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WEBライティングは資格も不要で自宅でできる仕事として人気があります。クラウドソーシングのサイトではWEBライターとしての経験が無くても応募できる案件がたくさんあるため、まずはお小遣い稼ぎの気軽な気持ちで始める人も多いと思います。ただ、WEBライティングの仕事をする際には必ず知っておかなければならない法律があります。そこで今回は、このようなWEBライティングに関する基本的な法的知識を整理します。
なお、実際にWEBライティングを始めた人の体験談を以下の記事で紹介しています。
著作権法とは、著作物が作者など著作権者に無断で利用されないよう保護する法律です。WEBライティングの仕事で作成する文章はまさに著作物にあたります。また、WEBライティングにおいては執筆テーマに関連する他人のWEBサイト上の文章を参考にすることが多いと思われますが、その他人の文章もまた著作物として保護されるべきものです。文章だけでなくWEBサイトに利用する掲載するイラストや画像についても著作物にあたることがあります。したがって、WEBライティングにおいては他人の著作権を侵害することのないように細心の注意を払う必要があります。
他人の著作権を侵害した場合には、WEBライターだけでなく記事を公開するクライアントも著作権者から損害賠償請求を受けるリスクがあります。また、悪質と思われたときには刑事告訴されることもあります。
このため、WEBライティングの仕事を受ける際にはクライアントから「コピペ禁止」を強く求められることが通常です。現在はコピペチェックができるツールが無料で配布されているので他のWEBサイトからのコピペは簡単に見破られてしまうと考えておいた方が良いでしょう。
他人の文章を無断で利用することは著作権侵害になる可能性がありますが、例外として著作権法上定められた引用ルールに従っている場合には著作権者の許可を得ずに自分の作成する記事に利用することが可能です。他人の文章の引用が適法となるための引用方法は法律に明示されているわけではなく議論のあるところですが、文化庁の整理によれば以下のとおりです。
①他人の著作物を引用する必然性があること。
②かぎ括弧をつけるなど,自分の著作物と引用部分とが区別されていること。
③自分の著作物と引用する著作物との主従関係が明確であること(自分の著作物が主体)。
④出所の明示がなされていること。
参照:文化庁HP「著作物が自由に使える場合」
「著作物が自由に使える場合」
②③については、引用部分に網掛けやクォーテーションマークを付けるなどの方法が良く用いられています。WEBライティングの仕事をする際にはクライアントから引用部分の表記方法について指示があることもありますので、その指示に従って記事を作成することになります。また、WEBライティングにおいては文字数を指定されることが多いところ、引用部分は文字数に含まないとするクライアントもいるためクライアントの指示をよく確認しておく必要があります。
④の出所の明示に関しても、WEBライティングにおいてはクライアントから表記方法についての指示を受けることがあります。基本的な考え方としては引用元の文章作成者と媒体の名称を明示すれば足ります。例えば、他人のWEBサイトから文章を引用する際には、引用元のWEBサイト運営者名やWEBサイト自体の名称を記載します。これに加え、引用元のWEBサイトのリンクを貼ることもしばしば行われています。
最近ではTwitterなどSNS上で人気となった投稿を埋め込んでいる記事が増えてきました。SNS上で人気のある投稿はWEBサイトのコンテンツとしても魅力的であり、PV数の向上に貢献することが多いためです。ただし、SNS上の投稿も当然ながら投稿者に著作権があります。したがって、SNSをそのまま記事内に埋め込む場合には上で説明した著作物の引用ルールに従って利用することが必須です。
これに加え、SNS上の投稿を記事に利用する場合には当該投稿のリプライやダイレクトメッセージ機能を利用して投稿者から掲載の許可を得ることがマナーです。許可を得なくても引用ルールに従っている限り違法となる可能性は低いのですが、SNSの投稿をそのまま埋め込んでいる場合はきちんと投稿者の許可を得ておかないと転用されていることに気が付いた投稿者が投稿を削除してしまうことがあります。
