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早速、本題に入らせていただきますが、皆様方は、法人税の申告書にサインをされるとき、「別表二」(図表1)の中身をチェックされていますか?
皆様方、社長様は、必ず、法人税の申告書にサインをされますね。
たとえば、3月決算の会社でしたら、5月あるいは6月にサインをなされていらっしゃると思うのですが。
そこで、法人税の申告書にサインをされるときに、必ずチェックしていただきたい事項があります。
ふつう、皆様方は、いったい税金がいくらかかるのか。いったいいくら払わなきゃいけないのか。そういった点を確認しながら、所得金額がいくらで、税金がいくらと記入されたところをご覧になって、サインされると思うのです。
しかし、ちょっと機転をきかせていただきまして、申告書の次のページ、法人税の申告書の2枚目のところをご覧いただきたいのです。
法人税の申告書の1枚目は、皆様方がサインされるところ。所得金額がいくらだとか、税金の金額がいくらだとか書いてあるのが、1枚目です。
その1枚目にサインをしていただくと同時に、1枚めくっていただくと、2枚目に、図表1のような用紙が綴じ込まれています。
「別表二」と右上に書いてありますけれども、これは新しい様式の法人税の申告書の別表二です。
この「別表二」を記入させる目的は、本当のところは、別にあるのですけれども、ここでは、法人税のお話をするわけではありません。
そもそも、「別表二」は何を記載する用紙かというと、株主名簿を記入する用紙です。
皆様方の会社の株主名簿を記載するような書式になっています。
特に、別表の下半分のところには、株主の住所と氏名、それから何株特っているという持株数を書く形になっています。
ポイントは、ここにあります。
皆様方は、皆様方の会社の株主名簿を見られる機会って、あまりないと思うのです。
事業承継についてのプランニングを考えるとなると、株主名簿というのは、やはり、最もベーシックで、最も重要なデータの一つになります。
「事業承継は、株主名簿に始まり、株主名簿に終わる。」と言っても過言ではないぐらい株主名簿は重要で、最初に立つべきスタートラインとなるものなのです。
要するに、まず株主名簿を見ないと、事業承継は始まらないということになるのでしょうか。
その株主名簿を見るチャンスとして、必ず年に1回、法人税の申告書にサインする機会があります。
そのときに、申告書を1枚めくっていただきますと、2枚目に株主名簿が記入された用紙が綴られていますので、その株主名簿に、一度、目を通していただくのがよろしいのではないかと思います。
それでは、この株主名簿に目を通して、どの辺りをチェックするのでしょうか。
先ほど、事業承継プランニングは、まず株主名簿に始まると言いました。
それでは、株主名簿で始まりまして、2番目にやることは何かと言いますと、皆様方の会社の株価算定、皆様方の会社の株価を算定することが、2番目にすべきことになります。
ところで、皆様方は、皆様方の会社の株価を、毎年、きちんと算定されていますか。
もし、毎年々々、きちんと算定されているということであれば、それはたいへんに優秀です。
私は、常々、皆様方におすすめしているのですが、法人税の申告書は、必ず、年1回は提出するわけですよね。決算期が、年に1回、必ず到来するわけですから。
それと同時に、ワンセットという形で、必ず株価も算定してもらう。
決して、皆様方に、株価を算定しろ、と言っているわけではないのです。
次で簡単に触れますけれども、非上場会社の株価の算定方法は、どんどん複雑になっていまして、昔でしたら、ちょっとした聞きかじり程度で、ある程度の株価は算定できたのですけれども、段々と特例事項が増え、いろいろと条件が細かくなったりして、専門家でないと正確に算定できないケースが増えてきました。
ですから、皆様方の会社の顧問の税理士の先生に、算定をお願いなさればよいと思います。
そこで、その依頼をするタイミングです。
どういうタイミングでお願いをするのか。毎年、必ず算定をお願いする。そのタイミングとして一番よいのが、決算書ができ上がった時点、法人税の申告が終わった時点が、一番区切りがよいのではないかと思います。
毎年、新しい決算書と法人税の申告書に基づいて、きちんと株価を算定していただく。申告書の提出期限と多少ずれることはあると思うのですが、多少のずれがあったとしても、その決算が終わったら、その新しい決算書と法人税の申告書に基づいて、皆様方の会社の株価の算定報告を、必ず、きちっとしてもらう。こういう習慣をつけておかれたらよいと思います。
このように習慣づけておくと、将来的に、大いに助かることになると思います。
非上場会社の株価というのは、毎年の業績によって変動します。
