書籍 同族会社のための「事業承継」

今年の税金改正では、「非上場株式等に係る贈与税の納税猶予制度が創設されました。この制度を選べば、事業承継の相続税の負担が猶予される可能性も出てきました。セミナーの人気講師でもある西村昌彦税理士が、今回事業承継を検討する経営者の立場で法活用を伝授する一冊。会社法や税法の解説から綴られた「法解釈本」とは一線を画す、実用的ノウハウ本です。

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1-04税務署の評価を知るー資産内容から株価を見る「純資産価額方式」

それでは、オーナーのお身内の方が相続や贈与で株式を取得された場合には、税務署はいく
らで評価をするのだというお話になってきます。まず、この場合には、2通りの評価の方法があ

ります。
 その1つが、純資産価額方式という評価の方法です。
 純資産価額方式と言ってしまうと、誤解されやすいのですが、「相続税評価上の純資産価額
方式」というふうに考えていただければよろしいかと思います。
 この評価方法は、読んで字のごとく、会社の資産内容から評価をします。
 細かい算式はともかくとして、図表3を見ていただいた方が、一目瞭然でわかり
やすいと思います。
 まず、会社がお持ちの資産をすべて評価し直します。
 つまり、時価に置き直す、ということです。
 ただし、このときの時価というのは、実際に売買が行われている価額、世間で一般に流通し
ている価額ではなくて、相続税評価額に置き直すということになります。
 たとえば、土地であれば路線価に置き直すとか、ご存知かと思いますが、路線価は、時価よ
りも若干安く設定してあるのです。
 そもそも、相続税評価額というのは、通常の時価の8割くらい、財産の種類によっては7割
くらいのものもありますが、大体その辺のところ、中には、現金や預金などのように、時価と
ぴったり一致するものもありますが、時価よりも若干安く設定してあるものもたくさんあります


 したがって、本来の時価よりも若干ディスカウントされている、相続税評価額に置き直すと
いう形になります。
 このように、評価換えをすると、多くの場合、評価益が出ます。
 相続税評価における純資産価額方式の考え方というのは、相続あるいは贈与が起こった時点
で会社を清算した場合、最終的に株主にどれだけの財産が分配されるのかという考え方にもと
づいています。
 清算するということになると、まず、会社が持っている資産を売り払わなければなりません。
 そうすると、先はどの評価益に相当する金額の売却益が発生するわけですが、この売却益に
対しては、当然、税金がかかってきます。
 売却益が出れば、当然、税金がかかります。
 そこで、評価益相当額の42%の税金がかかると、割切り計算をするのです。
 概算で約42%の税金がかかるだろう、法人税、法人住民税と、事業税、一定の税率計算をす
ると、平均して42%くらいの税金がかかるだろう、ということです。
 ですから、資産を全部売却したとしても、そのすべてが現金になるわけではなくて、その売
却益の42%部分は税金として取られて、社外に流出してしまいます。
 この部分は会社に残りませんから、それを差し引いた残りが残余財産ということになります。
 ちょうど、図表3の斜線の部分ですね。
 負債はすべて返済し、税金はすべて支払う。そうすると、この斜線の部分が会社に残るとい
う形になります。
 この残った斜線の部分を発行済株式数で割れば、1株当たりの株価が出る。こういう考え方
に基づいているのです。
 ここで、ポイントを二つほど、お話しておきます。
 まず、評価換えをする際には、先ほどお話したように、相続税評価額に置き直します。
 評価換えをするといっても、時価ではなく、あくまでも、時価よりも若干安い相続税評価額
です。これが一つです。
 それから、もう一つ、相続税独自の考え方により、会社の清算価値を計算するということで
す。
 ですから、その資産をすべて売り払ったときにかかる税金ということで、その評価益の42%
部分を控除するということになるわけです。
 その残った部分が評価の対象になります。
 以上、二つの点が、相続税評価上の純資産価額方式の特徴です。
 この点につきましては、後でもう一度出てきますので、覚えておいていただければと思いま
す。
 ところで、この評価方法ですが、あくまでも会社の財産を中心にした評価方法です。会社の利

益が上がっているか、上がっていないかは、あまり関係はない。会社がよい資産、
いわゆる含み資産をたくさん持っていれば、当然、評価は高くなる。そういう評価方法です。

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