書籍 同族会社のための「新会社法」活用術(セミナー録・2006年4月発刊)

どこがどう変わり、何をどう活かせるのか?
「ポイントがまとまっていてわかりやすい」と評判の西村昌彦税理士が、会社法について行ったセミナーの口語録。
これまでの旧法を参照しながら、現状を振り返らせ、改めて会社法を確認するのにピッタリな一冊。急速な変化に対応するためにはぜひ!

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31「資本」の中身はどこまで大きく変わるのか

ここで、資料編54ページに戻っていただきます。  これも、実務上、非常に重要なポイントになります。貸借対照表の資本の部の名称や中 身が変わります。今、私は、資本の部と言いましたけれども、近々、資本の部と呼ばない
で「純資産の部」と呼ぶことになります。  何で「純資産の部」と呼ぶのかということですが、新しい「純資産の部」の中身を見て ください。結構、見なれない科目が記載されています。下から見ていくとわかりますけれ
ども、「新株予約権」という科目が入っています。それから、「評価・換算差額等」という 項目がありますね。その中の、「その他有価証券評価差額金」とか「土地再評価差額金」。
                                 Jal.aII゛XP14一〇 これらは今までもあったのですけれども、「繰延ヘッジ損益」がここに入ってきています
要は、負債でも資産でもないものは、すべてここにまとめますという考え方です では、「株主資本」といったものが「資本の部」でしたが、これからは、資産でもないし負
債にも該当しないもの、その他すべてを寄せ集めます、と。その寄せ集めの部が「純資産 の部」です。寄り合い世帯みたいなものですね。だから、名称についても、「資本の部」と
呼ぶと語弊があるので、「純資産の部」という、ぽかしたような表示になっているのです。  この「純資産の部」の中で、新会社法がらみで重要なのは、「繰越利益剰余金」という
科目ですね。ちょっと利益剰余金の中身を見ていただきたいと思いますが、「利益準備金」、 これはいいですね。それから、「その他利益剰余金」というのがありまして、その中に
「○○積立金」と「繰越利益剰余金」がある。今までだったら、「その他利益剰余金」の中 に○○積立金と当期末処分利益が入っていたと思いますけれども、繰越利益剰余金になっ
ている。それでは、「繰越利益剰余金」とは一体何かというと、これが従来の当期未処分 利益に相当するものという話になってくるわけです。新会社法では、当期末処分利益とい
う考え方はなくなるので、利益準備金や○○積立金等に該当しないものはすべて、繰越利 益剰余金ということになります。  ところで、貸借対照表はこのように変わりますか、損益計算書も変わります。次の55ペ
ージをご覧ください。損益計算書の末尾3行は、ふつう、    当期純利益    前期繰越利益    当期末処分利益 となっています。税引後の当期純利益に前期繰越利益を足して、一番下が当期末処分利益
という形です。当期末処分利益から先は、利益処分ということになります。今後は、損益 計算書のエンドは、当期純利益になります。  これから先はどこに行くのかというと、先ほどの株主資本等変動計算書の中に「当期純
利益」という項目がありましたね。あそこに出て来るのです。損益計算書の「当期純利益」 から先は、株主資本等変動計算書の役割分担になるのです。  このように、決算書も大きく変わります。恐らく新会社法の施行は06年5月からになり
ますから、3月決算の会社の場合は07年の3月期からになりますね。まだ余裕はあります が。役員賞与の費用処理についても、3月決算の場合は07年の3月期からということにな
ります。そうすると、一番大麦なのは、06年5月決算の会社という話になります。新会社 法の施行後、一番最初に期末を迎えることになりますからね。  巻末資料の47ページのpoint42、利益準備金の積み立て基準なども変わりますよという
話になっています。ここも一度目を通しておいてください。利益準備金積み立て基準、特 に経理の責任者の方、あるいは経理の担当の役員の方にとっては、非常に大事ですよね。
準備金の積み立て基準も変わりますけれども、取り崩し基準も大きく変わります。従来、 準備金を取り崩す場合には、資本金の4分の1は残さないといけないという基準かありま
したけれども、最低資本金がなくなったのと同じで、全額取り崩してもよいということに なりました。承認手続き、しかるべき法的手続きさえ踏めば、全額取り崩すことも可能と
いうことです。だから、全額取り崩して、配当をすることもできる、という話になってく るわけです。  ところで、新会社法の下では、資本剰余金と利益剰余金の混同禁止の原則から、利益準
備金の資本組入れや利益剰余金の資本組入れができなくなります。  非上場の同族会社にとって、これらは手ごろな増資の手段であっただけに、たいへん残 念なことです(巻末資料のpoint43、48ページ~をご参照ください)。

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