書籍 「日本一」がいっぱい~地方自治体が変わる~

「抜本的な財政再建に着手しながら、全国初の市民活動団体への「1%支援制度」をはじめ、情報セキュリティマネジメントシステムなどのセキュリティ認証、コンビニ情報端末での公共施設の予約サービスの導入、駅前再開発事業への「特定建築者制度」の活用など先駆的な取り組みを進め、先進自治体として全国から注目を集める千葉県市川市。就任以来、こうした施策を次々と打ち出してきた千葉光行市長自身が職員、市民との取り組みを綴った一冊。

(お買い求めはコチラから)

1-02土日返上、会議は朝八時から
~「何かが変わるぞ」と期待と不安の職員

市長の任期の始まりは、前市長の任期のあとです。
 市長選挙(平成九年一一月三〇日)から、私が初登庁した十二月二五日までは一ヶ月近くありました。その間、私は当選していたものの正式には市長ではなく、決裁もできません。しかし、任期の開始を待ってはいられません。
 そこで市役所外の場所を借りて、各部の部長から非公式のヒヤリングをしました。市の予算は普通、一〇月ごろまでに各部から要求が上がってきます。国でいうと省庁からの概算要求です。それを財政部門で査定して、財政部原案(財務省原案で)を作るのが十二月、そして市長査定を経て市の予算案となるのが一月中旬。しかし、この年は前任の市長が新年度の予算を作るわけにはいかないため、私の考えを入れる余地があったのです。
十二月二五日、いよいよ初登庁。出迎えた職員から花束を受け取り、早速、市長の椅子に座りました。第二二代市川市長の任期の始まりです。議場に集まった幹部職員に対して私の抱負を述べたのち、早速、仕事にかかりました。
 年の暮れですから、年内はのんびりして、新年から始めたらどうですか、と助言してくれた人もいました。しかし、一月には、選挙のため開催が延ばされていた十二月市議会が控えています。しかも、その議会が終わると、すぐに定例の二月議会、いわゆる予算議会が始まります。
私は年内の残された時間を目いっぱい使うことにしました。
 土日返上で各部の部長、課長から各部の懸案事項や新年度予算計上の説明を聞くことにしたのです。平日、休日問わず朝八時から。通常の仕事に影響しないと考えたのでした。
 いままでどちらかと言えば、ぬるま湯に浸かっていた職員にはさぞきつかったでしょう。しかし、「何かが変わるぞ、自分たちもぼんやりしていられない……」。職員の心の中には、期待と不安が交錯したのではないかと思います。
 ヒヤリングでも、結構厳しい質問をしました。市民から見ると当然のようなことができていない。何かを聞くと前例がない、他市でやっていない、人が足りない、金がない……。
 要するにやらない理由を並べるのが上手いのです。先ほど述べたように職員を採用したから委託化は無理といった事業もありました。こうしてみると、私の考えを反映できる余地はいくらもなかったのです。
 これでは財政をいくら建て直したって、日本一の都市になんかなりっこない。職員の意識を変えなければいけない。これが一連のヒヤリングから受けた結論でした。

会社サポートセンター