要となりますので、確定測量図ができるまで、通常で3 ヶ月を要します。査定ポイントが定まらなければ、時間ばかり経過し、完成まで目処が立たなくなってしまいます。
(3)売却不動産の整備が必要
 売却不動産が借地ということであれば、事前に「売却する旨(譲渡承諾を得る)」を地主と話し合い、売却時の諸条件も含め決めておかなければなりません。自宅に接している道路が私道(個人、共有で所有している道路)の場合、上下水道、ガス管を新たに敷設する場合には、土地所有者の承諾が必要となります。認定外道路(公道として認定することが困難な道路、維持管理は市区町村)を除きます。また同じ私道でも、行き止まりの道路らしい私道(通常「位置指定道路」(建築基準法の第42条第1項第5号)と呼びます。)に面している場合、本来の役所に申請した図面と現況の道路形状が異なり、再建築をする場合、接道要件を満たしていない場合がありますので注意が必要です。
 越境物の撤去(ひさし、塀)などは、過去に取り決めが無い場合、新たに隣地当事者との取り決め(覚書)が必要となります。
(4)本人確認にともなう、成年後見制度
 平成20年3月の「犯罪収益移転防止法」の施行により、不動産売買の取引に関与する宅建業者は、売主・買主及びその代理人の本人確認を行い、本人確認記録の作成・保存、取引記録の作成・保存、「疑わしい取引」の届出を行うことが義務付けられています。したがって、不動産にまつわる事務手続きでも、本人確認が必要となり、たとえば売却の依頼を頂く際の、媒介契約時にも必要となります。法律行為を行う際には、行うに必要な判断能力が不可欠となり、通常不動産の売主は、未成年者ということはあまりなく、どちらかというと高齢者の方が多くなります。現在の市況では、売却の依頼をいただき具体的な買主をお探しするまで、長いものでは数年を要する案件もあります。従って、媒介契約時には、お元気で判断能力があった方も、売買契約時、最終の残代金・決済時には判断能力がなくなってしまった、という事態も考えられます。このような場合の問題の解決策として、「成年後見制度」を利用するという方法があります。

「成年後見制度」とは
 成年後見制度には、任意後見制度と法定後見制度があります。
任意後見制度: 将来、判断能力が不十分となった場合に備えて、「誰に」「どのような支援をしてもらうか」をあらかじめ契約により決めておく制度です。
法定後見制度: 判断能力が不十分になった場合に、家庭裁判所が、援助者として成年後見人等(成年後見人・保佐人・補助人)を選ぶ「法定後見制度」が利用できます。利用するためには、家庭裁判所に審判の申立てをします。本人の判断能力に応じて、「後見(判断能力がまったくない方)」、「保佐(判断能力が著しく不十分な方)」、「補助(判断能力が不十分な方)」の制度を利用できます。

 売却のお手伝いをさせていただく際には、これらのような事柄に注意しながら進めてまいりますが、状況によっては、解決に時間がかかる要件もあります。お客様の背景やご事情は、どれ一つと同じものはありません。
一つのお取引を終えると、そのお客様の個人の情報が全て分かってしまいます。逆に、これだけの情報を見ず知らずの担当者に開示するわけですから、信用できる人へのご相談をお勧めします。

 

Q2 査定~価格の査定は、どのような方法で行われますか?~

価格の査定は、どのような方法で行われますか?

机上査定(必要最低限の情報のみで査定しますので、短時間で試算できますが、概算の数字となります)と訪問査定 (お客様より出来る限りの資料をいただき、各所轄の役所へ の調査を行い、対象不動産の現地調査も行うため、時間を いただきますが、査定価格は、精度の良いものとなります) があります。遠隔地は机上査定となります。

【解説】 1、実際の実勢価格(時価)の出し方
 不動産の価格査定については、
①それと同等のものを新築した際に、どの位の費用がかかるか?(原価方式)
②それと同様の不動産がいくら位で市場に出されているか?(比較方式)
③その不動産を利用しどの位の収益をあげられるか?(収益方式)

