今年の税金改正では、「非上場株式等に係る贈与税の納税猶予制度が創設されました。この制度を選べば、事業承継の相続税の負担が猶予される可能性も出てきました。セミナーの人気講師でもある西村昌彦税理士が、今回事業承継を検討する経営者の立場で法活用を伝授する一冊。会社法や税法の解説から綴られた「法解釈本」とは一線を画す、実用的ノウハウ本です。 (お買い求めはコチラから) |
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時価と相続税評価額とは、いろいろと違う点はあるのですが、大きな違いはやはり純資産価
額方式の計算の仕方と、原則的には類似業種比準方式が使えないということです。
とりあえず、類似業種比準方式の問題は別にして、純資産価額方式の話を中心にしたいと思
います。
同じ純資産価額方式でも、時価といった場合の純資産価額方式と、相続税評価でいう純資産
価額方式とは、評価のやり方が違います。
相続税評価でいう純資産価額方式というのは、たとえば相続とか贈与があった時点で会社を
清算した場合に、株主に対してどれだけの分配金があるのか、という考え方に基づいています。
つまり、会社の清算を前提にしているわけです。
ところが、時価といった場合には、そもそも清算を前提にして会社の売買なんかしませんか
ら、会社は当然ずっと継続する、いわゆるJづIIイング・コンt‐。yとしての会社の評価と
いうことになってくるわけで、清算価値ではありません。
それでは、どういう違いがあるのかということですが、もう一度、31ページの図表3を見て
いただきたいと思います。
まず、一つの大きな違いは、この評価益の税金部分ですね。
いわゆる42%控除。会社の清算をすると、この部分については外部に流出しますから、マイ
ナスしてもいいですよという話でしたね。
ところが、清算を前提にしないわけですから、この税金は発生しないということになる。
少なくとも、この分だけは、評価上プラスになります。
もう一つは、各資産を時価に置き直しますけれども、この場合の置き直す時価というのは本
来の時価ですから、相続税評価額に置き直すわけではないということです。
そうしますと、たとえば、土地については路線価評価ではだめということになります。
ご存知のとおり、路線価は、時価の8割ぐらいの値段で設定してあるのです。
毎年7月1日頃に、その年の路線価が公表されるのですが、これは、その年の1月1日時点
での鑑定評価等、つまり不動産鑑定士が時価評価したもの等を参考にして、これに8掛けした
ものを路線価として公表しているようなのです。
ということは、時価よりも2割ぐらいディスカウントされているという話になります。
少なくとも、土地については、単純に路線価を使うことはできない。
そういったところが、大きく違ってくる点です。
細かい評価のやり方はともかくとして、要するに、相続税評価額よりも時価のほうが間違い
なく高くなるというのは、おわかりいただけましたよね。
評価益の42%部分の控除がなくて、土地の評価額が高くなるということですから、どうして
も相続税評価額よりは高くなる。さらに、類似業種比準方式は、原則として使えないというこ
とになります。
ただし、ちょっとマニアックな話で申し訳ないのですが、課税上弊害がない限りという条件
付きで、時価上の純資産価額方式と類似業種比準方式とを50%ずつミックスすることが認めら
れています。
だから、時価上の純資産価額を50%、それから類似業種比準価額を50%ミックスした価額で
もよい、課税上弊害がなければ、それも認めますという規定になっています。
いずれにしろ、結論を急ぐと、相続税評価額よりも時価の方がずっと高いということを認識
していただければよろしいかと思います。
ですから、先ほどのケース②~④の売買で相続税評価額を使いますと、税務署から否認され
る可能性もあるということを、認識しておかれた方がよいと思います。