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VTuberとは、バーチャルYouTuberの略称です。一般的なYouTubeではYouTuber自身が動画に出演していますが、VTuberの場合には人ではなくアバターと呼ばれる架空のキャラクターが動画を配信しています。アバターは、2次元のイラストであることもあれば3次元であることもあります。また、必ずしもアバターが動く必要はなく静止したイラストに声優の声をあてることもあります。要するに、キャラクターが人の代わりに登場する動画のうち、そのキャラクター自身が動画を配信しているという設定のものをVTuberと呼びます。
VTuber動画の制作においては、シナリオ作成、アバターの作成や動画内容に合わせたアバターの挙動の調整、動画自体の作成・編集、アバターの動きに合わせた声の吹込みが必要となります。静止画ならともかく、2次元であろうと3次元であろうとアバターを動画に合わせて動かす場合にはそれなりの技術が必要となります。したがって、人が登場する一般的なYouTube動画と比較して、技術力や作業上の手間がかかることが多いといえるでしょう。
一方で街中やスタジオでのロケを要するYouTube動画と比較すれば、場所を特別に手配する必要がないため自宅だけで作業が完結します。したがって、場所を問わず動画配信したい場合には、VTuberの方が取り組みやすいといえます。
VTube動画を配信するために必要な作業の全部を企画者1人で行うか否かは動画配信者によって異なります。本格的なVTube動画を配信する場合には、企画者が声優に声の吹込みを依頼したり、アバターの制作を第三者に依頼したりすることもあります。
VTube動画で声の吹込みをしている人を「中の人」と呼ぶことがあります。声の吹込みを動画の企画者が兼ねているケースもあれば、声優に依頼していることもあります。VTuberの場合に特徴的なこととして、基本的に「中の人」と呼ばれる声優が誰であるかが公開されていません。この点はアニメなどと大きく異なる慣習です。
VTube動画で声優が公開されない理由には色々な事情があるとは思われますが、一番大きいのはVTuberの場合にはキャラクター自身が生身のYouTuberと同じように実在しているという設定のもと動画が制作されていることにあるでしょう。実際に、キャラクターはVTube動画を配信するだけではなく、キャラクター自身がSNSアカウントを開設して発信したりもしています。
ア.声優の探し方
VTubeの声の吹込みを声優に依頼する場合、プロの声優に依頼するケースもあれば、そうではないアマチュアの人を募集して依頼するケースもあります。いずれのケースであっても、声の吹込みを企画者以外の第三者に依頼するのであれば業務委託契約を締結する必要があります。
VTube動画を継続的に配信する場合、基本的には声の吹込みを同じ人に依頼することになります。VTuberの活動にあたっては声優の良し悪しによってファンが付くことが多いため、声の吹込みをする人はとても重要です。したがって、声優を探す際には、単発ではなく継続的な発注のできる相手であるかをよく見極める必要があります。
イ.声優との業務委託契約書
声優への依頼は、VTube動画の企画が立ち上がる都度必要となります。このため、継続的な契約関係を前提とした一般的事項を定めた基本契約書を締結した上で、個別の企画ごとに別途個別契約を締結する方法とすることが一般的です。この場合、基本契約書には解約についての定めや秘密保持義務、著作権など権利関係に関する一般的な条項のみ定められます。そして、個々の業務が発生する都度、業務の具体的内容や報酬額、納期などの条件を個別契約で定めます。個別契約は、企画ごとに簡単な契約書を作成することもできますし、そうではなくメールなどで依頼内容を送信し、声優側から承諾の返信があればこれをもって個別契約が成立するとする方法もあります。
声優との間の基本契約書に定められる条項のうち、比較的重要なのは秘密保持義務と権利関係に関するものです。
上で説明したようにVTube動画では「中の人」と呼ばれる声優が誰であるかが秘匿されるケースが多くあります。したがって、声優を依頼する人に対しても、そのVTube動画に関与していることを必ず秘匿してもらう必要があります。これが秘密保持義務です。
また、権利関係に関して主に問題となるのは著作権です。声優による声の吹込みに関しては、セリフを声優自身が考えたような場合に創作性が認められることがあります。この場合、声の出演に関して声優自身に著作隣接権という権利が発生する可能性があります。したがって、VTube動画の企画者としては、声優から著作隣接権等の譲渡を受ける旨の条項を基本契約書に入れておく必要があります。仮に、声の出演に関する著作権が声優に残ったままだと、VTube動画を自由に利用したり編集することが難しくなる可能性があります。
VTuberにとって声優と同じく重要なのは、動画で使用するアバターです。アバターには2次元のものと3次元のものがあります。いずれも、元になるイラストを用意し、専用ソフトを利用して実際に動かしたり加工したりすることができます。したがって、アバターを制作するためには、まず元になるイラストを作成する必要があります。イラストの見栄えにこだわる場合には、イラストレーターなどに作成を依頼することになります。
イラストの作成に関する契約は、声優との契約と同様に業務委託契約となります。声優との契約と異なる点として、イラストの制作はVTuberを始める時点で一括発注し、その後継続的な発注は必ずしも想定されていないことがあります。したがって、基本契約と個別契約のように二段構えの契約方式を採用する必要はなく、一つの業務委託契約書の中にすべての契約条項を盛り込むことになるでしょう。また、個別の条項においてイラストの作成に関する契約については、イラストの制作者からイラストに係る著作権の譲渡を受ける旨を必ず定める必要があります。
VTuberは流行り初めたばかりなので、YouTuberと比べると参入者が少なく狙い目といえます。もっとも、先行事例が少ないため実際にVTuberとして活動を始める際にどのような点に気を付ければよいのか、わかりにくい点も多くあります。声優など動画制作に関わる業務の一部を外注する場合には、必ず契約書を作成しておくことが重要です。特に、著作権に関する条項は非常に重要なので、不安がある場合には専門家などに相談しておくと安心です。