どこがどう変わり、何をどう活かせるのか? 「ポイントがまとまっていてわかりやすい」と評判の西村昌彦税理士が、会社法について行ったセミナーの口語録。 これまでの旧法を参照しながら、現状を振り返らせ、改めて会社法を確認するのにピッタリな一冊。急速な変化に対応するためにはぜひ! |
---|
あわせて、役員賞与についてもお話ししておきますと、point44、資料の50ページのと ころ、利益処分による役員賞与がなくなる。このように、期末の利益処分という考え方が
なくなりますので、利益処分による役員賞与というものもなくなります。期中随時に配当 できるわけですから、役員賞与も、期中随時に出していただいて結構ということです。
ただし、役員報酬や賞与の支給は、株主総会の決議事項になりますから、必ず決議をと る必要があります。1年間いくらの範囲内でという総枠をあらかじめとっておく方法もあ
れば、その都度、個別の決議をとるという方法もあります。 また、新会社法では、役員賞与も、役員報酬と同じ職務執行の対価として位置づけてい ます。今までは、利益処分案の中に役員賞与という項目を入れて、あえて別の議案にはし
なかったですよね。ところが、利益処分として処理することができなくなりますから、今 後は、役員賞与の支給という単独の議案を上げないといけなくなりますね。定時株主総会
の利益処分案という議案はもうなくなり、配当の支払いとか、役員賞与の支給とか、そう いう個別の議案になってくる。すべて、個別の決議になります。 それから、会計のお話ですけれども、これにあわせて役員賞与の会計処理も変わります。
今までは、役員賞与については、費用処理をするという方法と、利益処分として処理をす る方法の2通りがありました。ところが、新会社法施行後は、費用処理一本に限定されま
す。利益処分として会計処理をするということはできない、そもそも、当期末処分利益と いう勘定科目はなくなるのです。だから、当期末処分利益から役員賞与に振り替えるとい
うことはできなくなります。 それでは、今までどおり、決算役員賞与を出したいときはどうすればよいのか。そのと きは引当金を計上する形になります。期中に払う場合には、
借方:役員賞与/貸方:現金預金 でいいわけです。ところが、今期分の決算役員賞与を払いたいという場合には、その承 認は定時株主総会でとるわけですから、それまで聞かあります。そこで、期末時点で、引
当金を計上するわけです。 どういう勘定科目を使うのかは、明確に決められているわけではないのですけれども、 たとえば、 借方:役員賞与引当金繰入額/貸方:役員賞与引当金
といった感じです。計上する金額は、もちろん定時株主総会に上程する金額です。こう いう期末処理をする。借方は繰入額ですから、費用処理でしょう。利益処分じゃないです
よね。こういう形をとりなさいと、企業会計基準委員会から「役員賞与に関する会計基準」 が出ております。 ただ、会計上は費用処理になっても、税金の方は損金算入を認めてくれるのかというと、
これはまた別問題です。平成18年度の税制改正案が出ていますが、それによると、役員賞 与についても条件つきで損金算入を認めようということになっています。具体的には、
・あらかじめ決められた時期に、あらかじめ決められた金額を支給することになってい るもの ・非同族会社における業務執行役員の利益連動型報酬で、一定のもの
については、損金算入が認められる予定です。 このように、税金のほうでは、すんなりと損金算入というわけにはいかないのですが、 会計上は、あくまでも費用として処理をする。
費用処理ですから、販売費及び一般管理費などとして計上されるという話ですね。今ま では、役員賞与は費用ではなく、当期末処分利益の処分として処理してきたわけですから、
見かけの利益は少なくなってしまいますね。 つまり、今までは、利益処分として当期末処分利益で処理していたから、当期純利益に は関係しなかった。今後は、費用処理になりますから、役員賞与の分だけ計上される利益
の金額は少なくなります。実質的な中身は変わらないのですが、決算書の上では、不利な 表示方法になってしまいます。不利という言い方は、よくないのでしょうけれども。