また、たくさんの土地をお持ちの会社ですと、路線価が毎年7月1日頃に公表されるのですが、その路線価によって株価が影響を受けます。
ですから、株価算定のタイミングとしては二つあると思います。
土地を非常にたくさんお持ちの会社については、新しい路線価が出た時点でお願いをする。
そうでない会社については、決算が終わった時点で、新しい決算書と法人税の申告書に基づいて株価を算定していただく。いずれかのタイミングを、それぞれの会社なりに決めていただいて、少なくとも毎年1回は、株価の計算をしていただくということになります。
このようにして算定された株価に基づきまして、オーナーの皆様方が持っていらっしゃる株数については先はどの「別表二」でわかりますから、掛け算をしていただきますと、皆様方がご所有の自社株の評価額がわかります。
もっとも、この評価額は、あくまでも税務署が決めた価額ですから、本来の価値とは違うのですが、税務署が、皆様方がご所有の自社株についての相続税を計算する上で、あるいは贈与税を計算する上で、どれくらいの評価をするのかがわかります。
この計算を、毎年、必ずやっていただくというのが、「別表二」をご覧になられたときの最初のチェックポイントです。
ところで、株価の算定方法についてですが、これは非常にマニアックなところですし、あるいは、皆様方におかれても、よくご勉強なされていると思いますので、あまり深くは立ち入りません。
とは言うものの、ご注意申し上げたいポイントを中心に、少しだけお話しておきたいと思います。
皆様方の会社は株式を上場していない会社ということになりますから、当然、株価は、算定をしない限りはわからないということです。
では、そういう会社については、どのように株価を算定するのかですが、いろいろな計算方法があります。
まず、税務署の算定の仕方、いわゆる国税庁方式。税務署が相続税とか贈与税を計算する上で、非上場会社の株式をどのように評価するのか、その算定方式について、ご説明しておきたいと思います。
税務署の算定方式は、まず、贈与により株式をもらう人、あるいは株式を相続する人が、その会社のオーナーーのお身内かどうかということによって、大きく違ってきます。
お身内でない方、会社のオーナーとは赤の他人という言い方はちょっとおかしいかもしれませんが、いわゆるご親族でない人の場合、たとえば、従業員さんとかご友人とか、全く血縁関係等のない人が贈与等で株式を取得した場合の評価というのは、次の図表2のような配当還元方式という評価方法になります。とりあえず、面倒な計算式はさておきまして、1株当たりの配当金等の額の10倍が評価額になる。ざっくりとした言い方ですけれども、そういうふうに考えていただければよいと思います。
だから、1株当たり5円の配当をされている会社であれば50円になりますし、100円の配当をされていれば1、000円になりますし、さらに500円を配当されていれば5、000円になります。
商法や会社法が変わりまして、今では、株式の額面金額という考え方はないのです。
私も含めて古い人間ですから、ついつい額面金額を意識しがちです。
古い会社ですと50円、それに継ぐ古い会社ですと500円、比較的新しい会社ですと5万円という株式の額面金額があったのですが、今では、法律上、額面金額というものがなくなっています。
ですから、額面金額の何倍という考え方ですと、あいまいというか、不正確になるわけです。
そこで、ざっくりとした考え方ですが、1株当たりの配当金の10倍が評価額になります、という程度で覚えておいていただければよろしいかと思います。
なお、配当がゼロの場合ですが、昔でしたら、額面金額の半分といきたいところですが、額面金額というものがなくなりましたから、正確には、1株当たりの資本金等の額の半分が評価額になります。
決して、ゼロにはならないのですね。
これは、オーナーのお身内以外の一般の方が、相続や贈与で株式をもらった場合の話なので、これくらいにさせていただきます。
それでは、オーナーのお身内の方が相続や贈与で株式を取得された場合には、税務署はいくらで評価をするのだというお話になってきます。まず、この場合には、2通りの評価の方法があります。
その1つが、純資産価額方式という評価の方法です。
純資産価額方式と言ってしまうと、誤解されやすいのですが、「相続税評価上の純資産価額方式」というふうに考えていただければよろしいかと思います。
この評価方法は、読んで字のごとく、会社の資産内容から評価をします。
細かい算式はともかくとして、図表3を見ていただいた方が、一目瞭然でわかりやすいと思います。
まず、会社がお持ちの資産をすべて評価し直します。
つまり、時価に置き直す、ということです。
ただし、このときの時価というのは、実際に売買が行われている価額、世間で一般に流通している価額ではなくて、相続税評価額に置き直すということになります。
たとえば、土地であれば路線価に置き直すとか、ご存知かと思いますが、路線価は、時価よりも若干安く設定してあるのです。
