新型コロナウイルス対策!非上場会社が株主総会を開催する場合の対応方法

2020年4月現在、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行に伴う緊急事態宣言が発出され外出自粛が続いています。3月決算の会社は、例年であれば6月下旬に株主総会を開催していましたが、今年はコロナウイルスへの感染を避けるため人の集まる株主総会の開催に懸念が示されています。
設立間もない会社や非上場会社であってもこの時期に株主総会を開催する必要のある会社が多いと思われます。そこで、コロナウイルスへの感染を避けるためこの時期に株主が一同に会することなく株主総会を開催する方法について解説します。

1.株主総会の開催に関するルール

株主総会の開催を延期することはできるのかな?
さとし君
上場会社だと定款で基準日が定められている関係で決算期末から3か月以内に株主総会を開催するけれど、非上場会社だと基準日の定めがないことも多いから延期のハードルはそれほど高くないわね。
アンナ先輩
天災などで開催できない事情がある場合には延期できるとの見解を法務省が公表しています。
松浦弁護士
株主総会の開催場所は現在では制約がないから、天災等があった場合には影響の少ない別の場所で開催することもできるよ。
マリオ教授

1-1.株主総会の開催時期

株主総会のうち定時株主総会は、会社の事業年度終了後の一定の時期に招集されるものです。定時株主総会の主な決議事項は計算書類の承認、事業報告の内容報告、剰余金の配当決定です。会社によっては、定時株主総会において取締役の選任や重任などが決議されることもあります。定時株主総会の開催時期について会社の定款で定めがある場合、通常であれば定款の定めた時期に開催することになります。
もっとも、法務省は「天災その他の事由によりその時期に定時株主総会を開催することができない状況が生じたときまで、その時期に定時株主総会を開催することを要求する趣旨ではない」との見解を示しています。このため、本来定時株主総会を開催すべき時点でもコロナウイルスに関連した外出自粛が続いているような状況があれば、その状況がやんだ時期まで株主総会を延期することも可能ではあります。
定時株主総会の延期に関する法務省の見解については、以下を参照してください。
定時株主総会の開催について

なお、本来の定時株主総会の開催時期が取締役などの任期満了日となっている会社については株主総会を延期した場合の取締役等の任期の扱いが一応問題となります。この点について法務省は、「改選期にある役員(任期の末日が定時株主総会の終結の時までとされている取締役,会計参与及び監査役)及び会計監査人の任期については、定時株主総会を開催することができない状況が解消された後合理的な期間内に開催された定時株主総会の終結の時までとなる」との見解を示しており、株主総会を延期したとしても問題は生じないよう手当てされています。
取締役等の任期の延期に関する詳細は、法務省の「商業・法人登記実務に関するQ&A」を参照してください。
「商業・法人登記実務に関するQ&A」

ただ、これまで3月決算の会社の多くが定時株主総会を6月下旬に開催してきたのは単に定款に開催時期の定めがあるからというだけではなく、株主名簿の基準日が最大の理由でした。具体的には、会社法では定時株主総会の議決権行使や剰余金の配当に関して基準日を定めたうえで、基準日時点の株主を議決権行使や配当を受け取ることのできる者と扱えば足りるとしています。特に上場企業などでは株主の変動が頻繁であるため、一定の時点を区切って株主として扱うべき者を確定することにより事務管理上の手間を軽減する必要があるのです。このため、上場企業では基準日の定めが設けられています。
そして、定款にこのような基準日の定めがある場合には、基準日から3か月以内に対象となる権利を行使させる必要があることが会社法上定められています。このため、3月決算の会社はその3か月後である6月末までに定時株主総会を開催する慣例があったのです。したがって、基準日の定めがある会社において定時株主総会の開催時期を延期する場合には、新たに基準日を定めたうえで基準日の2週間前までに当該基準日及び基準日株主が行使することができる権利の内容を公告する必要があります。
とはいえ、設立間もない会社の場合には、株主の変動が大きくないことから基準日を設けていないことが多いと思われます。この場合には、基準日の問題は生じないのでコロナウイルス感染症による外出自粛が終わるまで定時株主総会の開催を延期することが比較的容易にできるといえます。
株主名簿の基準日に関しては、下記記事でも詳細に解説しています。

1-2.株主総会の開催場所

2006年5月に会社法が施行されるまでは、株主総会の開催場所は定款に特別に定められた場合をのぞいて本店所在地またはそれに隣接する地とする必要がありましたが、会社法ではこのような開催場所に関する制約はありません。
このため、緊急事態宣言が発出されている地域やコロナウイルスの感染が蔓延している地域を避けて株主総会を開催することも可能です。ただし、外国や交通の手段が確保できない山間部などといった株主が出席することが困難な場所であえて開催された場合には、株主総会決議の取消事由となることがあるため注意が必要です。

