書籍 同族会社のための「新会社法」活用術(セミナー録・2006年4月発刊)

どこがどう変わり、何をどう活かせるのか?
「ポイントがまとまっていてわかりやすい」と評判の西村昌彦税理士が、会社法について行ったセミナーの口語録。
これまでの旧法を参照しながら、現状を振り返らせ、改めて会社法を確認するのにピッタリな一冊。急速な変化に対応するためにはぜひ!

(お買い求めはコチラから)

16経営権を確保するにはどんな方法がよいか

それから、pointHの6、7、8、9と大事な話になってきます。ここはもう少し突っ 込んでお話をいたしましょう。  まず、議決権制限株式を発行済株式総数の2分の1を超えて発行することができるとい
うことです。これはどういうことかということですけれども、種類株式の話です。普通株 式とは違った権利の内容を持った株式のことで、我々が、ふつう、株式といえば普通株式
のことですけれども、それに対して、違った権利の内容を持つ株式のことを種類株式とい います。つまり、普通株式とは権利の内容が違う株式ということです。  平成14年以前は、この種類株式はほぽ1種類しかなかったのです。新会社法の下では、
数字上は約500何通りの種類株式ができるのですけれども、平成14年以前はほぼワンパ ターンしかなかったということです。  ところで、権利の内容について違いをつけることができる項目というのは無制限にある
わけではなくて、新会社法では、全部で9項目挙げられています。その項目を全て覚える 必要はないですけれども、まず、配当です。配当に違いをつけることができます。
 それから二つ目が、残余財産分配権です。会社が解散したときには、会社に残った財産 を株主の皆さんに分けて会社を清算します。その残余財産、最後におこぼれをちょうだい
する権利が、残余財産分配権です。それについて違いをつける。優先的に分配しますとか、 他に劣後して分配しますとか、そういう差をつけることができます。  三つ目が議決権ということです。議決権に制限をつけるということです。これは議決権
がありなしという制限の仕方もあれば、ある決議については参加できないとか、決議項目 ごとに参加できる・できないを規定することもできます。また、一定の条件に該当する場
合には議決権を行使できませんよとか、そういったことも可能です。  たとえば、例の二″ポン放送の事件で、「敵対的買収防衛策」という言葉が一躍有名に なりましたけれども、あらかじめ発行している株式を議決権制限付株式にしておくわけで
す。株式シェアか20%を超えたら議決権がなくなりますよというような。そういう議決権 の制限条項を付けるということも可能です。いろいろな議決権の制限を付けることができ
る。これか三つ目です。  四つ目は先ほどお話しした譲渡制限規定です。新しい会社法では、すべての株式につい て譲渡制限かありやなしやではなくて、一部の株についてのみ譲渡制限を設定することか
できる、というお話をしたと思います。覚えていらっしゃいますか。要するに、このよう な場合には、譲渡制限株式も種類株式の一つになります。この種類株式については譲渡制
限を付けますよ、あとの種類株式はフリーですよとか、逆に、この種類株式についてはフ リーですか、残りの株式については全部譲渡制限規定かありますよとか、株式の種類ごと
に、譲渡制限を付けるか付けないかを決めることができます。ですから、譲渡制限かある かないかというのも、一つの株式の種類というような形になってくるわけです。
 あと、覚えている範囲でお話ししますと、拒否権を付けるかどうかということです。こ れについても、例の一連の企業買収事件で、敵対的買収防衛策の1つとして黄金株という
言葉がよく出てきましたね。よく新聞紙上をにぎわせたと思います。これは拒否権の付い た株式のことを指します。どういうことかというと、たとえば株主総会で合併すると決め
た。これは特別決議ですから3分の2以上の多数決で決めるわけですけれども、株主総会 でせっかく決めたにもかかわらず、特定の種類株式を持っている株主が私は反対だと言え
ば、その株主総会の決議はだめになる、オジャンになる。だから拒否権というのです。  特定の種類株主が「うん」と首を縦に振らない限りは、いくら株主総会で決議しようが、
取締役会で決議しようが、その決議は全部ダメ、否決されてしまうという、そういう非常 に強力な権利を持った種類株式のことを拒否権付株式といいます。そういうこともできる
ということです。  あとは、役員の選解任権です。取締役とか監査役とかの選解任権ですね。今後は会計参 与も役員になりますが、そういった役員を選解任できる権利のあるなしです。ですから、
役員を選べない株主というのが出てくるわけです。たとえば、普通株主は役員を選べませ ん、役員を選解任する権利はありません。こちらの特定の種類株主、たとえばAという種
類株主だけで取締役とか監査役を選任する、そういうことも可能になってきます。ところ で、この役員の選解任権付株式を発行できる会社は限定されていまして、発行できるのは
株式譲渡制限会社だけです。これも、株式譲渡制限会社の一つの特典ですね。現行の商法 でもそうなっています。つまり、新会社法で新たに設けられた規定ではなくて、現行の商
法でもそういう規定になっているのです。だから、株式譲渡制限会社につきましては、特 定の株主だけに役員の選解任権を集中させることができるのです。現在でもできるのです
よ。皆さん、あまりご存じないだけで、できる。この規定は新会社法でも引き継がれます よ、ということです。ですから、株式の譲渡制限規定って非常に大事ですね。あることに
よって、いろんなことができてしまうというということですね。

会社サポートセンター