どこがどう変わり、何をどう活かせるのか? 「ポイントがまとまっていてわかりやすい」と評判の西村昌彦税理士が、会社法について行ったセミナーの口語録。 これまでの旧法を参照しながら、現状を振り返らせ、改めて会社法を確認するのにピッタリな一冊。急速な変化に対応するためにはぜひ! |
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あと三つあるのですけれども、あとの三つは、発行している株式を会社が買い取るとい うことです。発行した特定の種類株式を会社が取得するわけです。発行した株式を会社が
取得する、つまり、自己株式にしてしまうわけですね。買い戻してしまうという話です。 この取得の方法については、三つの種類あります。これであとの三つはクリアしたことに
なりますね。 この買い戻しの方法は三つありまして、一つは会社が強制的に買い戻す場合です。たと えば、20%以上の敵対的な買収者があらわれたら、その株式は強制的に買い戻しますよと
いう具合にです。これを取得条項付株式と呼びます。それが一つのパターンです。 二つ目のパターンとして、会社による強制的取得ではなくて、株主から請求をすること
によって、私はこの株をもう売りたい、会社に戻したいといった場合に、会社はそれを買 い取る義務が生じるという形です。これを取得請求権付株式と呼びます。 もう一つ、三つ目のパターンとして、これは全部取得条項付種類株式といいますけれど
も、株主総会の特別決議、3分の2以上の決議があればその株式を全部買い取ることがで きるという株式です。この3番目の種類株式については、今後、非常に利用価値がでてく
るものと思います。今日はそこまで突っ込んだ話はできませんけれども、名前だけは記憶 しておいてください。非常に長ったらしい名前ですが。株主総会の特別決議でその株式を
全部買い取ることができる。そういう株式も発行することができるようになります。 これで、全部で九つ、お話ししたと思います。配当、残余財産分配権、議決権、譲渡制
限、拒否権、役員の選解任権、それと3種類の株式取得、これで、全部で九種類ですね。 これだけの道った権利の内容を設けることができますということですね。だから、全部で
2の9乗通りですから、512通りのパターンが可能になりますよ、という話です。 なお、新会社法における種類株式について、表にまとめたものを、巻末の資料の78ペー
ジに掲載しておりますので、ご参照ください。 ちょっと話が横道に逸れましたけれども、議決権を制限した株式については、これを無 制限に発行できるわけではなくて、発行済株式総数の2分の1までという制限が付されて
おります。そうでないと、ごく限られた株数を持った株主だけで、株主総会の決議をする ことができるという話になってくるからです。ですから、議決権制限株式が、発行済株式
総数の2分の1を超えてはならないというような形になっているわけです。 けれども、株式譲渡制限会社につきましては、2分の1を超えて、議決権制限株式を発 行することができるようになります。現行ではだめですよ。現行の商法には2分の1とい
う制限はありますが、新会社法におきましては、株式譲渡制限会社に限り、2分の1を超 えて発行することができるということです。 これでどういうことができるかというと、極端な話、たとえば会社の発行済株式総数-
00株のうち、議決権のある株は1株で、あとの99株は無議決権株ということも可能にな るのですね。すると、唯一議決権のある1株を後継者が持っていれば、経営権は安泰とい
う話になってくる。これからは、そういう種類株式の設計も可能になるという話です。 だから、3分の2シェアを押さえなければいけないとか、過半数を押さえなければいけ
ないとか、種類株式の設計の仕方によっては、もう、そういうレベルの問題ではなくなっ てくるという話です。そもそも、株式譲渡制限会社というのは、閉鎖的な会社を前提にし
ているわけです。同族だけの閉鎖的な会社を前提に、こういう規定を設けているわけです から、別にそれで弊害はないわけです。むしろ、同族だけできちっと、同族の人たちだけ
で着実に経営を承継していったほうが望ましいわけですから、あえてこういう規定が設け られているわけです。新会社法におきましては、いろいろなコペルニクス的転換がありま
すけれども、これも、そのうちの一つです。