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40代になっても両眼とも視力が1.5なのが自慢だったのですが、50歳になったころからでしょうか。新聞の文字がチカチカして見えにくくなってきました。先日、眼科で診療してもらったところ、「老眼です。メガネをかけましょう」と先生からいわれました。大事に使うつもりなので、12万円ほどのメガネを購入しましたが、医療費控除の対象になりますか?
メガネの購入費用は原則的に医療費控除の対象にはなりません。しかし、白内障などの手術後に視力の機能を回復させるために医師の指示により2ヵ月ほどメガネをかけることがあります。
この場合のメガネの購入費用は医療費控除の対象となります。そのほか、発育途中の子どもの未発達の視力を向上させるために目の屈折にあったメガネを医師の指示のもとにかけるのであれば、対象になります。ただ、医学の専門家でない人にとっては、対象になるのかならないのかを判断するのはむずかしいですね。そのため厚生労働省では医師会に対して、「医療費控除の対象となるものは、こういった疾病・症状に限られます」
などの指導を行なっています。
この対象となる疾病は白内障のほか、緑内障や一定度以上の斜視や弱視、視神経炎や角膜炎などの難治性疾患に限られています。
私ごとで申しわけないのですが、最近目がちかちかして見えにくいので眼科に行きました。ご相談と同様、医師から「老眼です」といわれました。今年初めて、医師の診断のもとに老眼鏡を買ったわけですが、治療の一環ではないために、医療費控除の対象にはなりませんでした。
目が裸眼の状態で見えない。でも、医師に診断してもらって、メガネをつけることで見えるようになる。そう考えれば治療の一環といえなくもないと思いますが、近視、老眼、乱視はもともと病気ではなく、身体機能の低下と判断されるからでしょう。
また、メガネには、ファッション(おしゃれ)でかける要素もあり、すべてのメガネの購入費用を医療費控除の対象にするというのには、無理があるとも考えられます。
なお、メガネと同様に視力の低下を補うために装着するコンタクトレンズの購入費用も医師の診断を受けたとしても医療費控除の対象にはなりませんので、ご留意ください。
疾病名 | 治療を必要とする症状 | 治療方法 |
---|---|---|
弱視 | 矯正視力が0.3未満の視機能の未発 達なもの。 | 20歳以下で末発達の視力を向上させるた め、目の屈折にあった眼鏡を装用させる.。 |
斜視 | 顕性斜視、潜伏斜視、斜位があり、 両眼合わせて2プリズムディオプト リー以上のブリズムが必要。 | 眼位矯正又は術後の機能回復のため、眼眼鏡を装用させる。 |
白内障 | 水晶体が白濁して視力が低下し、放置すれば失明するため手術を必要とする。 | 術後の創口の保護と創口が治癒するまで の視機能回復のため、2か月程度眼鏡を 装用させる.水晶体摘出後、水晶体の代 わりにIOL(人工レンズ)を挿入する。 |
緑内障 | 原因不明又は外傷により眼圧(目の かたさ)が高くなる病気で、放置する と失明するので手術を必要とする。 | 術後、機能回復のため、1か月程度眼鏡を装用させる。 |
難治性疾患 | ||
調節異常 | 調節力2ディオプトリー以下で調節 痙攣、調節衰弱などによる自律神経 失調症がある異常。 | 30歳以下の者に対して薬物療法(ビタミ ンB1を中心とした治療)のほかに、6 か月程度治療のため、眼鏡を装用させる。 |
不等像性 眼精疲労 | 左右眼の眼底像の差による自律神経 失調症がある異常。 | 薬物療法(精神神経用剤及びビタミンB1と合わせて、光学的に眼底の不等像 を消すため、眼撥を装用させる。 |
変性近視 | 眼底に変性像があって、10ディオプトリー以上の近視である。 | 薬物療法(血管強化剤)と合わせて、網膜剥離、網膜出血等による失明防止のため、眼鏡を装用させる。 |
網膜色素変性症 | 視野狭窄・夜盲症と眼底に色素斑がある病気で進行すると失明する。 | 薬物療法(血管拡張剤)を行うが、光刺 激により症状が進行するので、その防止 のため、眼鏡を装用させる。 |
視神経炎 | 視神経乳頭又は球後視神経に炎症が あり、まぶしさを訴える病気で、進行すると失明する。 | 薬物療法(消炎剤.ビタミンB1と合 わせて、光刺激による症状の悪化を防止 するため、2か月程度眼鏡を装用させる。 |
網脈絡膜炎 | 眼底の網脈絡膜に炎症があって放置 すれば失明する。 | 薬物療法(消炎剤)に合わせて、光刺激 による症状の悪化を防止するため、1か 月程度眼鏡を装用させる。 |
角膜炎 | 角膜乾燥症、水泡性角膜炎、びまん 性表層角膜炎、角膜潰瘍などにより、放置すると角膜(黒目}が白く濁り、視力低下又は失明する。 | 薬物療法(抗生物質、副腎皮質ホルモン、 ビタミンB2に合わせて、角膜の表面 を保護し、治癒を促進するため、1か月 程度眼眼を装用させる。 |
角膜外傷 | 角膜破裂、角膜切割、角膜火(薬) 傷がある. | 手術、薬物療法(抗生物質)と合わせて、 角膜の創面を保護し治癒を促進するた め、1か月程度眼鏡を装用させる。 |
虹彩炎 | 虹彩(茶目)に極度の炎症があって 放置すると失明する。 | 薬物療法(副腎皮質ホルモン)に合わせ て、虹彩を安静にするためアトロピン等 の散瞳剤を使用すると共に、眼保護のた め、1か月程度眼鏡を装用させる。 |
半年前に白内障の手術を受けました。眼内レンズを入 れる手術だったので心配だったのですが、所要時間は10 分ほど。思ったよりもあっという間に終わりました。い まは視力も回復して快適に生活しております。ところで、 そろそろ確定申告の準備を始めようと思っているのです が、眼内レンズの費用は医療費控除の対象になりますか?