これらを総合判断し、導き出します。
(1) 現地調査でのポイント
①建物については、
 日照、通風、外壁・基礎のひび、隣地との空間、天井クロスのしみ(雨漏り)、建てつけ、床鳴り、水周り設備の状況、排水、建具建材(アスベスト)、ひさしの越境
②土地については、
 周辺環境(騒音、近隣嫌悪施設、工場・店舗による土壌汚染)、隣地の高低差(擁壁)、塀の越境、井戸、ゴミ置場
③マンションについては、
 建物に加えて、お部屋の位置、天井高、スラブの厚さ(パンフレット確認)、剛性感、上下音、管理状態(エレベータ内、掲示板、エントランス、集合ポスト)、駐車場・駐輪場の空状況、インターネット環境
2、不動産の時価は?
 不動産(土地)には、4つの価格(一物四価)があると言われており、実勢価格(時価)、公示価格、路線価、固定資産税評価額がこれにあたります。実勢価格は現在の市況価格となり、宅地建物取引業法第34条の2第2項において、宅地建物取引業者が媒介価格または評価額について意見を述べるときには、その根拠を明示することを義務づけされており、その根拠として作成する査定書がこれになります。また、宅地建物取引業者が行う価格査定は、あくまでも媒介業務を遂行するに当たって行うものであり、不動産の鑑定価格に関する法律に基づく鑑定評価とは異なります。
 公示価格は国土交通省が発表する1月1日現在の標準地の価格で、公共用地取得や、一般的な土地売買の1つの指標のための算定の基準とされます。路線価は、相続税、贈与税の算定する際を土地価格となり、公示価格の8割程度となります。固定資産税評価額は、固定資産税、都市計画税、登録免許税を算定する際の価格で、公示価格の7割程度となります。
3、その他査定時の調査項目
(1)アスベストについて
 アスベスト(石綿)は、耐熱性、耐薬性、絶縁性等の工業上の特性に優れているため、昭和30年代から鉄骨建築物などの軽量耐火被覆材、住宅の断熱材、電化製品など多方面に利用されていました。しかしその危険性が指摘され、昭和50年には吹付けアスベストが原則禁止となり、その後はスレート、ブレーキパット、保温材等の含有材料として使用されていましたが、現在では製造・使用が全面禁止されています。不動産について特に問題になっているのは、飛散する恐れのある吹付けアスベストが使用されているかどうかです。一般住宅の場合、吹付けアスベストが使用されている可能性は低いですが、地下室や倉庫、駐車場などの鉄骨部分がある場合には、使用されている可能性があります。また、屋根材、外壁材、天井に防音・耐火ボード、床材等にも使用されている可能性があります。実際の売買の際には、含有されているようであれば、その除去費用(解体費用)を売主負担として、売買金額からあらかじめ控除することが多いです。
(2)土壌汚染について
 平成15年2月の「土壌汚染対策法」の施行により、土壌汚染が見つかり、土壌の飛散や地下水の飲用等により有害物質が人の体の中に入る可能性がある場合には、健康への影響を防ぐため、その経路を遮断する対策を行う必要があります。
 不動産を売却する場合、必ず土壌汚染の有無を調べる必要はなく、以下の場合に限られます。
土壌汚染の有無を調査する場合
1 有害物質を使用している工場や施設等を廃止するとき。
2 一定規模以上(敷地面積が3 ,000㎡以上の場合や改変面積が3 ,000㎡以上の場合)の土地の改変(土砂の掘削や宅地の造成)をするとき。
3 人の健康被害の恐れがあり、調査命令が出されたとき。
4 土地取引等に際して土地取引先から調査を求められる場合。