WEBライティングの仕事を受ける場合、クライアントによってはアイキャッチ画像などの選定もあわせて依頼されることがあります。この場合、インターネット上で検索して出てきた画像(イラスト、写真等)を勝手に使うことは著作権法違反となる可能性が高いので注意が必要です。イラストや写真などの画像については、インターネット上で不特定多数に公開されているものであってもイラストを描いた人や写真を撮影した人の著作権があるためです。
したがって、使いたい画像がある場合にはその画像が著作権フリーとされているかを確認する必要があります。また著作権フリーとなっている場合でも商用利用はNGなどといった利用条件が付いていることがありますので画像が掲載されているWEBサイトの利用規約等を十分に確認する必要があります。
現時点で完全に自由に写真を利用できるWEBサイトはほとんどありませんが、比較的利用している人の多い有名なサイトとして、ぱくたそ(https://www.pakutaso.com/)という写真を商用利用OKで無料配布しているサイトがあります。
WEBライティングの仕事の依頼を受ける場合、納品する記事の著作権をWEBライターとクライアントのいずれに帰属させるかがポイントとなります。記事の著作権がWEBライターに残る場合にはクライアントがその記事を自由に利用できなくなるため、通常は納品する記事の著作権はライターからクライアントに譲渡することになります。
また、著作権譲渡とあわせて「著作者人格権を行使しない」旨の特約を設けることが一般的です。著作者人格権とは、WEBライターが納品した記事について自分の名前を表示することを求める氏名表示権や記事を無断で修正されない同一性保持権など、いわば記事を作成したWEBライター自身の思い入れを保護する権利であり著作権法において定められているものです。
しかし、WEBライティングにおいてクライアントは納品された記事を自由に利用することが前提となっています。したがって、WEBライターが著作者人格権を行使すると困ったことになります。そうであれば、著作権と同様に著作者人格権もクライアントに譲渡すれば良い話にも思えますが、著作者人格権については譲渡ができないこととされているのです。そこで、譲渡とほぼ同じ結果を生じさせることのできる代替策として著作者人格権を「行使しない」ことの定めがされるのです。
WEBライティングの仕事が匿名記事の執筆である場合、クライアントとしては自社の名義で納品された記事をWEBサイトのコンテンツとして公開することになります。このようなケースでは、WEBライターはいわばゴーストライターであるためライター自身がその記事の作成に関わっていることを秘匿するように求められることが通常です。
クライアントによっては秘密にして欲しい旨を積極的に求めないこともありますが、匿名で執筆する場合にはその記事の作成に関わったことを第三者に伝える際にはひとこと許可を取るのがマナーです。
WEBライターが機密保持との関係で問題を生じやすいのは自身のライティング実績をポートフォリオとして公開する場面です。WEBライターが優良案件を獲得していくためには過去のライティング実績をクライアントに示すことが重要となってきますが、このとき公開の許可を得ていないWEBサイトの記事を示すのは考えものです。特に、WEBライターが自分の集客用サイトを持ち不特定多数の人が閲覧できる状態でその集客サイト上にポートフォリオを掲載する際には十分に気を付けなければなりません。
公開の許可を得られていないWEBサイトへ納品した記事をどうしてもポートフォリオとしてクライアントに提示したい場合には、少なくともWEBサイトへのURLは示さず掲載されているWEBサイトが特定できないようWordやテキストデータなどで提示するなどの工夫が必要です。
今回は、WEBライティングを仕事として受ける場合の法的な注意点について解説しました。WEBライティングは比較的始めやすい仕事ですが、法律とは無縁ではありません。基本的な法律知識を把握してから仕事に取り組むことでトラブルを回避することができるでしょう。また、最低限の法律を理解していることはクライアントからの信頼にもつながります。WEBライティングに限りませんが、事業として新しい仕事をする際には簡単で構いませんので必ずその分野に関連する法律を調べておくことをおすすめします。