起業を考えているものの、歴史的円安やエネルギー資源の高騰を見るにつけ、どうすべきか心配しているかたはいらっしゃいませんか?
円安がデメリットになるかは、あなたが何をするかによって違います。ある人にとってはピンチでも、ある人にとってはチャンスです。苦しんでいる業種で起業するとしても、やりようはあります。みなが同じように苦しいのならば、上手に対処して負けなければいいのです。
そこで今回は、「歴史的な円安の下で起業するなら知っておくべき話」をご紹介します。
目次
歴史的な円安で、今は企業経営が大変な時期だね。
円安は本来、日本経済にはプラスだと聞いたけど……。
本来はそうだけど、今は急激に円安と物価上昇が進み過ぎて、小さな規模の会社ほど対応しきれていないようだね。
2022年は歴史的な円安となり、10月には32年ぶりに一時1ドル=151円台後半を記録しました。
その後、少し落ち着いた感がありますが(2023年1月6日現在は131円台後半)、ウクライナ情勢の影響による資源価格の高騰や、値上げラッシュによる消費マインドの冷え込みなど、今も多くの企業(事業者)が厳しい経済環境にあるのは間違いありません。
ところで、なぜ私たちは「円安」で困っているのでしょうか。
円安とは、ドルなどの海外通貨と比べて、日本円の価値が相対的に下がった状態のことです。
たとえば、「1ドル=100円」が「1ドル=150円」になるとどうなるのかを単純な買い物で説明しましょう。
アメリカで「1台につき1000ドル」で売っているモバイル機器があるとします。「1ドル=100円」だったときには、日本人はこれを「100×1000=10万円」で買えました。
しかし、「1ドル=150円」と円の価値が下がった円安状態では、「150×1000=15万円」出す必要があります。
そのモバイル機器が以前と同じ価格で販売されていたとしても、円安になった途端に、日本企業(人)にとっては大幅な値上げと同じことになるのです。
とくに困っているのはどんな業種なのかな?
経営に関わるすべてのコストが上昇しているのでどこも大変です。飲食業やアパレル業などがとくに苦しんでいるみたいですね。
飲食業は10円、20円の値上げでも客離れが起きるからね。コスト高になった分をそのまま価格には転嫁できないのだろう。
ご存知のように、日本は天然資源や食糧の自給率が低い国であり、それらの多くを輸入に頼っています。
そのため、原油価格の高騰に加えて、円安で輸入価格が急上昇すれば、企業活動にかかわるほぼすべてのコストが高くなります。
しかし、商品やサービスを値上げすれば顧客離れにつながる恐れがあるために、仕入れ値の上昇分をそのまま価格に転嫁できていない企業が大半でしょう。
たとえば、昨秋に大手回転ずしチェーンが値上げをしたところ、10月~12月の客数が対前年同月比で2~3割も減ってしまったのは記憶に新しいところです。
なお、円安・コスト増によってプラスとマイナスの影響を受けている業種は、次の10業種です(*東京商工リサーチ「円安に関するアンケート」調査2022年12月より)。
(*東京商工リサーチ「円安に関するアンケート」調査2022年12月より)
円安でも儲かっている業種や企業もあるんでしょ?
そうね。国内から原材料を仕入れている企業は影響が少ないし、海外展開している企業は円安の恩恵を受けているわね。
起業を考えている人は、その業種が円安で苦労しているからといって、気軽に業種を変えることはできないだろう。それでも上手いやり方はあるはずだよ。
先ほど、円安では日本円の価値が相対的に下がるという話をしました。アメリカ(諸外国)の立場から見ると、これまでよりも日本製品・サービスの価格が下がるため、積極的に購入・消費することが期待できます。
つまり、海外に対して今までより安い値段で売れる。それが日本にとって円安のメリットです。
そのことを踏まえて、今のところ円安・物価高で大きなマイナスを受けている企業は、どんな対応策を実施している(しようとしている)のか見てみましょう。
各種調査を参考に、あえて緊急避難的なものと中長期的なものに分けると次のようになります。
【どちらかというと緊急避難的な対策】
など
【中長期的な対策】
など
急激な円安と物価上昇に対して、今のところ既存の中小企業では緊急避難的な対策がメインであるようです。
しかし、これから起業を考えている場合には、円安が一段落した後も続くであろうコスト高を前提として事業を設計し、スタートできます。
そこで目を向けたいのが、海外展開とインバウンド需要の取り込みです。
起業する際に、海外展開としてまず取り組みやすいのは「越境EC」でしょう。
越境ECとは、インターネットによる国境を越えた電子商取引のこと。主な事業モデルとしては、
――といったパターンがあります。
近年、その市場は急速に拡大しており、2026年には2019年の7800億USドルから約6倍の4兆8,200億USドルになるとの予測があります(経済産業省「令和3年度 電子商取引に関する市場調査報告書」より)。
また同調査報告書によれば、令和3年に、アメリカが越境ECで日本から購入した金額は1兆2224億円。中国が日本から購入した金額は2兆1382億円となっています。
*(経済産業省「令和3年度 電子商取引に関する市場調査報告書」より)
越境ECで成功するためにはどうすればいいんだろう?
政府系機関や経済団体、地方自治体などが相談窓口や支援プルグラムを用意しているから相談してみるといいと思う。
SNSの活用や、インバウンド需要の取り込みと一緒に考えていくといいと思うよ。
また同調査報告書の中国における分析から、越境ECで成功するためのポイントを読み取ると、次のようになります。
3つめにインバウンド消費とあるのは、越境ECでは、外国人観光客が訪日時に見た商品を気に入り、帰国後に本国では手に入らないものをリピート購入する傾向があるためです。
ちなみに、「新型コロナウイルス感染症拡大が終息し、訪日が可能になった場合、越境ECの利用で購入したい日本の商品」は、図4のようになっています。
(経済産業省「令和3年度 電子商取引に関する市場調査報告書」より)
とはいえ、輸出や海外拠点設置はもちろん、比較的容易である越境ECであっても、経験やノウハウのない中小企業や個人には難しく感じるものです。
そこで活用できるのが政府系機関や経済団体、地方自治体などが提供している各種サポートです。円安をチャンスとすべく、ベンチャー企業や中小企業の海外進出を積極的に後押しする支援プログラムや助成金などが実施されています。
主な機関や窓口を記しておきましたので、自社に合ったやり方を相談してみるとよいでしょう。
【参考】 海外展開に関する主な情報・相談サイト
★「新規輸出1万者支援プログラム」
経済産業省、中小企業庁、ジェトロ、中小機構が、全国の商工会・商工会議所等とも協力して実施するプログラム。
今回は、円安・コスト高の経済環境の中で起業するためのヒントを記しました。
たしかに今の状況は業種によって厳しいものがあります。円安倒産が増えているのも事実でしょう。
かりに不利であってもその業種でやらざるを得ないケースもあります。小さな起業では、「自分のできることやすでに持っているものを使ってスタートする」のが鉄則だからです。
要は、考え方とやり方次第。
円高であろうと円安であろうと、適切な戦略を採れば、「今こそビジネスを始める(広げる)チャンス」となるのです。
ところで会社設立にあたっては、経営戦略を練り上げ、行動していくことが求められる一方で、複雑で煩雑な事務手続きが多々あります。
経営者である自分が事業内容に集中するために、税理士や司法書士などの専門家に相談することも大事です。迷ったときには、数多くの企業を見てきている彼らの意見が参考になることもあるでしょう。
どのような事務所に相談するべきかわからないというかたは、まず本サイトの窓口へ問い合わせてみてください。