書籍 同族会社のための「新会社法」活用術(セミナー録・2006年4月発刊)

どこがどう変わり、何をどう活かせるのか?
「ポイントがまとまっていてわかりやすい」と評判の西村昌彦税理士が、会社法について行ったセミナーの口語録。
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21「売主追加の議案変更請求」を防止できる

 それから、買取りの期限ですが、合意による取得の場合には、相続人が相続した株式に ついて議決権を行使した段階でアウトということになります。議決権を行使したというこ
とは、私は株主として残りますよと意思表示をしたことになるわけですから、それでアウ トということになります。だから、議決権が行使されるまでに買い取ってくださいという
ことです。  通常の場合、議決権行使の場というのは定時株主総会ですから、次の定時株主総会まで の間に決着をつけてしまうという話になってきます。これに対して売渡し請求のほうは、
承継から1年以内に請求をしないと無効になります。いわゆる相続発生から1年以内に請 求をしてくださいということです。  それから、非常に大切なことは、売主追加の議案変更請求という規定かありまして、こ
れも非上場会社が自己株式を取得するときの一つの大きなネックになっています。非上場 会社が自己株式を取得する場合には、誰々さんから取得したいというケースがほとんどだと思います。
しかし、このように特定の人を指定してしまいますと、指定されなかった人は不公平に思 うわけですね。私も売りたかったのに、と。そこで、指定から外れた人については、私も
売主に加えてください、と請求する権利が与えられています。それがこの売主追加の議案 変更請求権です。  これがあるがために、ある人から買い取りたいと思っても、他の人も手を挙げてしまっ
た、買い取りの枠は決まっているわけですから、本来全部買い取るはずの人から半分しか 買い取れなかった、3分の1しか買い取れなかった、という話になる。こういう非常にや
りにくい状況になるわけです。  ところが、この二つの方法で相続人から自己株式を取得する場合には、どちらも、合意 による取得の場合も、売渡し請求の場合も、売主追加の議案変更請求はできないことにな
っています。特定の相続人だけから、自己株式を取得することかできるということです。  もう一つ、売主追加の議案変更請求の話ですけれども、資料の44ページに戻っていただ
いて、表の下のところに、(注3)というのかあります。この(注3)の②を見ていただ きたいと思いますか、売主追加の議案変更請求も、定款で排除することができるというこ
とです。あらかじめ定款に規定をしておけば、売主追加の議案変更請求を排除することが できる。ただし、定款を変更する場合には、株主全員の同意が必要になります。株主全員
の同意かとれるということであれば、あらかじめこういう規定を設けておくと自己株式が やりやすくなります。これも、定款変更の検討項目の1つとして、挙げておかれるとよろ
しいかと思います。  定款変更の検討課題は、ここだけでも、二つありましたね。株式の相続人に対する売渡 し請求の規定と、もう一つは、売主追加の議案変更請求ができないという規定。少なくと
も自己株式の取得については、売主追加の議案変更請求かできないという規定を定款に設 けておいたほうか、何かのときに助かります。この二つの検討項目を記憶しておいていた
だければと思います。

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