目次
まず、巻末の資料のほうのpointI(資料編2ページ)というところで、ざっと概要をお話ししておきたいと思います。
会社法という新しい法律ができましたということなのですが、会社法で取り扱う会社には、どういう種類があるのかということです。まず、会社法で取り扱う法人は営利法人です。いわゆる営利を目的とする法人を対象にしています。財団法人とか社団法人というのは対象外ですよ、ということです。
では、営利法人にはどのような種類があるのか、ということになるわけですけれども、現状、営利法人といいますと、株式会社と、ここには出ておりませんが有限会社、それから合資会社と合名会社、この四つの種類があります。それが、今回の新会社法では、どのような種類の会社にまとめられるのか、どのような分類の仕方になるのかというのを図にまとめたら、資料編2ページ~の資料のような形になります。
まず、有限会社というのは、ここに出てこないですね。これがどうなるのかというのは、次のpoint2でお話しいたしますので、ちょっと先へ進ませていただきます。まず、会社は、株式会社と持分会社という二つの種類に分類されます。持分会社というのは、従来あった合資会社と合名会社、それから、新たに、合同会社という新しい会社形態がプラスされます。
今回は、持分会社についてはあまり詳しくお話しいたしませんけれども、ざっと概要をお話しすると、合資会社というのは、有限責任社員と無限責任社員が少なくとも1人ずついる会社です。少なくとも2種類の社員、社員というのは、これは従業員という意味ではありません。株式会社でいうところの株主に当たる、持分会社では株主に当たる人のことをいうのですね。非常に紛らわしいですが、持分会社におきましては、社員といったら株主と。だから、有限責任の株主と無限責任の株主がいらっしゃるということです。
それから、合名会社は無限責任の株主のみと。無限責任というのはどういうことかというと、これはもう皆さんおわかりだと思うのですけれども、会社の債務について株主が全責任をとりますということです。要するに会社と株主が一体ですよというような形態です。
だから、会社が借金を返せなかったら、株主が代わりに全部返しますと、自分の財産をすべて投げ打ってでも会社のために返済しますよ、というのが無限責任社員です。有限責任社員というのは、自分が出資した財産の範囲内でしか責任はとりませんよということです。まさに、無責任社員という形です。
従来から、この2種類の会社があるわけですから、当然のこととして、有限責任社員だけの会社かあってもおかしくないじゃないかということで、合同会社というのができたと考えていただければよろしいかと思います。巷では、日本版LLCとか言われております
けれども、税法上の問題として、海外で言うLLC、アメリカで言うところのLLC的な取り扱いがなされるのかどうかというのは、ちょっと疑問です。むしろ後でお話しするように、有限会社がつくれなくなりますから、その代役といったほうが適切かと思います。
つまり、有限会社の代わりに、合同会社をつくるということです(point56参照)。ということで、今回は解説の対象から外します。今回、重点的に解説をするのは株式会社です。
まず、株式会社は、規模別に、大きく二つに分かれます。中小会社と大会社という形です。現行の商法等の法律では、株式会社というのは大会社、中会社、小会社という三つに分かれる形になっておりますが、新しい会社法におきましては、大会社という区分は残りますが、あとはすべて一緒ということで中小会社です。ただし、中小会社というのは、オーソライズされた用語ではありません。私が勝手に説明しやすくするために、従来の中会社と小会社がI緒になったということで中小会社と呼んでいるだけなので、正式な呼称ではありません。
大会社というのは、従来のとおりでございまして、2ページの資料の下のほう、②のところに記載されているように、資本金が5億円以上または負債総額が200億円以上の株式会社です。これについては、従来の規定と変わりません。それ以外の会社は中小会社ということになります。
先ほど申しましたように、現行の法律では、小会社というのがありまして、資本金が1億円以下で、なおかつ負債総額が200億円未満の会社というのは小会社という位置づけがされているのですけれども、その小会社は新会社法のもとではなくなります。とりあえず大会社という区分だけは残ります。どこかに記憶しておいていただきたいと思います。