ただし、以下のような調査の猶予があります。
① 引き続き工事・事業場の敷地として利用される場合。
②職住同居型の小規模な工場・事業場の敷地において、引き続き当該設置者の住居用として利用される場合。
③ 操業中や鉱業権の消滅後、5年以内の鉱山の敷地(鉱山保安法に基づく措置が的確に行われている場合)。
 この調査は、環境大臣の指定を受けた調査機関(指定調査機関)に委託する必要があります。
 土壌汚染の有害物質の濃度の基準には、「土壌含有量基準」と「土壌溶出量基準」が定められています。この基準に適合しない土壌を「基準不適合土壌」といいます。調査により基準不適合土壌が見つかった場合には、まず対策が必要な状況であるかを判断します。法や条例では、有害物質が人の体へ取り込まれ、健康影響が生じる可能性がある場合には、健康影響を防止する対策を求めています。
対策と費用は…
 土壌含有量基準に適合しない土壌が存在し、人が土壌に触れる可能性がある。
→ 対策:舗装・盛土、掘削除去 費用:舗装・盛土(数千円以上/㎡)、掘削除去(5 〜10万円以上/㎥)
 土壌溶出量基準に適合しない土壌が存在し、周辺に地下水を飲用するための井戸等がある場合、人が有害物質を含んだ地下水等を飲む可能性がある。
→ 対策:封じ込め(原位置封じ込め)、掘削除去、原位置浄化(生物的分解) 費用:封じ込め(3 〜5万円以上/㎥)、掘削除去(5 〜10万円以上/㎥)、原位置浄化(生物的分解)(1 〜3万円以上/㎥)
 各対策の費用は目安となります。実際の対策費用は、汚染状況や施工条件によって異なります。
 これら対策費用も、事前に調査を行い、売主負担として、売買金額からあらかじめ控除されることが多いです。
(3)ハザードマップ(浸水被害等)
 「行政機関情報公開法」の施行により、各行政官庁はホームページに多くの情報を公開するようになりました。国土交通省のホームページには、水害などの自然災害に対しての備えのため「ハザードマップ」が公開されています。このハザードマップは、概ね200年に1回起こる程度の大雨を想定し、浸水の予想される区域や浸水の程度、避難所等が記載されています。
 また、地震防災マップとして、直下型地震(想定:マグニチュード6 .9、震源の深さおよそ10 km)が発生した場合の震度分布を作成し、揺れやすさと危険度を視認化したものも提供されています。
 査定・取引の際には、このようなことも考慮し進めていきます。

 

Q4 売却活動

中古住宅を売却する場合、お客様内見の際の注意点は?

「玄関」を整理整頓してください。やはり「第一印象」は後を引きます。

【解説】
1、概要
 それぞれ事由があり売却活動に入っているわけですが、常日頃時間の余裕のない方でも、まずお客様をお通しする際に「玄関」をすっきりと整理整頓するだけで印象が変わります。具体的には、(1)余計な物を置かない、(2)余分な靴を置かない、これだけでもOKですが、(3)生花(一輪挿しなど)を生けておけば更に印象は良くなります。
中古住宅となれば見学者は物件その物は当たり前ですが、「どのようにこの家が使われてきたか?」に関心がわきます。と同時に、「売主はどのような人柄なのか?」を見て購入の判断材料にします。このフィーリングは後々まで引きずり、お互い好印象ですとすんなりと価格・条件交渉が進み、契約から引渡し後までクレームもなく取引が完了します。
このような物件の場合、売却後も、売主買主で良好な関係が築かれていることが多いです。
2、その他気をつけること
(1)物入れの整理
 見学者は、居住中のお部屋を内見する際に売主に遠慮があり、見学者自ら物入れの扉や台所の棚をバタバタと開けたり閉めたりすることは少ないですが、見学者から希望されて主寝室のクローゼット、下駄箱、パントリーは、容量と奥行きの確認をするために開けることは多いです。また、ウォークインクローゼットがある場合、通常納戸として使用していても見学者は内見したい箇所となりますので、ある程度整理しておくことをお勧めします。希望された場所(物入れ、台所の棚、シンク下など)はなるべく見せることができるようにしておきたいものです。
(2)庭木
 売却の土地の規模によると思いますが、戸建住宅や、マンションの場合は、専用庭のある1階部分の物件を売却するときは注意が必要です。広く大きなお庭のある物件であれば、定期的に植木屋さんが入っている場合がありますが、中途半端な面積の宅地に関しては、手がまわらず雑草も伸び放題ということがあります。売却事情にもよりますが、見学者にけっして良い印象を与えません。特に売主が見学時に立ち会っていない場合、見学者は売主や物件にマイナスのイメージを膨らませてしまいます。このような場合、雑草だけでも処理すると印象ががらりと変わります。
(3)ご近所
 見学者から売主へ、よく出る質問として、「ご近所の方はどのようなご家族ですか?」「買い物の便はどうですか?」等を聞かれることがあります。これは物件そのものもそうですが、不動産売買は外的要因にも大きな影響を受けるということです。売主は普段より当該地に住んでいるため、その環境が当たり前になっていますが、欠点や少々気になることがあれば、担当の不動産業者に事前に相談をしてください。極端な例ですが、「近くにゴミ屋敷と言われている家がある。」「階下の方が、音に異常に神経質。」「不特定多数の人の出入りがある。」等、売買する上で、宅地建物取引業者が作成する重要事項説明に盛り込むべき事項に該当する可能性があります。お話が進み契約に向けて作業を進めていくと、担当の不動産業者より、これら重要事項説明書に記載すべき事項をヒアリングされます。この重要事項説明は契約が成立するまでの間に買主へ説明し、重要事項説明書を交付することとされていますので、契約の直前に重要事項が追加されると、「そんな話は聞いていない。」「そうであれば購入を検討していない。」と契約が不調になってしまい、今まで費やした時間が無駄だったということになりかねません。

