書籍 同族会社のための「新会社法」活用術(セミナー録・2006年4月発刊)

どこがどう変わり、何をどう活かせるのか?
「ポイントがまとまっていてわかりやすい」と評判の西村昌彦税理士が、会社法について行ったセミナーの口語録。
これまでの旧法を参照しながら、現状を振り返らせ、改めて会社法を確認するのにピッタリな一冊。急速な変化に対応するためにはぜひ!

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「株式譲渡制限会社」とは何か

まず、株式会社は、規模別に、大きく二つに分かれます。中小会社と大会社という形で
す。現行の商法等の法律では、株式会社というのは大会社、中会社、小会社という三つに
分かれる形になっておりますが、新しい会社法におきましては、大会社という区分は残り
ますが、あとはすべて一緒ということで中小会社です。ただし、中小会社というのは、オーソライズされた用語ではありません。私が勝手に説明しやすくするために、従来の中会
社と小会社がI緒になったということで中小会社と呼んでいるだけなので、正式な呼称で
はありません。

 大会社というのは、従来のとおりでございまして、2ページの資料の下のほう、②のと
ころに記載されているように、資本金が5億円以上または負債総額が200億円以上の株
式会社です。これについては、従来の規定と変わりません。それ以外の会社は中小会社と
いうことになります。

 先ほど申しましたように、現行の法律では、小会社というのがありまして、資本金が1
億円以下で、なおかつ負債総額が200億円未満の会社というのは小会社という位置づけ
がされているのですけれども、その小会社は新会社法のもとではなくなります。とりあえ
ず大会社という区分だけは残ります。どこかに記憶しておいていただきたいと思います。
 

それからもう一つ、非常に大切な区分かありまして、その横を見ていただきますと、大
会社もそうですし、中小会社もそうなのですが、株式譲渡制限会社と公開会社という二つ
の区分があります。あらかじめお断りしておきますが、株式譲渡制限会社というのは、こ
れもオーソライズされた呼称ではないのです。正式の呼び方ではありません。こういうふ
うに呼べば非常にわかりやすいかなと思ったので、このように記載しました。法律で規定
してあるのは、下のほうの公開会社という呼称です。これが規定してあるだけです。ここ
では、非公開会社のことを株式譲渡制限会社と呼びます。

 そもそも、公開会社といいますと、我々としましては、別のイメージが非常に強いです
よね。証取法上の公開会社、いわゆる株式を上場している、株式を公開している会社を、
通常、イメージしますから、非常に紛らわしいです。だから、なるべく公開会社という言
葉を使いたくないなという意図がありまして、株式譲渡制限会社という言葉を入れたわけ
です。つまり、株式譲渡制限会社とそれ以外の会社と言うほうが、我々にとってなじみや
すいわけです。

とは言うものの、株式譲渡制限会社というのは、法律上の正式の呼称では
ないのです。
 この株式譲渡制限会社とは一体何ぞや、ということですけれども、pointの31になりま
す。ページでいきますと資料編31ページです。ちょっとそちらをお開きください。
 株式の譲渡制限規定というのを皆様ご存じだと思うのですが、株式が非公開の同族会社の場合、会社の定款と、それから会社の登記簿謄本をI度ごらんになっていただきたいと
思います。

 会社の株式というのは、これは原則として譲渡自由なのですけれども、一定の制限を加
えることができるということで、現行の商法には例外規定が設けられております。
 どのような例外規定かというと、株式を譲渡する場合にはその会社の取締役会の承認が
必要ですよと定款で規定できる、とされているのです。だから、会社の取締役会の承認が
なく、勝手に株主間で移動した場合には、株主間、当事者間では有効かもしれませんけれ
ども、会社に対しては対抗できないことになります。

だから、会社のほうでは、あくまで
も旧株主を株主として取り扱っても何ら問題はない、ということになります。そのような
定款の規定がある会社のことを株式譲渡制限会社というわけで、そんな会社の方が多数い
らっしゃると思います。

 ここで一言つけ加えておきますけれども、株式譲渡制限規定というのは登記しておかな
いと意味がありません。ひとつ、よく確認しておいてください。いくら定款に規定があっ
たとしても、登記して初めて第三者に対抗できるわけですから、定款の規定に載っている
かということを確認されると同時に、必ず、皆様方の会社の商業登記簿謄本にその旨の登
記がなされているかどうかということも、あわせて確認をしていただければよろしいかと
思います。

 この株式譲渡制限規定というのは、新会社法におきましても、ほぽ似たような形で引き
継がれます。後でお話ししますけれども、新しい新会社法におきましては、株式譲渡制限
会社は取締役会を設置しないことができます。
 取締役会のない株式会社ですから、取締役会の承認はとれなくなるので、その場合には、
株主総会の承認を受けることになります。ですから、新しい会社法では会社の承認を要す
という言い回しになるのです。

 このようなわけで、会社の承認が必要ですよというような包括的な規定になっておりま
すけれども、中身は現行の株式譲渡制限規定とほとんど変わりません。この株式譲渡制限
規定というのは、今後、新会社法におきまして、非常に重要な規定になってきます。これ
については、後でじっくりお話しいたします。

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