それからもう一つ、非常に大切な区分かありまして、その横を見ていただきますと、大会社もそうですし、中小会社もそうなのですが、株式譲渡制限会社と公開会社という二つの区分があります。あらかじめお断りしておきますが、株式譲渡制限会社というのは、これもオーソライズされた呼称ではないのです。正式の呼び方ではありません。こういうふうに呼べば非常にわかりやすいかなと思ったので、このように記載しました。法律で規定してあるのは、下のほうの公開会社という呼称です。これが規定してあるだけです。ここでは、非公開会社のことを株式譲渡制限会社と呼びます。
そもそも、公開会社といいますと、我々としましては、別のイメージが非常に強いですよね。証取法上の公開会社、いわゆる株式を上場している、株式を公開している会社を、通常、イメージしますから、非常に紛らわしいです。だから、なるべく公開会社という言葉を使いたくないなという意図がありまして、株式譲渡制限会社という言葉を入れたわけです。つまり、株式譲渡制限会社とそれ以外の会社と言うほうが、我々にとってなじみやすいわけです。
とは言うものの、株式譲渡制限会社というのは、法律上の正式の呼称ではないのです。
この株式譲渡制限会社とは一体何ぞや、ということですけれども、pointの31になります。ページでいきますと資料編31ページです。ちょっとそちらをお開きください。株式の譲渡制限規定というのを皆様ご存じだと思うのですが、株式が非公開の同族会社の場合、会社の定款と、それから会社の登記簿謄本をI度ごらんになっていただきたいと思います。
会社の株式というのは、これは原則として譲渡自由なのですけれども、一定の制限を加えることができるということで、現行の商法には例外規定が設けられております。どのような例外規定かというと、株式を譲渡する場合にはその会社の取締役会の承認が必要ですよと定款で規定できる、とされているのです。だから、会社の取締役会の承認がなく、勝手に株主間で移動した場合には、株主間、当事者間では有効かもしれませんけれ
ども、会社に対しては対抗できないことになります。
だから、会社のほうでは、あくまでも旧株主を株主として取り扱っても何ら問題はない、ということになります。そのような定款の規定がある会社のことを株式譲渡制限会社というわけで、そんな会社の方が多数い
らっしゃると思います。
ここで一言つけ加えておきますけれども、株式譲渡制限規定というのは登記しておかないと意味がありません。ひとつ、よく確認しておいてください。いくら定款に規定があったとしても、登記して初めて第三者に対抗できるわけですから、定款の規定に載っているかということを確認されると同時に、必ず、皆様方の会社の商業登記簿謄本にその旨の登記がなされているかどうかということも、あわせて確認をしていただければよろしいかと思います。
この株式譲渡制限規定というのは、新会社法におきましても、ほぽ似たような形で引き継がれます。後でお話ししますけれども、新しい新会社法におきましては、株式譲渡制限会社は取締役会を設置しないことができます。取締役会のない株式会社ですから、取締役会の承認はとれなくなるので、その場合には、株主総会の承認を受けることになります。ですから、新しい会社法では会社の承認を要すという言い回しになるのです。
このようなわけで、会社の承認が必要ですよというような包括的な規定になっておりますけれども、中身は現行の株式譲渡制限規定とほとんど変わりません。この株式譲渡制限規定というのは、今後、新会社法におきまして、非常に重要な規定になってきます。これについては、後でじっくりお話しいたします。
話がそれてしまいましたけれども、株式譲渡制限会社と公開会社との違いですが、新し い会社法におきましては、株式の譲渡制限規定というのは、一部の株式についてだけ設定することもできるのです。現行の規定ですと、例えばうちは株式譲渡制限規定かあります よといった場合は、その会社が発行している株式全部について譲渡制限規定が適用される という形になるのです。逆に、ないというのは、すべての株はフリーですよというような 話になります。つまり、オール・オア・ナッシングということで、中間的な存在というのは現行の規定ではないのです。
ところが、新しい会社法におきましては、一部の株式、ある特定の株式についてだけ譲 渡制限規定を設ける、それ以外の株式はフリーですよと、そういうふうに規定を設けることかできることになります。
