第5次医療法改正で医療法人制度は変わりましたか?

平成19年4月1日以降、医療法人の「非営利性の徹底」「公益性の確立」「効率性の向上」「透明性の確保」「安定した医業経営の実現」を図るという5つの基本方針に基づき医療法人改正が行われました。
具体的なポイントとしては

a.解散時の残余財産の帰属先

持分の定めのある社団医療法人について解散時に出資持分に応じた残余財産の分配を受けることは実質的に配当に当たるのではないか(非営利性の形骸化)という指摘から、新制度の下設立される基金拠出型医療法人においては残余財産の帰属先を出資者ではなく、国・地方公共団体等から選定することとなりました。

b.社会医療法人の創設

救急・災害・へき地医療等の公益性の高い医療サービスを提供する地域医療の中核病院と位置づけられる「社会医療法人」が創設されました。社会医療法人は一定の収益事業を営むことや医療法人債の発行・募集を行うことができます。

c.管理体制の見直し・強化

提供する医療の資の向上及びその運営の透明性の確保を図ることが、法律上求められるようになりました。理事・監事の任期の明文化、監事の職務の明文化、事業報告書・監事の監査報告書の作成が義務付けられました。また都道府県に提出された事業報告書等の閲覧についての規定が設けられました。

d.附帯業務の拡大

医療法人が行うことのできる附帯業務に有料老人ホームや高齢者専用住宅の設置などが認められることとなりました。

e.自己資本比率の規定の廃止

従来医療法人の資産要件として定められていだ自己資本比率が20%以上であるこどという規定が廃止されました。

f.事業報告書等の強化

医療法人は毎会計年度終了後2ヶ月以内に事業報告書等(事業報告書・財産目録・貸借対照表・損益計算書など)の作成をしなければならないとされました。これら事業報告書等は、理事から監事に提出され、監査を受けることとなります。
  • 医療法制定……………昭和23年
  • 第1次医療法改正……昭和61年
  • 第2次医療法改正……平成4年
  • 第3次医療法改正……平成9年
  • 第4次医療法改正……平成13年
  • 第5次医療法改正……平成19年

 

平成19年4月以降の医療法人の形態を教えてください。

(1)新法の下で設立できる医療法人

  a.社会医療法人(今回新設)
  都道府県知事の認定を受けたもので、公益性の高い地域医療の中核を担う存在と位置づけられます。

  b.特定医療法人(従前と変わりなし)
  租税特別措置法により規定される法人で、今回の医療法人改正による変更はありません。

  c.基金拠出型医療法人(今回新設)
  非営利性の徹底という目的から、解散時の残余財産の帰属先を国等から選定することになります。

(2)経適格置型医療法人(旧医療法の下存在していた法人で、19年4月以後はその設立ができなくなりましたが、経過措置が設けられています。)

  a.出資額限度法人
  “適壮時の持分払い戻し請求権”ど解散時の残余財産分配請求権”の範囲を「払込出資額」とする法人です。新法の基金拠出型 医療法人に類似する形態で、新法施行後も「当分の間」その形態が存続できます。

  b.持分の定めのある医療法人
  旧法の下では、この形態の医療法人がほとんどを占めていました。新法適用後も“退壮時の持分払い戻し請求権”ど解散時の残余財産分配請求権”(いわゆる財産権に関する事項)に関する規定は、「当分の間」その効力を有することとされています。 「新法の下設立できる医療法人」と 「旧法の下に作られた経過型医療法人」の2つです。

c.特別医療法人
  役員の同族支配・残余財産の帰属先の制限等が設けられた公共性の高い法人で、5年間の経過期間(平成24年3月31日)を経て新法の「社会医療法人」に移行。

 

医療法人の業務内容を教えて下さい。

医療法人が行うことの出来る事業は、原則として、病院、診療所又は介護老人保健施設のみです。しかし、業務に支障のない限り、定瓦款又は寄付行為の変更により他の医療に関係する業務も運営することができます。

(1)本来業務【医療法弟39条】

○医療法人は病院、医師若しくは歯科医師が常時勤務する診療所又は介護老人保健施設の開設を目的として設立される法人である。

(2)附帯業務【医療法第42条】

○医療法人は、その開設する病院、診療所又は介護老人保健施設の業務に支障のない限り、定款又は寄付行為の定めるところにより、次に掲げる業務の全部又は一部を行うことができる。

