利益の水増しをするのが粉飾決算です。本来の税金より多く負担した分を取り戻すためには決算修正を行うことが必要です。ただし、一度に還付されるわけではなく、支払うべき税金に充当され、 5年経過後に残金が還付されます。
粉飾決算は、要は利益の水増しのことです。特に昨今の経済環境を背景に金融機関や官庁に対して赤字決算にはしたくないという事情もあり、やむを得ず粉飾をするケースがなくはありません。どのような事情があったとしても粉飾決算は認められるものではありませんが、オーナー会社の場合、特に第三者の株主がいるわけでも、上場会社のように外部監査を受けるわけでもありませんので、粉飾しやすい土壌がなくはありません。
税務上も粉飾決算を認めているわけではありませんが、粉飾決算により税金が多く発生することになりますので、税務署もそれに文句をつけることもない、というのが実情です。
粉飾決算の救済処置を利用しよう
粉飾決算の手法を簡単にいうと、次のようなものがあります。
1.会計の処理方法を変更することで利益を出す方法
この方法は会計的には問題になりますが、税務的には認められていることが多く、粉飾の中でも、許される範囲といえなくもありません。たとえば、税務上は減価償却費の計上が任意のため、計上をストップしたり、償却額を抑えたりすることで利益を嵩上げできます。未払費用の計上なども内容によっては、費用の計上を見合わせる方法があります。
2.事実を仮装して利益を出す方法
売上げを仮装して計上したり在庫を水増ししたりする方法ですが、通常粉飾といえば、こちらの方法によるものをいいます。事実と異なることを仮装して会計処理を行うことになり、「仮装した事実」を将来にわたって引きずることになります。
1.の方法は税務的にも問題になることはないのですが、2.は粉飾した年度については本来の税金より多く税金を負担していますので、前述したようにあえて問題にはなりません。
しかし、2.の方は、将来のどこかで「仮装」を修正したときに問題が生じることになります。将来のどこかで過去の粉飾を修正するとなると、修正した年度は逆粉飾ということになります。
過去 3000万円の在庫の水増しにより利益を嵩上げしたのであれば、修正により 3000万円の在庫を落とさない限り、本来の決算には戻りません。
ところが、3000万円の在庫を落として会計の辻褄はあいますが、その3000万円の損は過去の粉飾決算のときの損であって、修正したときの損ではないとして税務上は、損として認められないことになります。このようなケースの救済措置として、税務上次のような取り扱いをしています。
1.粉飾から 5年以内の決算において修正を行う(過年度修正損のような科目で修正する)。
2.修正年度以降、本来払うべき税金から順次充当される。
3.修正後5年経過後、まだ充当されない金額がある場合に残金が還付される。
粉飾決算の場合は、このような煩雑な手続きと時間がかかることになりますので、できるだけ税務上、問題のない1.の方法による「粉飾」をおすすめします。(笑)