そういうふうに規定を設けることができるということになりますと、一部の株式につい てだけ譲渡制限規定を設けている会社というのは、果たしてどちらになるの、株式譲渡制限会社になるの、もしくは公開会社になるのという疑問が当然出てくるわけです。新しい会社法では、株式譲渡制限会社、いわゆる公開会社でない会社というのは、すべての株式について譲渡制限規定を設けている会社のことを言います。よろしいですか。 ですから、逆に、裏返しに言うと、一部の株についてだけ譲渡制限規定を設けている会 社というのは公開会社ということになるのです。非常に紛らわしい。ですから、むしろ株式譲渡制限会社というのを規定したほうがわかりやすいのですけれども、法律をつくる内 閣法制局のほうでどういうふうに条文をつくりかえたのかよくわかりませんけれども、公開会社のほうの規定を設けてしまったという話です。もう一回繰り返しますけれども、株式譲渡制限会社、いわゆる公開会社でない会社は、要するに発行しているすべての株について譲渡制限規定を設けている会社ということになります。
ということで、もう一度、資料編2ページに戻っていただきます。この株式譲渡制限会社、公開会社の区分、これは中小会社であっても、大会社であっても、選択することができるということです。つまり、中小会社だけの選択肢ではなくて、大会社であっても選択をすることができるということです。
ところで、公開会社になりますと、会社の機関設計に関しては、現行とほとんど変更はないというふうに考えていただければよろしいかと思います。ところが、株式譲渡制限会社になりますと、会社の機関設計において、大きな選択肢が設けられているのです。何かというと、先ほど話をいたしましたけれども、取締役会を設置しなくてもいいということです。
これは大きな選択肢です。設置してもいいし、しなくてもいいという、そういう選択肢が新たに設けられましたというわけです。
新会社法においては、株式譲渡制限会社にはいろいろな特典がありますけれども、その 一つの特典としまして、この取締役会を設置しなくてもいいという規定、そういう選択肢が設けられている、これは非常に大きなポイントになります。これについては、後でもう 少し詳しくお話しいたします。 株式譲渡制限会社という分類がありますよ、ということだけ、頭の中に入れておいていただければよろしいかと思います。
続きまして、point2(資料編4ページ)のほうに移ります。
先ほどお話ししましたように、有限会社という会社類型が出てきません。結論から申し 上げると、有限会社というものはなくなります。もう作れなくなるということです。
そこで心配されるのは、じゃあ今の有限会社はどうなるの、このまま放っておくと強制 的に解散させられるのか、ということになってくるわけなのですけれども、それにつきましては経過措置が設けられております。どのような経過措置かというと、現存の有限会社 は特例有限会社という形で、特例的に残してあげますよということです。
特例有限会社というよりも、特例株式会社というふうに考えていただいたほうがわかりやすいと思います。特例的な株式会社として、もはや有限会社はないわけですから、すべて株式会社、有限会社も株式会社になってしまうのですね。けれども、株式会社になりますと、法律上、面倒な手続きがいろいろと出てきます。そこで、現存の有限会社にはあまり迷惑をかけないようにということで、特例的な株式会社として存続を認めてあげましょう、と。ただし、新たに有限会社をつくることはもうだめですよ、というような話です。 それが一つの選択肢です。
もう一つは、この際株式会社に衣がえしてしまおうじゃないかということも考えられるわけですね。その場合には、これも比較的簡単な手続で株式会社に組織変更っていうのですか、社名変更と法律では呼んでいますけれども、社名変更をするという選択肢も残っています。ですから、現存の有限会社については、有限会社、いわゆる特例的な株式会社として残るか、もしくは株式会社に社名変更、衣がえしてしまうかのどちらか、という選択肢があることになります。
そうすると、じゃどちらを選んだらよいのというご質問等も、当然出てくると思います。株式会社になりますと、いろいろと手続面で面倒になってきます。どういう点が面倒になってくるかといいますと、役員には任期があるということです。役員の任期が何年かというのは後でお話ししますけれども、現状、有限会社の役員さんには、任期がないのです。