そもそも、相続税評価額というのは、通常の時価の8割くらい、財産の種類によっては7割くらいのものもありますが、大体その辺のところ、中には、現金や預金などのように、時価とぴったり一致するものもありますが、時価よりも若干安く設定してあるものもたくさんあります。
したがって、本来の時価よりも若干ディスカウントされている、相続税評価額に置き直すという形になります。
このように、評価換えをすると、多くの場合、評価益が出ます。
相続税評価における純資産価額方式の考え方というのは、相続あるいは贈与が起こった時点で会社を清算した場合、最終的に株主にどれだけの財産が分配されるのかという考え方にもとづいています。
清算するということになると、まず、会社が持っている資産を売り払わなければなりません。
そうすると、先はどの評価益に相当する金額の売却益が発生するわけですが、この売却益に対しては、当然、税金がかかってきます。
売却益が出れば、当然、税金がかかります。
そこで、評価益相当額の42%の税金がかかると、割切り計算をするのです。
概算で約42%の税金がかかるだろう、法人税、法人住民税と、事業税、一定の税率計算をすると、平均して42%くらいの税金がかかるだろう、ということです。
ですから、資産を全部売却したとしても、そのすべてが現金になるわけではなくて、その売却益の42%部分は税金として取られて、社外に流出してしまいます。
この部分は会社に残りませんから、それを差し引いた残りが残余財産ということになります。
ちょうど、図表3の斜線の部分ですね。
負債はすべて返済し、税金はすべて支払う。そうすると、この斜線の部分が会社に残るという形になります。
この残った斜線の部分を発行済株式数で割れば、1株当たりの株価が出る。こういう考え方に基づいているのです。
ここで、ポイントを二つほど、お話しておきます。
まず、評価換えをする際には、先ほどお話したように、相続税評価額に置き直します。
評価換えをするといっても、時価ではなく、あくまでも、時価よりも若干安い相続税評価額です。これが一つです。
それから、もう一つ、相続税独自の考え方により、会社の清算価値を計算するということです。
ですから、その資産をすべて売り払ったときにかかる税金ということで、その評価益の42%部分を控除するということになるわけです。
その残った部分が評価の対象になります。
以上、二つの点が、相続税評価上の純資産価額方式の特徴です。
この点につきましては、後でもう一度出てきますので、覚えておいていただければと思います。
ところで、この評価方法ですが、あくまでも会社の財産を中心にした評価方法です。会社の利益が上がっているか、上がっていないかは、あまり関係はない。会社がよい資産、いわゆる含み資産をたくさん持っていれば、当然、評価は高くなる。そういう評価方法です。
また、この純資産価額方式による株価ですが、皆様方の会社が大型の設備投資をされて、3年くらい経ちますと、大きく下がる可能性があります。
大きな設備投資をして、すぐには無理かも知れませんが、3年ぐらい経過した時点で、大幅に評価額が下がる可能性がありますので、そのタイミングを逃すと損ですよね。
株価というのは、いろんな要因で、上がったり下がったりします。
たとえば、土地の値段や株式市場、それから皆様方の会社の業績や皆様方の会社の設備投資など、いろんな要素によって、税務署が評価する株価も変動します。
つまり、株価がトンと下がるタイミングというものがあるのです。
そこを、うまく逃さず、そのタイミングで、贈与しますとか、株式の移動をしますとか。そういうタイミングを逃さないためには、やはり、毎年、株価を算定しておくことが必要です。
私が、毎年株価を算定してくださいと言う理由は、そこにもあるのです。
上場会社の株価を見るのとは違って、毎日というわけにはまいりませんが、少なくとも一年に一度くらいは、皆様方の会社の株価の動きを、きちんとつかんでおいていただきたいと思います。
もう一つの評価方式として、類似業種比準方式という評価方式があります。
先はどの純資産価額方式は、財産中心の評価方式であったのに対して、類似業種比準方式は、業績中心の評価方式です。
業種が類似した上場会社と比較して株価を決めるということで、類似業種比準方式という名前がついているわけです。
皆様方の会社と業種が類似した上場会社、サンプル会社があって、そこと業績を比較して、皆様方の株価を決めるという方式になっています。
比較する要素というのは、1株当たりの配当金、I株当たりの利益金額、1株当たりの簿価純資産額の3つです。
図表4の計算式をご覧下さい。細かな計算式の中身はさておき、一つだけ注目していただきたい点があります。
配当は1、それに対して利益は3、簿価純資産額は1になっていて、利益のウエイトが多くなっている。そして、足して5で割るという形になります。
