会社などで働いている場合には、給料から社会保険料が天引きされます。
そして、その社会保険料は、毎年、9月から変更されます。
この改訂は、4月、5月、6月分の給料について、算定基礎届というものを会社が提出することで、社会保険料が決定されます。
そして、社会保険料には、健康保険料と厚生年金保険料がありますが、その厚生年金保険料が、令和2年9月分から、高所得者に対して5000円超引き上げられることになっているのです。
コロナ禍において、国民の生活が厳しくなっている中で、高所得者の厚生年金保険料が5000円超高くなるということに、ネット上では、実質の増税であると不満が続出しているようです。
そこで、ここでは、厚生年金保険料が5000円超高くなる点について、標準報酬月額の上限改定がどのように行われたかを見ていきたいと思います。
目次
厚生年金保険法の規定に基づき、令和2年9月から厚生年金保険の標準報酬月額の上限が変更になる予定です。
厚生年金保険法における従前の標準報酬月額の上限等級(31級・62万円)の上に1等級が追加され、上限が引き上げられます。
改訂前の厚生年金保険料は以下となります。
月額等級 | 標準報酬月額 | 報酬月額 | 一般・坑内員・船員 (厚生年金基金加入員を除く) |
|
金額 | 被保険者負担分(折半額) | |||
18.300% | 9.150% | |||
第31級 | 620,000円 | 605,000円以上 | 113,460円 | 56,730円 |
これに対し、等級が一つ追加されることになります。
月額等級 | 標準報酬月額 | 報酬月額 | 一般・坑内員・船員 (厚生年金基金加入員を除く) |
|
金額 | 被保険者負担分(折半額) | |||
18.300% | 9.150% | |||
第31級 | 620,000円 | 605,000円以上 635,000円未満 |
113,460円 | 56,730円 |
第32級 | 650,000円 | 635,000円以上 | 118,950円 | 59,475円 |
このように、月額63万5千円以上の報酬を得ている場合には、会社負担分と合わせると、月5490円の厚生年金保険料が増額されます。
従業員の折半分としては、月2745円の負担が増えることになります。
9月から適用といっても、必ずしも、9月に支給する給与から変更されるわけではありません。
毎月の給与から控除している社会保険料が、「何月分の保険料を控除しているのか」によって、変更のタイミングを決まります。
これは、社会保険料が当月控除なのか、翌月控除なのかをもとに考える必要があります。
そもそも、 毎月、給料から控除されている社会保険料がいつの分なのかを、まず考えます。
9月に支給される給与から天引きされるのが9月分の社会保険料の場合は、9月支給分の給与から新しい保険料率が適用されます。
9月に支給される給与から天引きされるのが8月分の社会保険料の場合は、10月支給分の給与から新しい保険料率が適用されます。
当月分給与を当月末に支給している場合は、以下のようになります。
前月分の社会保険料を翌月分給与から控除している場合
⇒10月分の給与で10月末支給の給与から
当月分の社会保険料を当月分給与から控除している場合
⇒9月分の給与で9月末日支給の給与から
以上のようになります。
給与が月末締め、翌25日払いの場合について、以下の4パターンに分けて考えてみましょう。
前月分の社会保険料を翌月分給与から控除されている場合
⇒10月分11月25日支給の給与から
前月分の社会保険料を当月分給与から控除されている場合
⇒9月分10月25日支給の給与から
当月分の社会保険料を当月分給与から控除されている場合
⇒9月分10月25日支給の給与から
当月分の社会保険料を当月分給与から控除されている場合
⇒8月分9月25日支給の給与から
以上のようになりますので注意が必要です。
給与の締め日と支払日は、他のパターンもあるかもしれませんが、上記の2パターンを活用させて考えれば、いずれの場合にも対応できるのではないかと思います。
厚生年金保険料の上限が上げられるのは、実質の増税ではないかと、ネット上では言われています。
また、月額63万5千円の給料が高所得者であるから、税負担を上げても良いのかというツッコミも見られます。
コロナ禍によって、色々な業種の会社やすべての一般家庭において、厳しい状況が続いています。
そのような中で、国民に負担を強いることは、政府としての正しい方針なのでしょうか。
これをきっかけに、いろいろな場面において、国民に負担を強いることが行われなければ良いのですが…。