白内障の治療のために手術を受け、眼内レンズを入れた場合には、その費用は医療費控除の対象となります。白内障は視力が低下し、放置した場合には失明にいたることもある病気であり、手術で人工のレンズを入れることが、その治療のために直接必要であると認められるためです。この場合の眼内レンズの代金は、病院に支払ったものだけでなく、眼内レンズ業者に直接払ったものであっても、対象となります。また、眼内レンズに限らず、白内障の治療のためにメガネを購入した場合は、このメガネの購入代金についても医療費控除の対象となります。
ただし、どんなメガネであっても医療費控除の対象となるわけではありません。一般的な近視の矯正のためなどのメガネではなく、その病気の治療のために特別に必要であることが医師により証明されているものに限られます。確定申告により医療費控除を受けようとする際には、メガネの購入にかかる領収書だけでなく、これらの病名および治療を必要とする症状が明確に記載された処方箋の写しを添付することが必要となります。
ポイントは「医師の治療を受けるために直接必要なものであるかどうか」です。これはメガネに限ったことでなく、松葉づえや車イスなど、そのほかの医療用器具についてもいえます。これらが医師の治療を受けるために直接、必要であることが証明されれば、医療費控除の対象とすることができます。
私は今月、70歳になりました。孫の声が聞き取りにくくなったと感じていたところ、近所にあるメガネ販売店で補聴器が売られていたため、試しに購入してみました。補聴器の購入費用を医療費控除の対象に含めてもいいでしょうか?
最近、メガネ販売店のなかでは補聴器も一緒に売っているお店があります。値段も手ごろなものが多いためか結構、売れているようです。
ご質問のケースのように、ご自身の判断で購入された補聴器についての購入費用は、医療費控除の対象にはなりません。
では、耳鼻科で難聴と診断され、医師の勧めにより購入した補聴器の購入費用は、医療費控除の対象となるのでしょうか?
この場合についても、原則として対象にはなりません。これもメガネやコンタクトレンズと同様に、診察や治療の一環で購入するものではなく、日常生活で使用するものと考えられるからです。
ただ、次のような場合であれば、医療費控除の対象になると考えられます。
難聴のため医師の説明が聞き取れなかったり、聞き取りづらかったりするため、補聴器を購入したという場合です。
この場合は医師などによる診療などを受けるために直接、必要な費用と考えられます。あるいは、重度の難聴や生まれつきの耳の病気であって、治療の一環として補聴器をつける必要があると、医師が判断して購入した場合も、対象になると考えられます。
この場合についても、医師などによる診療などを受けるために必要な費用と考えられるためです。
補聴器を医療費控除の対象に含めて確定申告を行う場合には、その補聴器が医師などによる診療などを受けるために直接必要であるときちんと説明できなければなりませんので、ご留意ください。
交通事故で大腿骨頚部損傷しました。ずいぶん回復したのですが、自分の足で歩くのがまだ辛いので、車椅子を病院から借りています。通院するときに使っているのですが、レンタル料金は医療費控除の対象とみなされますか?
ご質問された車椅子は医療費控除の対象となります。車椅子が医師による治療をうけるための通院に必要なものだからです。車椅子だけでなく器具の購入費用などで医療費控除の対象となるものは、医師などによる診療などを受けるために直接必要なものであることです。
したがって、同じ車椅子の購入費用であっても、日常生活の最低限の用をたすための車椅子の購入費用については、医療費控除の対象にはなりません。
医師などによる診療などを受けるために直接必要なものではないからです。
身体に障害をもっている方で日常生活が不自由なために車椅子を購入された場合、その購入費用などは残念ながら医療費控除の対象にはなりません。あくまで、医師などによる診療に直接必要なものかどうかで判断します。
具体的な例として、不慮の事故などで足をケガしたとします。生活するために必要なものとして車椅子を購入する場合、その購入費用などは医療費控除の対象にはなりません。
しかし、足の治療のための通院に必要なものとして車椅子を購入する場合には、その購入費用は医療費控除の対象となります。
また、交通事故により足を骨折したために購入した松葉杖の購入費用などについても、車椅子の場合と同様に、医療費控除の対象になる、ならないの判断を行います。
松葉杖を医師の治療を受けるため、通院に必要なものとして購入した場合、その購入費用などは、医療費控除の対象となります。
しかし、交通事故による後遺症で足が不自由になったために松葉杖を購入した場合には、その購入費用などは、医療費控除の対象となりません。
4月に妻が出産したのですが、医療費控除の申告をし ようと思っています。健康保険組合から支給された出産 育児一時金の扱いがわかりません。出産にかかった費用 のうち、出産育児一時金で補てんされた分は、医療費控 除の対象から差し引かなければならないのですか。ちな みに妻は専業主婦です。