1対3対1の割合です。
利益のウエイトが3倍になっているというところに、ご注目していただきたいと思います。
何か言いたいかというと、利益が下がったら株価は非常に下がるということです。
利益が、非常に大きい算定要素になるということです。
昔は、これが1対1対1の割合だったから、利益が下がっても、それほど株価に影響はなかったのですが、今の計算式では、利益が下がると、非常に株価が下がるということです。
ですから、今期は業績がちょっと不振だったなというときには、株価が大幅に下がっている可能性があるわけで、何回もお話しておりますが、毎年株価を算定して、そのタイミングを逃してはいけないということです。
ところで、この利益の数字ですが、単純に、決算書の利益金額を持ってくるわけではないのです。
ペースになるのは、決算書の利益金額ではなくて、あくまでも、法人税の所得金額です。
ご存知のように、法人税の所得金額と決算書の利益金額とは異なります。
この法人税の所得金額をペースにするのですが、さらに、いくつかの項目について調整を加えます。
このようにして、その事業年度における利益の数字が計算されるのです。
それで終わりではありません。
その上で、その前の事業年度における利益の数字との平均値を求めます。
最終的には、この平均値とその事業年度の利益の数字とを比べて、どちらか低い方を採るということになります。
このように、非常に複雑な過程を経て、利益の数字が求められるのです。
ですから、あれこれ考えるよりも、株価の算定結果を見た方が手っ取り早いわけで、毎年、株価を算定する。そして、利益の数字がちょうどうまい具合になったときに、株価がどんと下がりますから、そのタイミングを決して見逃さないということです。
くどいようですが、類似業種比準方式の計算式には、かなり加工した利益の数字をインプットしますから、そのタイミングは、会社の利益だけを見ていてもつかめません。
実際に、株価を算定してみることが大切です。
その辺のところを、十分にご理解いただきたいと思います。
ところで、類似業種比準方式で株価を計算する場合に、具体的に、どの上場会社と比較する のだということになりますが、国税庁のほうで、業種別にサンプル会社というのを決めています。
皆様方が勝手にサンプルとなる上場会社を選ぶというわけには行きません。6kokuzeicho
あらかじめ国税庁の方で「これと比較しなさい」と決めていますので、これに従っていただくということになります。実際に、どの上場会社がサンプルになっているのかは、未公表です。
聞くところによると、一定の基準をクリアしている会社をサンプルにして、その平均値を出しているという話です。
また、そのサンプル会社についても、毎年見直しているようです。
その辺のところは、私たちにはわからないのですが、いずれにしろ、国税庁が公表しているデータと比較計算していただくことになっています。
そのサンプル会社のデータは一覧表にして公表されていますが、図表5は、 その一部を抜粋したものです。
この資料ですが、国税庁のホームベージに、公開されています。
この図表はそれから抜粋したものですから、ここに掲載されていない業種のデータについて は、そちらをご参照いただきたいと存じます。
また、公表時期ですが、大体、2ヵ月おきに、3~4ヵ月くらい前の株価のデータが公表されます。
このように公表される時期は若干遅れますが、国税庁のホームページで、いつでも見ることができます。
ところで、この表の見方ですが、皆様方の会社の業種が、たとえば卸売業であれば、卸売業あるいは該当する中分類の業種欄に記載されている株価、配当金額、利益金額、簿価純資産額 と比較していただくということになります。
業種の見方について、もう少し詳しくご説明しますと、まず「卸売業」という大分類がありますね。
これで比較すると同時に、中分類というのがありますね。
同じ卸売業でも、たとえば、「繊維・衣服等卸売業」とか、「食料品・農水産物卸売業」とか、こういうふうに、卸売業の中でもさらに細分類があるわけです。
この中分類の中から該当する業種について、同じように比較をする。だから、2回比較をす るのですね。
大分類と中分類で両方とも比較をして株価を出して、どちらか有利な方をとっていただいて 結構という話になります。
お、この中分類のどれにも該当しない場合には、一番下の「その他の卸売業」ということになりますから、その他の卸売業と大分類の卸売業とで、それぞれ比較していただく。株価を 算定していただくということになります。 もっとも、その他の卸売業と、大分類の卸売業とでは、ほとんどの数値は同じになっている
と思いますので、あまり意味はないのですが。このように、類似の2業種を選択できるわけです が、その辺のところは、顧問の先生に頼めば、間違いなくやってくれると思います。