書籍 同族会社のための「新会社法」活用術(セミナー録・2006年4月発刊)

03「株式の譲渡制限規定」とはどういうものか

 話がそれてしまいましたけれども、株式譲渡制限会社と公開会社との違いですが、新し い会社法におきましては、株式の譲渡制限規定というのは、一部の株式についてだけ設定
することもできるのです。現行の規定ですと、例えばうちは株式譲渡制限規定かあります よといった場合は、その会社が発行している株式全部について譲渡制限規定が適用される
という形になるのです。逆に、ないというのは、すべての株はフリーですよというような 話になります。つまり、オール・オア・ナッシングということで、中間的な存在というの
は現行の規定ではないのです。  ところが、新しい会社法におきましては、一部の株式、ある特定の株式についてだけ譲 渡制限規定を設ける、それ以外の株式はフリーですよと、そういうふうに規定を設けるこ
とかできることになります。  そういうふうに規定を設けることができるということになりますと、一部の株式につい てだけ譲渡制限規定を設けている会社というのは、果たしてどちらになるの、株式譲渡制
限会社になるの、もしくは公開会社になるのという疑問が当然出てくるわけです。新しい 会社法では、株式譲渡制限会社、いわゆる公開会社でない会社というのは、すべての株式
について譲渡制限規定を設けている会社のことを言います。よろしいですか。  ですから、逆に、裏返しに言うと、一部の株についてだけ譲渡制限規定を設けている会 社というのは公開会社ということになるのです。非常に紛らわしい。ですから、むしろ株
式譲渡制限会社というのを規定したほうがわかりやすいのですけれども、法律をつくる内 閣法制局のほうでどういうふうに条文をつくりかえたのかよくわかりませんけれども、公
開会社のほうの規定を設けてしまったという話です。もう一回繰り返しますけれども、株 式譲渡制限会社、いわゆる公開会社でない会社は、要するに発行しているすべての株につ
いて譲渡制限規定を設けている会社ということになります。  ということで、もう一度、資料編2ページに戻っていただきます。この株式譲渡制限会 社、公開会社の区分、これは中小会社であっても、大会社であっても、選択することがで
きるということです。つまり、中小会社だけの選択肢ではなくて、大会社であっても選択をすることができるということです。  ところで、公開会社になりますと、会社の機関設計に関しては、現行とほとんど変更は
ないというふうに考えていただければよろしいかと思います。ところが、株式譲渡制限会 社になりますと、会社の機関設計において、大きな選択肢が設けられているのです。何か
というと、先ほど話をいたしましたけれども、取締役会を設置しなくてもいいということ です。  これは大きな選択肢です。設置してもいいし、しなくてもいいという、そういう選択肢
が新たに設けられましたというわけです。  新会社法においては、株式譲渡制限会社にはいろいろな特典がありますけれども、その 一つの特典としまして、この取締役会を設置しなくてもいいという規定、そういう選択肢
が設けられている、これは非常に大きなポイントになります。これについては、後でもう 少し詳しくお話しいたします。  株式譲渡制限会社という分類がありますよ、ということだけ、頭の中に入れておいてい
ただければよろしいかと思います。

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