医療法人は、上記により、本来業務のほかに医療法弟42条各号に定められている業務を行うことができます。しかし、附帯業務については、委託すること、又は本来業務を行わず、附帯業務のみを行うことは医療法人の運営上、不適当であるとされています。
内容 具体例
医療関係者の養成又は再教育 看護専門学校、リハビリテー ション専門学校 後継者等に学費を援助し医学 部等で学ばせることは該当し ない。
医学又は歯学に関する研究所 の設置 腫瘍医学研究所、臨床医学研 究所 設置 目的が医療法人の目的の 範囲を逸脱するものでないこ と。
医療法弟39条弟1項に規定す る診療所以外の診療所の開設 巡回診療所、へき地診療所 医師等が常時勤務していない 診療所でもよいとする。
疾病予防のために有酸素運動 を行わせる施設 メディカル・フィットネス(厚 生労働省令の施設要件を満た すもの) 「厚生労働大臣の定める基 準」については、平成4年7 月1日厚生省告示第186条を 参照のこと
疾病予防のために温泉を利用 させる施設 クアハウス(厚生労働省令の 施設要件を満たすもの)
有料老人ホームの設置 老人福祉法に規定するもの
その他保健衛生に関する業務 下部参照
その他保健衛生に関する業務とは? 保健衛生に関する業務については、厚生労働省より通知が出されており、 主に以下の業務が運営可能となっています。
衛生事業
薬局、施設所、衛生検査所
介護事業
訪問看護ステーション、介護福祉士養成施設ケアハウス、ホー ムヘルパー養成研修事業
社会福祉関係
難病患者等居宅生活支援事業、乳幼児健康支援一時預り事業
高齢者支援
高齢者等の介護予防、生きがい活動支援事業、在宅介護支援 事業
患者の送り迎え
介護保険法に規定する訪問介護その他一定の事業と連続して、 又は一体としてなされる患者等の有償移送行為で、道路運送 法に規定されているもの

 

役員に関する見直しのポイントを教えてください。

医療法改正に伴い、以下の項目の変更があります。
 a.役員(理事及び監事)の任期。
 b.監事の職務。
 c.役員の補充。


a.役員(理事及び監事)の任期
  医療法改正に伴い、「医療法人の内部管理体制の明確化」として医療法人の運営を行なう理事と業務・財政状態を管理・監督する監事について新たな規定が設けられました。
  旧医療法において、実は役員の任期は明確には決まっていませんでした。ただモデル定款第20条第1項において、「役員の任期は2年とする。ただし、再任を妨げない。」としていたため、多くの医療法人がこの規定通りにしていました。
  ただ平成19年4月の改正により役員の任期は2年を超えることは出来なくなりました(再任は可能です)ので、2年未満の任期を採用した医療法人は定款の変更が必要となります。
  また法律が施行された際に施行日現在の役員の任期が問われることになりますが、施行日は関係することなく、その役員の残任期間が任期となります。

b.監事の職務
  医療法人における監事は、法人を監査する重要な機関となります。これまでの監事の職務は民法の規定を準用していました。ただ公益性の高い医療法人運営の適正管理・監督するために、その職務において医療法に明記することになりました。

c.役員の補充
  理事又は監事の定数の5分の1を超える者が欠けた時は、1ヶ月以内に補充しなければなりません。

 

監事の業務内容の改正点

監事の職務について、医療法改正前は民法59条の規定を準用していました医療法改正により医療法に監事の職務が明己されました。このような改正が行われた理由は、監事の職務内容を明確化することにより、経営基盤の強化を回り、その提供する医療の質の向上及びその運営の透明性の確保を強化するためと考えられます。


医療法改正前の職務内容

a.法人の財産の状況を監査すること
b.理事の業務執行の状況を監査すること
c.財産の状況または業務の執行につき、不整の廉あることを発見したときは、これを総会または都道府県知事に報告すること
d.前号の報告を為すため、必要があるときは総会を招集すること