一度選任されたら、解任にならない限りはずっと役員でいられる。取締役、監査役もしかりですけれども、ずっといられるような形になっています。
ところが株式会社になりますと、任期という制限が出てきます。原則2年なのですけれども、新会社法では10年まで延長することができるという規定はありますが、ともかく任期がありますので、必ず改選をしなければいけない。改選をしたら当然、登記もしなければいけない。登記を忘れますと、登記繁怠ということで罰金を取られてしまいます。登記をすると、登記料がかかってくるという話で、いろいろと面倒になる。
それからもう一つ、株式会社は、決算書は公告しなければいけない。これについては後でお話しいたしますけれども、恐らく多くの株式会社が商法違反を起こしております。でも、法律上は、決算書は公告をしなければいけないという話になってきます。こういう二つの縛りが出てきます。
それがどうしても嫌だと言われる方は、じゃ有限会社で残りますと。じゃ、有限会社で残った場合のデメリットとしてはどういうものがあるのかということですけれども、これについては、特に難しいことをしなければ大丈夫なのですね。取締役会とか、会計参与という新しい制度ができたのですが、そういうものが設置できないということです。それから、合併とか会社分割を行う場合、また株式交換とか株式移転を行う場合、そういった場合には、いろいろな制限がついてきたり、できないケースも出てきます。たとえば、株式交換や株式移転はできませんし、合併をする場合には存続会社にはなれないとか、そういうような縛りが出てきます。
そこで、これらを見比べていただく、あとは外見というんですか、見てくれの問題ですね。これらを総合的に考えていただいて、どちらを選択されるのかということになってくると思います。
では、次のpoint4(資料編6ページ)に移ります。
出資金1円で株式会社か設立できる。現状、最低資本金制度というのがありまして、株 式会社は資本金が1000万円以上、有限会社の場合は300万円以上でないと会社をつくれないということですね。なお、経済産業省のほうから認定会社という形で、資本金1円で有限会社や株式会社が設立できる、これは経済産業省の認定を受けなければいけないのですけれども、認定を受けた場合には設立できますよ、という特例規定があります。も ちろん、5年以内に最低資本金まで増資しますよという条件つきです。そういう条件でつくることができるということになっていますが、こうした例外を除いて、原則的にだめだ ということになっているわけです。 ところが、新会社法におきましては、こういう最低資本金という制度がなくなります。
だから、出資額1円で堂々と株式会社ができますよというお話になってきます。
まあ、会社をつくられる機会というのはあまりないかとは思いますけれども、もう1つつけ加えておきたいことは、現存の株式会社が、あるいは現存の有限会社が減資をして、資本金をゼロ円まで下げることができますよ、ということです。
たとえば、最低資本金制度があるため仕方なしに資本金1000万円で株式会社をつくったけれども、1000万円も資本金は要らない、100万円もあれば十分ということでも、現状では100万円まで減資することできないですね。最低資本金は1000万円ということですから。
ところが、新会社法の下では、減資しようと思うのであればどうぞご自由に減資をしてくださいというわけで、100万円まで減資できます。まあ、ゼロ円にまで減資するようなことはないと思いますが、法的にはそれも可能です。まさかゼロ円まで資本金を下げる会社はないと思いますけれども、1000万円を割ることも可能です。
たとえば、資本金が1000万円の株式会社が、何らかの理由で減資をせざるを得ない場合でも、今までだったら資本金が1000万円を割ることはできないので何もできなかったものが、今後は可能になるということをご記憶いただければよろしいかと思います。
このように、最低資本金制度というものがなくなります。そもそも、この制度は会社の債権者保護という考え方から来たものです。先ほど話しましたように、株式会社の株主、有限会社の社員もそうですけれども、すべて有限責任ですね。自分の出資の範囲内でしか責任をとりませんよ、という話です。だから、会社がつぶれたとしても、株主は何の責任もとりません。もう既に出資をしていますから、その出資したお金が返って来ないだけということで終わりです。
