「抜本的な財政再建に着手しながら、全国初の市民活動団体への「1%支援制度」をはじめ、情報セキュリティマネジメントシステムなどのセキュリティ認証、コンビニ情報端末での公共施設の予約サービスの導入、駅前再開発事業への「特定建築者制度」の活用など先駆的な取り組みを進め、先進自治体として全国から注目を集める千葉県市川市。就任以来、こうした施策を次々と打ち出してきた千葉光行市長自身が職員、市民との取り組みを綴った一冊。 |
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市長に就任してすぐ、庁内や外部の施設などをまわりました。いままで市長が庁内を巡視するときは、助役(現在の副市長)や総務部長などもついてまわるのが慣例でした。そのため一大行事だったようですが、迎える各課では、いつ市長が来るのかを知っているので、事前に部屋を片づけ、仕事をやっているふりをすることもあったと言います。
これでは、なんにもなりません。
私はナマの現場が見たい、そう思ったのです。そのため、予定にも入れないで、時間があるとき、さっとまわるように変えたのでした。
まさに不意打ちです。職員がボケッとタバコを吸っているところを目撃したこともありました(当時はまだ禁煙タイムを設けていただけで、部屋で吸っていたのです)。誰も客がいない窓口もありました。
「ずいぶん暇そうだなあ」
そう声をかけると、「今日はたまたまです。今度、忙しいときに見に来てください」と言われたため、その言葉を信じて、次に巡回したことがあります。しかし、誰もいない状況は変わりませんでした。
ひとまわりして思ったのが、市民に接するカウンターが高すぎること、部長の席は衝立やロッカーで仕切ってあり、課員と隔絶していること、部長室の窓ガラスが曇りガラスで中が見えないこと、職員のネームプレートが小さく、しかもワイシャツ姿だとネームプレートもなく職員かどうか区別ができないこと、忙しい職員とそうでない職員の差が激しいことなどなど。改善しなければと感じたことは、たくさんありました。
このうち部長室の仕切りは、すぐに取らせました。かつて部長の少ないころは、部長室にはちゃんとした個室があって、応接セットもありました。しかも総務部長ともなると、秘書や専用車もあったとか。
そういうころに比べれば、いまは、かつての課長の数ほど部長がいるのですから、部長室などは作っていられません。
それでもロッカーやパーテーションで仕切り、一応は「部長室」としていました。パーテーションとはいえ、課との間に隔たりがあり、コミュニケーションの障害になっているのは確か。
狭い事務スペーースで仕事をしている職員のことを思えば、部長も課員と同じ部屋で並ぶべきだと思ったわけです。
仕切りを取り去ってみると、案外評判がよろしい。部長にも各課の仕事が見えるようになったためです。
各課の部屋のドアの窓ガラスも透明なものにしました。中の職員の様子が廊下からわかります。
これは市民には評判がよいが、職員からは歓迎されませんでした。落ち着かないからと窓のそばに観葉植物など置いたり、座席の向きを変えた部長もいました。
それも何ヶ月かのことで、そのうち当たり前になってしまいました。
その後、窓口のローカウンター化も進めました。こんな小さな積み重ねが、だんだんに職員の意識を変えていくのではないか、私はそう確信していました。