2.株主総会におけるコロナウイルス感染対策

株主総会を延期するのではなく、自宅から株主総会に参加する方法はないの?
さとし君
インターネット環境が用意できるのであれば、経済産業省が推進している「ハイブリッド型バーチャル株主総会」はどうかしら。インターネットで株主総会の会場にアクセスして株主総会への出席や参加ができる仕組みよ。
アンナ先輩
株主が少ない会社で議題や議案に反対が想定されない場合には、そもそも株主総会を開催せず書面だけで済ます方法もあります。
松浦弁護士
どの方法が良いかは会社の事情によって変わるから、自分の会社に一番合った方法を選択することが重要だね。
マリオ教授

2-1.ハイブリッド型バーチャル株主総会

経済産業省は従来から「ハイブリッド型バーチャル株主総会」の実施について検討を重ねてきました。ハイブリッド型バーチャル株主総会とは、取締役や株主など株主総会の参加者の一部が会議室などで従来のように集まって株主総会を開催する一方で、開催場所に来ない株主がインターネット等で遠隔地から株主総会に出席または参加できるというものです。
ハイブリッド型と称されていることからわかるように、従来型の株主総会が同時に開催されていることが前提となっています。また、ハイブリッド型バーチャル株主総会の一種である「ハイブリッド出席型バーチャル株主総会」を採用した場合、インターネット等を通じて遠隔で参加する株主が通常の株主総会に出席しているのと同様にオンライン上で質問をしたり議決権を行使したりすることができるようになります。
株主数がそれほど多くない非上場会社においては、取締役が株主を兼ねていることが多いため、取締役だけ会社の会議室などで株主総会を物理的に開催し、ベンチャーキャピタル等といった取締役以外の株主にはインターネットを通じて遠隔地からバーチャル株主総会に出席してもらう方法もとることができます。
ハイブリッド型バーチャル株主総会については、経済産業省のWEBサイトに詳細が掲載されています。
「ハイブリッド型バーチャル株主総会の実施ガイド」を策定しました

2-2.株主総会の書面決議

株主数の多い上場企業では採用しにくいのですが、株主数が限られる非上場企業であれば可能となる方法として株主総会を書面決議で済ます方法があります。これを利用できれば、そもそも物理的に会議室などで株主総会を開催すること自体が不要となります。ただし、株主総会を書面決議で済ますためには以下の条件を満たす必要があります。

①取締役または株主が株主総会の目的である事項について提案すること
②①の提案につき株主全員が書面やインターネットを通じて同意の意思表示をすること

少なくとも会社の取締役の中で株主総会の決議事項について同意が得られている状況であれば①は満たすことができます。また、ベンチャーキャピタル等の第三者が株主となっている場合でもその第三者から提案への同意が事前に得られている場合には、②の要件も満たすことになります。
①②の要件が満たされた場合には、株主全員の同意の意思表示が会社に到達した時点で株主総会決議が成立したとみなされることになります。

3.非上場会社における株主総会の開催方法

以上をまとめると、非上場会社が株主総会の開催にあたってコロナウイルス感染症対策をする場合には、次のように開催方法を選択することになります。

・取締役が株主を兼ねているとか株主数が少ない非上場会社においては、まず株主総会の書面決議を検討することが現実的である

・決議事項に関して株主間で賛否が分かれている場合には書面決議を採用できないため、株主総会の開催時期の延期やハイブリッド型バーチャル株主総会によって株主総会を開催する

・コロナウイルス感染症による外出自粛が長引くようであれば、開催時期の延期にも限界があるためハイブリッド型バーチャル株主総会として開催することが望ましい

4. 会社設立の際には専門家に相談を

今回は、参加者が一同に会することなく株主総会を開催するための方法を解説しました。株主数が少ない非上場会社では取り得る手段が多くあります。これらは、非常事態以外でも利用できますので、無駄な手間を掛けたくない設立直後の会社では積極的に導入を検討すると良いでしょう。
会社を設立した後も株主総会の開催をはじめとして法律で定められたルールに従って会社を運営することが求められます。株主総会を開催せず必要な決議を長期間にわたって行っていないような場合には様々な問題が発生します。株式公開を目指している場合には上場審査における障害となることもあります。そこで、会社を設立したら早い段階で税理士や弁護士、司法書士などの専門家に相談して管理部門の整備をしておくことをおすすめします。

著者情報
松浦絢子 弁護士
松浦綜合法律事務所代表。京都大学法学部、一橋大学法科大学院出身。東京弁護士会所属(登録番号49705)。
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