そうすると困るのは、やはり会社の債権者です。会社に対して取り立てをするにも、何かしっかりしたものがないと困るということで、こういう最低資本金という制度が設けられたわけです。ところが、世の中には債務超過の会社というのはいくらでもあるわけで、 いくら最低資本金1000万円で会社をつくっても、どんどん業績が悪くなり、累積赤字が資本金の部分を食っていって、行き着くところは債務超過-。大体つぶれる会社っていうのはそうじゃないですか。債務超過になってつぶれてしまうわけですから、結局、最低資本金という制度があっても有名無実、あまり実効性がないという話になってきたわけです。
そういうことで廃止されるのですけれども、一つだけ縛りを残しました。
皆様方の会社の場合には、こんなケースに該当するわけはないと思いますけれども、お話をしておきましょう。このpoint4(資料編6ページ)の真中より下のあたり、最低資本金は廃止されましたけれども、純資産額が300万円以上なければ配当をすることができない、ということです。
たとえば資本金1万円の会社があります。純資産額は201万円です。つまり、留保利益が200万円あります、と。それでは、200万円のうちの100万円配当しよう、と思ってもできないわけです。201万円しかない。200万円プラスー万円しかないわけですからね。もし配当したければ、少なくとも純資産額、いわゆる純資産の部の合計額を300万円以上にしなさい、という話です。だから、300万円以上になったら、そのオーバーした分については配当することは可能ですよ、ということですね。そういう縛りが 設けられました。
それから、先ほどの確認会社のことですが、こうした会社が今後どうなるかということですけれども、当然、最低資本金制度はなくなりますので、5年以内に1000万円、あるいは300万円に増資をする必要はなくなるわけです。ところが、こういう確認会社は、5年以内に10100万円、もしくは300万円以上に資本金をしなかった場合には解散しますよ、という旨の規定を定款に設け、なおかつ登記する、それが一つの設立の条件にな っています。
したがって、その規定を削除しておかないと、やはり現状のまま5年たったら解散になってしまいます。もし該当する会社があれば、その定款の規定を削除し、なおかつ登記を抹消してもらうということが必要になってきます。その定款変更というのは、取締役会の決議、あるいは取締役の決定で変更することができることになっています。
ご参考までに、確認会社というのは、特別に最低資本金未満でつくった会社のことです。経済産業省の認可を受けて最低資本金未満でつくった会社ということになります。それらの会社については、取締役会の決議、有限会社の場合には取締役会というものがありませんから、取締役の過半数の決定で、解散事由についての定款変更、つまり削除をするわけです。それから、解散事由の登記を抹消する。こういう手続きをとらないと、やっぱり解散になってしまいますから、何もしなくてもいいというわけではありません。必ず、こういう手続きはとっていただきたいと思います。それから、ついでに、既存の有限会社についてはほとんどやるべき登記手続きはありませんが、株式会社に移行する場合には、商号変更のための定款変更等の手続が必要になります。現状のまま残る限り、特殊な定款の規定を設けている有限会社以外は、何も登記する必要はないということになっています。
次は、point5です。これについては、資料の7ページをお読みになってください。最後に1行、登記事項になりますというところに注意して下さい。
それよりも重要なのはpoint6(8ページ)、先ほど、多くの会社が商法違反を犯していますというお話をしましたけれども、現行の商法におきましては、2大商法違反というものがありまして、その1つが決算書の公告なのですね。それから、もう一つは株券の発行です(株券の発行については後で話をします)。株券の発行については、もっと実状に即したような規定に変更されているのですけれども、この決算書の公告につきましては、やはり従来どおりということになります。ですから、株式会社である限りは必ず決算書を公告しなければいけない、という話になってくるわけです。
ただし、上場会社の場合には、現在、有価証券報告書をインターネット上で公表できるようなシステムになっております。EDINETというのですけれども、上場会社につきましては、そちらで有価証券報告書を公表していて、二重手間になりますので、決算書の公告は必要ないということになります。
