書籍 同族会社のための「新会社法」活用術(セミナー録・2006年4月発刊)

どこがどう変わり、何をどう活かせるのか?
「ポイントがまとまっていてわかりやすい」と評判の西村昌彦税理士が、会社法について行ったセミナーの口語録。
これまでの旧法を参照しながら、現状を振り返らせ、改めて会社法を確認するのにピッタリな一冊。急速な変化に対応するためにはぜひ!

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26株主の「名義変更」の際は何に注意すべきか

折につけて、よくお話しすることですが、株券は非常に大事です。どういう意味で大事 かというと、株式の権利の所在、誰が株主かを特定する場合、誰が株券を持っているのか
ということが、非常に重要なポイントになってくるからです。現行の商法では、株券を持 っている人が私は株主ですと名乗り出れば、そのように推定されるという規定になってい
ます。  また、私からあなたへ株を譲りますといった場合は、必ず、私からあなたに株券を引き 渡さないと、譲渡の効力は生じない。これについても、現行の商法に規定があります。商
法205条です。このように、株券の存在というのは非常に大きいのです。  相続の際は、名義株のことでよくもめますよね。世の中には、名義だけの株主というも のがあるわけで、名義株はよく見かけます。この名義株は、いろいろな意味で問題になる
のですけれども、一番よくあるパターンは、実際に相続が起こりまして、家族名義の株式 が、果たしてその家族の株式かどうかということです。税務調査で非常にもめることが多
い。名義が家族になっているから、当然亡くなった方の遺産ではないということで、相続 税の申告から外すわけです。けれども、税務署のほうは、これは名義株じゃないか、名義
人の株ではなく亡くなった人の株じゃないのかと、だから申告をやり直せ、というような 話になります。  その昔、株式会社をつくるのには、必ず7~8人の株主が必要で、そうでないと株式会
社がつくれなかったのですね。これが、平成2年の商法改正で、1人でもつくれるという ことになりましたけれども、多くは平成2年よりも前に作られた会社です。そういう会社
は、必ず7人~8人の株主を集めて作ったわけです。でも、実際に株主を集めたわけでは なくて、名前だけ借りて、とりあえず何株ずっか名前連ねるという形で、名義だけの株主
を設けていたというケースが非常に多いのです。  そして、7人集めるためにどうするかというと、奥さんがいれば当然奥さんでしょ、子 供がいれば子供でしょ、自分の兄弟がいれば兄弟で、それでもだめなら知人という話にな
るわけです。そういう名義株について、税務署は、あくまでも実質の株主は誰かで判断し ます。税務署は名義どおりの判断をしないわけです。  実際に払込みをしたのは誰、その株式を支配しているのは誰という話になってくるわけ
です。もし名義株だとすると、本来の株主であ。る亡くなった人の財産として申告しなけれ ばならない。その辺のところをきちんと調べるために、相続税の税務調査は、かなり厳し
くしつこくやられます。その調査に対応するのは、残されたご遺族です。本人は亡くなっ ていて死人に口なしですから、何も言えないですよね。事情がよくわからないまま、ご家
族は税務調査の対応をしなければいけないわけです。  残された奥様やご子息が実質上の株主であることを証明する一つの方法は、株券を持っ ていることです。私は株券を持っていますよ、私の名義に裏書された株券を持っています
よ、ということは、非常に強力な証明の手段になるわけです。そういうことで、きちんと 株券を発行して、しかるべき株主がきちんと保管する。これが非常に大切ですね。
 ところで、新会社法で株券不発行が当たり前になり、株券が発行されなくなると、何で 株主を判断するのかという話になってくるわけです。そこで重要になってくるのは、株主
名簿です。新たに株主になった場合には、必ず名義変更の手続きをとる。会社はその名義 変更の手続きにより株主名簿を書きかえます。株主名簿、いわゆる会社に保管されている
株主台帳が、誰が株主であるかという証明書として、非常に重要な役割を果たすことにな ってくるわけです。だから、株券については発行しなくてもよくなりますが、株主名簿に
ついては、今まで以上に厳密に、きちっと管理しておかなければいけないという話です。  よろしいですか。株式の移動があれぱきちっと日付をつけて、名義変更の書き込みをす
るということです。まさにコンプライアンスの時代、こういう法的手続は、今後ますます 重要になってきます。これは、我が身を守るためです。人のためにやっていることではな
いのです。

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