 

Q5 不動産売買契約

よく言われますが、「仮契約」とは何ですか?

仮の契約はありません。実際の契約となると、契約時と残金時(引渡し時)と2回に分けることが多いため、契約時を「仮契約」と思われる方が多いようです。

【解説】
 契約は、売主買主当事者の意思表示が合致することによって成立します(諾成契約)。契約書の作成は、契約の成立にとって必要ではありません。
契約書は、当事者が契約内容に誤りがないことを認めて署記名押印し、後のトラブルの防止を目的としています。
 その他契約書に解除の条項として、盛り込まれる主なものを以下に記載します。
(1)手付解除
 契約成立後、相手方が契約の履行に着手するまでは、契約を自由に解除することができます。契約時に買主は売主に手付金を交付しますが、この解除を利用する場合、売主は受領済みの手付金を返還し、更に同額を買主に支払い(手付倍返し)、買主は売主に交付した手付金を放棄して、それぞれ契約を解除することができます。なお、当事者の一方が解約したことによって相手方に損害が発生しても、特約がない限り、手付金とは別に損害賠償を請求することは出来ません。この期間は契約から1 ヶ月位を目処に確保します。
(2)融資利用特約(ローン条項)
 買主の購入資金のなかで、売買代金の一部に金融機関等の融資を利用する場合、融資の一部または全部について否認されると、買主は売主に売買代金を支払えません。当初より融資を受ける前提であれば、あらかじめ融資が否認された場合の措置を契約書の条文に盛り込みます。具体的には、契約日から最長1ヶ月の期間を設定し、この期間内に予定金額の融資が受けられなかった場合には、契約が白紙解約になります。
(3)違約解除
 契約の相手方が、その債務の履行をしない場合に、不履行の原因が相手方の責めにある場合、債務不履行の責任を問うことができます。 実際の契約書の条文では、「売主、買主は、その相手方が売買契約にかかる債務の履行をおこたったとき、その相手方に対し、書面により債務の履行を催告したうえで、売買契約を解除して違約金の支払いを請求することができます。」とあります。この違約金の額については、手付金の額、売買代金の10 % 〜20 %と契約前に取り決めをしておきます。また、解除によって実際に生じた損害額が違約金を上回ったり、下回ったりした場合でも、相手方にその増減を請求できない、と記載されます。
(4)危険負担
 不動産のような特定物についての危険負担は、「売買契約では、物の引渡しを求める債権を有する買主の負担」(危険負担の債権者主義)とされています。たとえば、売買契約締結後、隣の建物が類焼し、そのもらい火で建物が焼失してしまった場合、引渡し時期が先で買主は建物の引渡しを受けていないときでも、その損失をすべて負担し、代金金額を売主に支払う義務を負います。売主は建物が焼失した以上引渡しの義務をまぬがれ、他の同じような建物を代わりに引き渡すことも、損害賠償を支払うことも必要とされません。しかし、実際の不動産取引では、売主が危険を負担するように変えるための特約(債務者主義の特約)が用いられています。契約書では、「買主が契約締結の目的を達することが出来ない場合は、契約を解除することができる。」とすることが多いです。
(5)瑕疵担保責任
 売買不動産について、買主はもちろん売主も知らない重大な欠陥が引渡しの後判明した場合も、危険負担同様「買主が契約締結の目的を達することが出来ない場合は、契約を解除することができる。」と記載されます。詳しくは、Q8をご覧ください。

 

Q7 残代金の授受、引渡し、書類の提出、各種諸費用の清算

代金を頂く際の注意点は?

