今年の税金改正では、「非上場株式等に係る贈与税の納税猶予制度が創設されました。この制度を選べば、事業承継の相続税の負担が猶予される可能性も出てきました。セミナーの人気講師でもある西村昌彦税理士が、今回事業承継を検討する経営者の立場で法活用を伝授する一冊。会社法や税法の解説から綴られた「法解釈本」とは一線を画す、実用的ノウハウ本です。 (お買い求めはコチラから) |
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また、この純資産価額方式による株価ですが、皆様方の会社が大型の設備投資をされて、3
年くらい経ちますと、大きく下がる可能性があります。
大きな設備投資をして、すぐには無理かも知れませんが、3年ぐらい経過した時点で、大幅
に評価額が下がる可能性がありますので、そのタイミングを逃すと損ですよね。
株価というのは、いろんな要因で、上がったり下がったりします。
たとえば、土地の値段や株式市場、それから皆様方の会社の業績や皆様方の会社の設備投資
など、いろんな要素によって、税務署が評価する株価も変動します。
つまり、株価がトンと下がるタイミングというものがあるのです。
そこを、うまく逃さず、そのタイミングで、贈与しますとか、株式の移動をしますとか。そ
ういうタイミングを逃さないためには、やはり、毎年、株価を算定しておくことが必要です。
私が、毎年株価を算定してくださいと言う理由は、そこにもあるのです。
上場会社の株価を見るのとは違って、毎日というわけにはまいりませんが、少なくとも一年
に一度くらいは、皆様方の会社の株価の動きを、きちんとつかんでおいていただきたいと思い
ます。
もう一つの評価方式として、類似業種比準方式という評価方式があります。
先はどの純資産価額方式は、財産中心の評価方式であったのに対して、類似業種比準方式は、
業績中心の評価方式です。
業種が類似した上場会社と比較して株価を決めるということで、類似業種比準方式という名
前がついているわけです。
皆様方の会社と業種が類似した上場会社、サンプル会社があって、そこと業績を比較して、
皆様方の株価を決めるという方式になっています。
比較する要素というのは、1株当たりの配当金、I株当たりの利益金額、1株当たりの簿価
純資産額の3つです。
図表4の計算式をご覧下さい。細かな計算式の中身はさておき、一つだけ注目
していただきたい点があります。
配当は1、それに対して利益は3、簿価純資産額は1になっていて、利益のウエイトが多く
なっている。そして、足して5で割るという形になります。
1対3対1の割合です。
利益のウエイトが3倍になっているというところに、ご注目していただきたいと思います。
何か言いたいかというと、利益が下がったら株価は非常に下がるということです。
利益が、非常に大きい算定要素になるということです。
昔は、これが1対1対1の割合だったから、利益が下がっても、それほど株価に影響はなか
ったのですが、今の計算式では、利益が下がると、非常に株価が下がるということです。
ですから、今期は業績がちょっと不振だったなというときには、株価が大幅に下がっている
可能性があるわけで、何回もお話しておりますが、毎年株価を算定して、そのタイミングを逃
してはいけないということです。
ところで、この利益の数字ですが、単純に、決算書の利益金額を持ってくるわけではないの
です。
ペースになるのは、決算書の利益金額ではなくて、あくまでも、法人税の所得金額です。
ご存知のように、法人税の所得金額と決算書の利益金額とは異なります。
この法人税の所得金額をペースにするのですが、さらに、いくつかの項目について調整を加
えます。
このようにして、その事業年度における利益の数字が計算されるのです。
それで終わりではありません。
その上で、その前の事業年度における利益の数字との平均値を求めます。
最終的には、この平均値とその事業年度の利益の数字とを比べて、どちらか低い方を採ると
いうことになります。
このように、非常に複雑な過程を経て、利益の数字が求められるのです。
ですから、あれこれ考えるよりも、株価の算定結果を見た方が手っ取り早いわけで、毎年、
株価を算定する。そして、利益の数字がちょうどうまい具合になったときに、株価がどんと下
がりますから、そのタイミングを決して見逃さないということです。
くどいようですが、類似業種比準方式の計算式には、かなり加工した利益の数字をインプッ
トしますから、そのタイミングは、会社の利益だけを見ていてもつかめません。
実際に、株価を算定してみることが大切です。
その辺のところを、十分にご理解いただきたいと思います。