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ドローンとは、地上から遠隔操作することのできる無人飛行機です。日本では、2015年頃から政府や企業がドローンの活用について積極的に検討を始めました。ニュースなどでも話題になっていたのを覚えている方も多いと思います。
ドローンは空撮に利用することもできます。ドローン空撮はなかなか手に入らない珍しい写真や動画を撮影できるため一定の需要がある一方で、ドローン空撮ができる人はまだまだ少ないため報酬が高いといわれています。ただし、ドローン空撮については厳しい法規制があります。そこで、ドローン空撮を始める方向けに必要な許認可や空撮をする際に注意すべき法的問題について解説します。
ドローン空撮の稼ぎ方については、以下の記事でも紹介しています。
ドローンを飛ばす場合、飛行機などとの接触や落下物の危険性などがあるため場所が厳しく制限されています。制限の対象となる場所には、ドローンの飛行自体が禁止されているエリアと、許認可を取得すればドローン空撮が可能になるエリアとがあります。
ドローンについては、小型無人機等飛行禁止法に基づき絶対的に飛行が禁止されているエリアがあります。主に国防に関わるエリアとなります。具体的には、以下の対象施設の敷地又は区域及びその周囲おおむね300メートルの地域の上空での撮影が禁止の対象です。
・国の重要な施設等(国会議事堂、内閣総理大臣官邸、最高裁判所、皇居等)
・対象危機管理行政機関及びその庁舎(内閣官房、警察庁、総務省、外務省、防衛省等の各省)
・対象政党事務所(公明党本部、自民党本部、国民民主党本部、日本共産党本部)
・対象原子力事業所(全国各地の原子力発電所、関連施設)
・対象外国公館等(現時点で指定なし)
・対象防衛関係施設(防衛省、全国各地の自衛隊施設)
・大会会場等
・空港
東京都においてはほとんどのエリアがドローン空撮の禁止エリアに該当するといわれています。禁止の対象となるエリアについては、以下の警察庁のWEBサイトに最新情報が掲載されていますので必ず確認してください。
小型無人機等飛行禁止法に基づく対象施設の指定関係
以上のほか、外国要人の来日や東京オリンピック・パラリンピックの開催に伴い、一時的に対象施設が追加されることがあります。これに加え、米軍施設の上空やその周辺、高速道路や新幹線の上空においても重大事故につながる懸念があるとしてドローンの飛行をしないよう国土交通省等が要請しています。
ただし、以下に該当する場合には例外的にドローンの飛行が許容されます。ただし、ドローンの禁止エリアの多くは国家機関が管理する場所であるため、ドローン空撮を目的とする場合には以下の要件を満たすことは難しいといえます。
・対象施設の管理者又はその同意を得た者による飛行
・土地の所有者等が当該土地の上空において行う飛行
・土地の所有者の同意を得た者が、同意を得た土地の上空において行う飛行
・国又は地方公共団体の業務を実施するために行う飛行
なお、後述するように航空法の規制に関しては、ドローンの重量によって規制の適用の有無が変わりますが、ここで説明した小型無人機等飛行禁止法に基づく飛行禁止エリアに関してはドローンの重量による区別はなく一律に飛行が禁止されている点に注意が必要です。
以下のエリアに関しては、航空法に基づきドローン空撮をするにあたり事前に国土交通大臣の許可を取得する必要があります。
・空港等の周辺の空域
・地表又は水面から150メートル以上の高さの空域
・人口集中地区等(DID)の上空
なお、機体本体の重量とバッテリーの重量の合計が200g未満のドローンについては、航空法の規制は適用されません。航空法に基づく飛行エリアの規制に関しては、以下の国土交通省のWEBサイトにも詳細が掲載されています。
無人航空機の飛行の許可が必要となる空域について
空港等の周辺空域と人口集中地区については、以下の地理院地図サイトで確認することができます。首都圏などの市街地はほとんど人口集中地区等に該当します。
地理院地図
許可申請をしてもすぐに許可が下りるわけではないため、ドローン空撮の予定がある場合は早めに許可申請の準備をする必要があります。
以上は法律の規制ですが、これに加えて地方自治体の条例によって規制が上乗せされていることがあります。特に、公園や公共施設上でのドローンの飛行を規制している例が目立ちますのでドローン空撮をする際には、条例による規制対象となっていないかについても事前に確認する必要があります。
ドローンの飛行については、落下物や墜落による人の生命・身体への危険性があります。実際に、2017年には岐阜県のイベント会場でドローンが墜落しイベントに集まっていた複数の人が負傷する事故が発生しました。
このため、ドローンの飛行方法に関しては、以下の規制があります。夜間の飛行やイベント会場での飛行など以下の規制に反する飛行方法による場合には、事前に国土交通大臣の承認が必要となります。
・飲酒時の飛行の禁止
・飛行前の機体点検等の確認
・他の航空機又は無人航空機との衝突予防
・危険な飛行の禁止
・日中における飛行
・自分の目で見える範囲内での飛行
・地上の人等との間に30メートルを確保した飛行
・祭礼、イベント等の多数の人が集合する催しが行われる場所の上空以外における飛行
・危険物の輸送は禁止
・物件の投下の禁止
なお、機体本体の重量とバッテリーの重量の合計が200g未満のドローンについては、以上の飛行方法に関する規制は適用されません。
ドローンに限らず屋外での撮影においてはプライバシー権や肖像権について十分な配慮が求められます。仮にプライバシー権や肖像権侵害である場合には、被害を受けた人から慰謝料等を請求されるおそれがあります。
例えば、ドローンを使って上空から撮影することにより他人の家の中の様子が映ったりした場合には、プライバシー権侵害となる可能性があります。また、人はだれでも他人に無断で自分の姿を撮影されない権利である肖像権を持っています。したがって、家の中でなく外を歩いている様子であっても無断で撮影すると肖像権侵害となる可能性があります。ただし、人の映り込みのサイズが小さく個人を識別することが困難であればあまり問題とはならないでしょう。街中での撮影における肖像権の問題に関しては、以下の記事でも詳しく解説しています。
法律や条例に基づく許認可が不要となるエリアであっても完全に自由にドローン空撮ができるとは限りません。特に民家や神社仏閣など私有地の上空で撮影をする場合には、その私有地の所有者等の許諾を得ることがマナーです。民法上、土地の所有権はその土地の上空にも及ぶとされているためです。
今回は、ドローン空撮を始める際の許認可やルールについて解説しました。このように新しい事業に参入する場合には、行政に対する許認可を最初に検討する必要があります。許認可の取得が困難であればそもそも事業として成り立たないためです。
許認可についての検討が終わり実際に事業化するとなったら、次に実際の業務において起こりそうなトラブルを想定して対応方法を検討しておくことも重要となります。ドローン空撮に関しては実際にトラブルもいくつか報道されていますのでこのような失敗例を分析しておくことも大切です。
最初の段階で十分に検討しておかないと後から大きなトラブルに発展することもありますので、事業としてドローン空撮を始める際には弁護士や行政書士など専門家に相談しておくことをおすすめします。