買主より頂く残代金は、取引内容によりますが、現金、送金、預金小切手となります。

【解説】
1、概要
 買主より頂く、手付金残代金で全ての清算を行います。金種というのは、一般には授受される通貨の種類を指しますが、不動産取引においては、現金(送金)か小切手かとの区別に使用されることが多いです。売買の際に不動産業者が仲介として入っていれば、売主の抵当権の抹消手続き、残債、買換えであれば買換え先への送金、その他精算金についてもすべて別々に分けるアドバイスをしますが、送金先の銀行が統廃合により名称等変更されているケースがありますので、再度の確認が必要です。残代金の小切手に関しては、パーソナル小切手ではなく、預金小切手となります。

2、その他気をつけること
(1)預金小切手について
 預金小切手は振出人が銀行支店名になっている小切手で、通常「ヨテ」と呼んでいます。このヨテは銀行が振出人となっているので、不渡り等の間違いがなく支払いを受けられ安全と言われています。売買代金に支払われる小切手には、通常小切手の左隅に横線、線引(銀行、BANK、銀行渡り等の文字が入ります。)を入れます。この横線を入れることにより、所持人から取立を依頼された銀行、支払銀行と直接取引のある人にしか支払えないこととなっているため、その小切手の支払いが誰に行われたかが分かり不正使用の防止になります。また現金化するには、手形交換所における決済等の手続きがあるため、日数を要することに注意が必要です。この日数は取引依頼日の翌日から起算して、銀行の2営業日目の午後に現金化されます。また遠隔地の手形交換所決済の小切手はさらに日数が必要となります。したがって、売却代金を買換え先の代金に充当する場合、同日決済であれば、金種について事前の調整が必要となってきます。
(2)諸費用の清算について
 不動産売買契約書には、各種負担金等の諸負担については、「引渡完了日の前日までの分を売主の収益または負担とし、引渡完了日以降の分を買主の収益または負担として、引渡完了日において清算します。」と謳われています。したがって、年額のものも月額のものも、それぞれ日割りの清算をします。清算するものは、(1)固定資産税・都市計画税(2)地代(借地)(3)管理費・修繕積立金(マンション)(4)共用部分の電気料金・水道料金(収益物件)<5>対象不動産からの果実(賃料・広告収入、施設賃貸収入)などです。
また、電気・ガス・水道の清算については各担当の事業所に連絡をして、引渡し当日にメーター清算にすると、掃除等での水の使用や、引渡し時の事前確認でのエアコンの使用に重宝します。
(3)固定資産税・都市計画税の清算(東京23 区内の場合)
 不動産売買契約で土地の上に古屋がある場合、完了引渡し前に売主側で建物を取壊すというケースがあります。たとえば、今年に売買契約を終え、来年に引渡しというスケジュールであった場合、取壊すタイミングを今年にしてしまうと、来年の1月1日時点で建物がないため、来年の固定資産税・都市計画税の清算は更地の課税標準額となってしまいますので、金額の上昇となり注意が必要です。また、この課税標準額には免税点があり、市区町村の各区域内に、同一人が所有する固定資産の課税標準額の合計額が、土地(30万円)・家屋(20万円)に満たない場合には課税されません。
このように古屋でも、あれば役に立つ場合があります。

 

Q8 売却不動産引渡し後の負担

負担の期間は?