6月の株主総会の後になりますと、『日経新聞』に別冊が付きまして、決算公告がずらずら掲載されていますけれども、ああいうのがなくなってしまうわけですね。『日経新聞』さんの広告料収入が減ってしまうのではないかと心配をするわけですけれども。ただし、株式を公開していない会社につきましては、決算公告をしなければいけないということになっていますので、官報に掲載するか、もしくは『日刊新聞』に掲載するか、もしくはインターネットで公表するか、どれかを選択しなければいけないことになります。
皆さんが、今後どうなされるのか、あえて私は強制しませんが、今、コンプライアンスとかそういう事柄に対する見方・考え方が大きく変わりつつある時期です。今までは、こんなことをやっても問題にならなかったこと、「赤信号みんなで渡れば怖くない」的な、今まで世間でまかり通っていたようなことが、今後はまかり通らなくなる可能性は十分あります。いわゆる時代の流れの大きな潮目にさしかかりつつあると感じております。もしかしたら、これをやらなかったために、将来、大きなオブリゲーションを負うことになるとか、ハンディキャップを背負うことになるかもしれません。重々、その辺のところを、皆様方の自己責任で判断していただきたいと思います。
次のpointの8(10ページ)ですけれども、これにつきましては、ちょっと特殊なDESという手続きの話ですので、割愛させていただきたいところですが、少しだけお話をさせていただきます。DESとはデット・エクイティ・スワップの略で、あまりイメージ はよくないのですが、つぶれそうな会社が借金を資本金に振りかえてもらうことです。
借金があるから債務超過です。そこで、借金を資本金に振りかえてもらって、債務超過 を解消するという手法です。だから、銀行さんの立場からすると、貸付金だったものが株式に変わる、いわゆるお取引先の株式になるという形です。
借入金か資本金に変わりますと、利息もつかないし、返済期限もないわけですから、会社の再生がしやすくなりますよね。このようにして会社を再建していく、そういった場面で活用される手法が、デット・エクイティ・スワップです。その手続きが、少しやりやすくなるということです。
ただし、平成18年度の税制改正で、このDESに対する課税上の取り扱いが厳しくなりますので、注意が必要です。
次のpoint90(12ページ)に行きましょう。ここが非常に大事になります。
先ほども少しお話をしましたけれども、取締役会のない株式会社や監査役のいない株式会社ができますよ、という話です。
現在、株式会社の機関設計は、一律に決められています。まず、株主総会があります。
その下に取締役会があって、取締役会の構成員として取締役がいるわけです。株主に代わって、取締役会とか、あるいは取締役の見張り番として監査役。だから、取締役というのは、取り締まられ役なのですね。監査役というのは、取締役の見張り役です。株主に代わって取締役を監視するのが監査役です。この四つの機関が最低限必要です。
あと、大会社につきましては、委員会設置会社という形で、監査役がいない代わりに委員会というものを設けることもできます。監査委員会とか、報酬委員会とか、指名委員会を設けて、監査役がないという。これは本当にばかでかい会社の話です。上場会社でも一 部の会社、一部の限られた会社しか採用していない状況です。ですから、今回は、そういう話については横においておきましょう。通常のパターンとしては、この四つの機関が必ず必要だということです。この機関設計が、新会社法におきましては自由になります。
最低限必要なのは株主総会、これは絶対必要ですよね。株式会社ですから、株主総会がなければ話になりません。あと、必要なのは取締役、あとは、ある程度会社の任意で設けたり、あるいは設けなかったりすることができます。
それでは、どのように自由な機関設計ができるのかということですけれども、これを一つ一つ言葉で説明するのは面倒なので、一覧表にしたものが資料編12ページの表です。これで、すべてを網羅しています。いろいろな組み合わせを考えますと、実際には使えないような組み合わせ、現実には利用価値のないような組み合わせもありますけれども、数字上は39通りの組み合わせがあることになっています。
これを一つ一つフォローしていくと大変ですので、現行ではできない機関設計で、実用性の高いもの、その辺にポイントに絞りますと、大体四つのパターンに限られてきます。今回はその四つのパターンだけお話をしておきたいと思います。