医療法改正後の職務内容

a.医療法人の業務を監査すること
b.医療法人の財産の状況を監査すること
c.医療法人の業務又は財産の状況について、毎会計年度、監査報告書を作成し、当該会計年度終了後3月以内に社員総会又は理事に提出すること
d.a.又はb.の規定による監査の結果、医療法人の業務又は財産に関し不正の行為又は法令若しくは定款若しくは寄付行為に違反する重大な事実があることを発見したときは、これを都道府県知事又は社員総会若しくは評議委員会に報告すること
e.社団たる医療法人の監事にあっては、d.の報告をするために必要があるときは、社員総会を招集すること
f.財団たる医療法人の監事にあっては、d.の報告をするために必要があるときは、理事長に対して評議委員会の招集を請求すること
g.医療法人の業務又は財産の状況について、理事に対して意見を述べること

 

決算において作成する書類及び提出期限

監事の職務について、医療法改正前は民法59条の規定を準用していました。医療法改正により医療法に監事の職務が明記されました。このような改正が行われた理由はヽ監事の職務内容を明確化することにより、経営基盤の強化を回り、その提供する医療の賀の向上及びその運営の透明性の確保を強化するためと考えられます。

      .

(1)事業報告書等の作成

医療法人の透明性の確保を図る観点から、医療法改正により、医療法人は、毎会計年度終了後2ヶ月以内に事業報告書、財産目録、貸借対照法、損益計算書、その他厚生労働省令で定める書類(以下「事業報告書等」という。)を作成しなければならないとされました(医療法51条)作成された事業報告書等は、理事から監事に提出されます(医療法51b.)監事は監査をし、監査報告書を作成することになります。(医療法46の4c.三)

(2)事業報告書の記載事項

事業報告書には大きく、a.「医療法人の概要」、b.「事業の概要」の2点が記載されます。
a.医療法人の概要
「医療法人の概要」には、医療法人の「名称」「事業所の所在地」「設立許可年月日」「設立登記年月日」及び「役員及び評議員」が記載されます。「役員及び評議員」には役員の種別(理事長、理事、監事、評議員)、氏名、職務等が記載されるが、社会医療法人、特別医療法人及び特定医療法人以外の医療法人は記載しなくても差し支えないものとされています。一般の医療法人は「役員及び評議員」の欄は記載不要です。
b.事業の概要
「事業の概要」には、「本業業務」「附帯業務」「収益業務」の概要の他、「当該会計年度内に社員総会又は評議員会で議決又は同意した事項」等が記載されます。
・決算において、医療法人が作成する書類は、事業報告書、財産目録、貸借対照表、損益計算書(以下「事業報告書等」)です。
・事業報告書等は、会計年度終了後2月以内に作成しなければなりません。

(3)都道府県知事への届出

医療法人(社会医療法人を除く。)は、次に掲げる書類を、毎会計年度終了後3か月以内に都道府県知事に届け出なければならないとされました。
(届出が必要な書類)
a.事業報告書等
b.監事の監査報告書
この規定に違反して都道府県知事に届出をしなかったり、又は、虚偽の届出をしたとき、20万円以下の過料に処せられることになります。

 

事業報告書等の閲覧ついて

(1)各事務所での閲覧

医療法人(社会医療法人を除く。)は、次に掲げる書類を各事務所に備えて置き、その社員若しくは評議員又は債権者から請求があった場合には、正当な理由がある場合を除いて、これらを閲覧に供しなければならないとされています。
 (閲覧に供される書類)
   a.事業報告書、財産目録、貸借対照表、損益計算書
   b.監事の監査報告書
   c.定款又は寄付行為
     この取扱いは、平成19年4月1日以後に始まる会計年度から適用されます。

(2)閲覧を行わないことができる「正当な理由」

事業報告書等の閲覧について、この閲覧を行わないことができる「正当な理由」としては、個人情報の保護の場合や法人の業務の運営が不当に書される恐れがある場合、法人の執務時間外の間覧請求などの場合が考えられます。

(3)都道府県での閲覧

都道府県への届出書類は、債権者等の他一般の者も閲覧可能です。閲覧請求があった場合、正当な理由があるか否かを問わず、これを閲覧に供しなければなりません。閲覧の対象書類は、過去3年間に提出された新様式の書類について行われます。つまり、基本的には過去3年間に提出された書類が閲覧対象となります。
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