一般の取引であれば、引渡し完了日より3 ヶ月以内もしくは、売主買主間で取り決めます。

【解説】
1、概要
 一般の土地戸建取引において、売買の目的物に通常の取引上の注意では発見できないような隠れた物質的欠陥があったときには、売主は※瑕疵担保責任を負います。
この責任を追及することができるのは、善意(瑕疵の存在を知らなかった)の買主だけとなります。この善意の買主は、損害賠償を請求することも出来ます。ただし、買主は、瑕疵を知ったときから1年以内に権利を行使しなければなりません。
また代金減額の請求は、特約がない限り認められませんと規定されていますが、実際の取引では特約条項を設け、物件引渡し後の負担期間を、公益社団法人全国宅地建物取引業協会連合会の契約書では、売主買主間で取り決めを行うようになっており、一般社団法人不動産流通経営協会の契約書では、土地と建物の基本性能に限定し、引渡し完了日から3 ヶ月以内という期間が設けられています。
 ※瑕疵(かし)とは、欠陥を言います。その物が備えていなければならない一定の性質、性能を有していないことを指します。
民法では売買契約の瑕疵担保責任をこのように定めています。
<1>目的物に「隠れたる瑕疵」があること。
 「隠れたる」というのは普通の注意を払っても発見できないことを言う。
<2>責任の内容は、損害賠償。重大な瑕疵で契約の目的が達せられない場合は契約解除。
<3>瑕疵の発見期間は、引渡し後何年という制限はなし。ただし責任追及は、瑕疵発見後1年以内。
<4>売主の故意、過失は不要。無過失責任。

2、その他気をつけること
(1)売主が宅地建物取引業者の場合
 目的物の引渡しの日から2年以上となる特約をする場合を除いて、同条に規定するものより買主に不利となる特約は無効となります。この2年以上という期間は、不動産取引において実際に買主が買受けた不動産について、2年程度を要すれば隠れた瑕疵を発見できるという考え方があります。
(2)物件状況確認(報告)書、付帯設備表への記載
 この書類は重要です。不動産業者に売却の依頼をする際に、媒介契約の締結と同時に物件状況確認書、付帯設備表への記載依頼があります。これらの書類は、現在お住まいの不動産(所有不動産)について、所有者でないと分からない物件の状況を記載する書面となります。例えば雨漏り、シロアリの害、主要な部位の木部の腐食、給排水管の故障、周囲に嫌悪施設があるのか?…等。また、設備の操作癖…等。売主と買主が、内見から売買契約を結ぶまでの期間は短いことが多いため、その短時間に細部の(実は重要な)諸設備については、打ち合わせが出来ないことが現状です。
したがって、これらの書類を事前に、詳しく、正確に、偽り無く、記載しておけば、内見、交渉段階で検討者に告知できますし、遅くとも買主との売買契約時には告知できます。この告知により後々のトラブルの防止に役立つと同時に、買主との売買契約もスムーズに取り交わせることとなります。

 

Q10 収入金額と収入すべき日

私は、所有している土地を売却するため、11月30日に売買契約を締結し、手付金500万円を受け取りました。
実際に土地を引渡し、残金4,500万円と固定資産税の清算金10万円を受け取るのは来年の1月15日です。
この場合、譲渡所得の申告はいつ行えばよいのでしょうか。

原則として、来年の譲渡所得として申告しますが、今年の譲渡所得として申告することもできます。
なお、譲渡所得の収入金額は、固定資産税の清算金を含めた5,010万円となります。

【解説】
 譲渡所得の申告は、資産を譲渡した日の属する年の翌年3月15日までに行います。なお、資産を譲渡した日(収入すべき日)とは、原則として売買などの譲渡契約に基づいて資産を買主に引渡した日をいいますが、売買契約などの効力発生日(契約締結日)に譲渡があったものとして申告をすることもできます。
ご質問の場合、実際に土地を引渡し、残金を受け取るのは来年の1月15日ですので、原則として、来年の譲渡所得として申告します。ただし、売買契約の締結が今年の11月30日ですので、今年の譲渡所得として申告することもできます。
 次に、譲渡所得の収入金額ですが、手付金500万円+残金4 ,500万円+固定資産税の清算金10万円の合計額5 ,010万円となります。
 固定資産税の清算金とは、不動産の売買の際に、売買当事者間の合意に基づき固定資産税・都市計画税の未経過分を買主が負担するものですが、地方公共団体に対して納付すべき固定資産税そのものではありません。
 すなわち、固定資産税の清算金は、売買当事者間の利益を調整するために行われる金銭の授受と考えられますので、譲渡所得の収入金額の一部として、申告する必要があります(買主は、土地の取得価額に含めることになります)。