労働保険とは、労災保険と雇用保険を合わせたものです。
この労働保険は、労働者の雇用や生活を守るために作られた国の制度となります。
労働保険に加入すると、事業所ごとに番号が割り振られ、事業の種類によって定められた保険料率に基づいて保険料を納めることになります。
この労働保険は、全ての事業所において、加入する義務があるのでしょうか。
そこで、ここでは、労働保険への加入義務とはどのような場合なのかについて、くわしく見ていきたいと思います。
目次
労働保険とは、労災保険と雇用保険の2つを合わせた総称です。
事業所、または、事業主は、どのような場合に、労災保険と雇用保険に加入する義務があるのでしょうか。
従業員を1人でも雇っている事業所は、原則として労災保険に加入する必要があります。
この従業員は、正社員やパート・アルバイトでなど、雇用形態を問いません。
しかし、事業所が「暫定任意適用事業所」に該当する場合には、労災保険への加入は任意となります。
暫定任意適用事業とは、以下のような場合を意味します。
また、労災保険の加入対象者は従業員ですが、中小企業の事業主は、特別加入制度によって、労災保険に加入することが可能となっています。
事業所は、雇用保険の加入対象の労働者を1人でも雇用した場合には、雇用保険に加入する義務があります。
それでは、どのような労働者が、雇用保険の加入対象となるのでしょうか。
上記のような場合には、雇用保険への加入対象となります。
ただし、ごく一部の例外として、雇用保険の適用事業とならない場合があります。
それは、個人経営の農林水産業で、雇用している労働者が常時5人未満の場合のみ、雇用保険の適用は任意となります。
ただし、この場合においても、雇用されている労働者の1/2以上が雇用保険への加入を希望する場合には、労働者全員の加入が必要となります。
また、公務員、役員、役員と同居の家族の場合なども、雇用保険の対象外となります。
それでは、労働保険にはどのようにして加入するのでしょうか。
加入方法について、見ていきたいと思います。
労災保険の加入手続きは、管轄の労働基準監督署へ、以下の書類を提出します。
提出期限は、保険関係が設立した日の翌日から10日以内です。
労働保険概算保険料申告書のみ、提出期限が保険関係が設立した日の翌日から50日以内になっていますが、普通は他の書類と一緒に提出し、50日以内に納付を行います。
雇用保険の加入手続きは、管轄のハローワークへ、以下の書類を提出します。
提出期限は、従業員を雇用した日の翌日から10日以内となります。
労災保険は、雇用形態に関わらず、従業員を一人でも雇用した場合に加入する必要があります。
また、雇用保険は条件に該当する従業員を一人でも雇用した場合に加入する必要があります。
もし、これらの加入義務を怠った場合にはどうなるのでしょうか。
業務や通勤に関して、病気や怪我をした場合には、労災保険により、補償がされます。
しかし、もし、労災保険に未加入の場合であっても、労働者は、労災の補償を受けることができます。
このような場合には、会社の未加入が発覚することになりますが、そうすると、保険料を2年分遡って徴収されることになります。
故意に未加入の場合に、労働者が労働災害にあった場合は、労働者に給付される給付額の40%を会社が負担することになる場合があります。
さらに、行政から指導を受けているにもかかわらず、加入手続きを行わずに労働災害が発生した場合は、給付額の全額を会社が負担することになります。
なお、労災保険に関しては労働基準法のうち、労働者災害補償保険法が適応され、6ヶ月以下の懲役又は三十万円以下の罰金が科せられる可能性もあります。
さらに、数年間ハローワークで求人掲載ができないなどのペナルティを受ける場合もあります。
雇用保険に加入する必要のある労働者を雇用しているにも関わらず、雇用保険に加入していなかった場合には、その労働者は、失業手当などの受給ができなくなってしまいます。
ただし、このような不利益を避けるため、雇用保険料を2年間分さかのぼって支払うことで、加入したことが認められるという救済措置があります。
また、雇用保険の適用事業所であるにも関わらず、雇用保険に加入しない事業主は、違法となります。
雇用保険に加入させる義務のある労働者がいるにもかかわらず、加入を怠った場合には、雇用保険法第83条1号より、「6か月以下の懲役、または30万円以下の罰金」が科せられます。
労災保険や雇用保険は、任意ではなく、加入義務があるものとなります。
また、未加入の場合には、従業員に迷惑がかかるだけでなく、会社にも不利益をもたらすこととなります。
少しでも会社の負担を減らしたいという気持ちはわからなくはありませんが、違法となるので、やってはいけないことになります。
会社の負担と引き換えに、従業員や社会的な信頼を失うことになりかねないので、義務は果たすようにしましょう。