書籍 同族会社のための「新会社法」活用術(セミナー録・2006年4月発刊)

どこがどう変わり、何をどう活かせるのか?
「ポイントがまとまっていてわかりやすい」と評判の西村昌彦税理士が、会社法について行ったセミナーの口語録。
これまでの旧法を参照しながら、現状を振り返らせ、改めて会社法を確認するのにピッタリな一冊。急速な変化に対応するためにはぜひ!

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14小会社の監査役の権限がこれだけ広がる

ここまでの二つは、大会社だけの特例だと思いますが、問題はその次のところです。  配当優先無議決権株を発行しておられる会社があるかもしれません。これについては、
また後で出てきますけれども、平成14年の商法改正で、いろいろバラエティーに富んだ種 類株式が発行できるようになったのですが、それ以前の種類株式は、ほとんど1パターン
しかなかったのです。種類株式は1種類しかなかったといっても、過言ではなかった。  どういう種類株式かというと、ここに載っている配当優先無議決権株という株式です。
配当優先とは、配当について普通の株式よりも優遇しますよということです。つまり、配 当率を少し弾みます、普通の株式が無配でもこちらは配当いたしますといった具合に、配
当についてサービスしますよということです。  無議決権とは、一方でこのように配当を優先するのだから議決権はないよ、という話で す。つまり、配当と議決権とがアメとムチの関係にあるわけです。配当を弾む代わりに議
決権は与えない、議決権は無しだよ、という形です。これが配当優先無議決権株です。  ということで、ある程度の確度で、皆様方の会社もこれを発行されているのではないか
と思います。発行されている会社につきましては、もう一度登記をやり直さないといけな いということを、頭の中に入れておいてください。具体的な登記手続きにつきましては、
司法書士さんとご相談いただければよいですが、登記のやり直しをしなければいけないと いうことは、忘れないでください。すでに発行されている配当優先無議決権株がだめにな
るという意味ではないのですが、もう一度登記をやり直す。今までの登記のフォーマット が変わり、追加の登記事項も必要になるため、新しいフォーマットに沿って登記をやり直
すということです。  これは、新会社法の施行後6ヵ月以内に済まさなければなりません。また、それまでに 他の登記をする必要が生じた場合には、その他の登記と同時にしなければなりません。該
当する会社は、忘れないようにしていただければと思います。  それとあと一つ、監査役の権限です。先ほどお話ししたように、現行の商法では、株式 会社は、小会社、中会社、大会社の三つに分類されています。このうち、小会社の監査役
については、会計監査だけやればよいという規定になっています。だから、取締役会への 出席も強制はされていない。一方、中会社や大会社については、会計監査のほかに業務監
査もしなさいという話になっているのです。  ところが、新会社法では、中会社と小会社の区分がなくなります。当然のこととして、 これまで小会社であった会社の監査役の権限も広がります。今までは、会計監査だけでよ
かったので、気安く引き受けたけれども、これからは業務監査もしなければいけないとい う話になってくる。そこで、経過措置というものがありまして、まず株式譲渡制限会社で
あることが前提ですが、現存の小会社、いわゆる資本金が1億円以下で、負債総額が20 0億円未満につきましては、新会社法移行後においても、監査役の権限を会計監査に限定
する旨の定款の規定があるものとみなしますよ、ということになっています。だから心配 する必要はありません。  ただし、あくまでも株式譲渡制限会社が前提ですから、株式譲渡制限会社でない小会社
の監査役さんについては、今後は業務監査もしていただくという話になります。  このために、新会社法か施行された時点で、株主総会を開いて、いったん監査役を改選
するという手続きを踏まなければならなくなります。  当然、登記簿の記載も書き換えなければならないことになります。ここでも、株式譲渡 制限会社であるかどうかということが、重要なポイントになっています。今のうちに株式
の譲渡制限規定を設けておくべきかどうかの、一つの判断材料になると思います。

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