【解説】
1、特例の内容
主たる債務者Aさんの保証人となった私が、その保証債務を履行するため、資産を譲渡した場合において、その債務を履行することにより取得した求償権の行使が不能な場合には、その譲渡のうち一定金額について、譲渡がなかったものとみなされます。
2、譲渡がなかったものとみなされる金額
保証債務を履行するために資産を譲渡し、その求償権の全部または一部を行使することができなくなったときは、次のいずれかの金額のうち最も小さい金額の譲渡がなかったものとみなされます。
<1>求償権の行使不能額
<2>求償権の行使ができないこととなったときの直前における総所得金額、上場株式等に係る配当所得の金額、土地等に係る事業所得等の金額、分離長期譲渡所得の金額、分離短期譲渡所得の金額、株式等に係る譲渡所得等の金額、先物取引に係る雑所得等の金額、退職所得金額及び山林所得金額の合計額
<3>求償権の行使不能額に係る上記②に掲げる金額の計算の基礎とされる譲渡所得の金額
3、計算例
左記事例について、下記の前提で計算をしてみましょう。
譲渡収入 1億5 ,000万円
取得費 750万円(みなし取得費 譲渡収入×5 %)
譲渡経費 仲介手数料 50万円
債務を弁済した金額 4 ,000万円
求償権の行使不能額 4 ,000万円
保証債務を履行した人のその年の総所得金額等の合計 5 ,000万円
長期譲渡と仮定
収入金額:1億5,000万円
譲渡とみなされない金額:4,000万円
取得費:750万円
譲渡経費:50万円
譲渡所得:1億200万円
税率:20%
譲渡所得税・住民税:1億200万円×20%=2,040万円
上記のように、この例を適用することによって、譲渡所得の金額から「譲渡とみなされない金額」4,000万円をマイナスすることができます。
4、借り換えた場合
保証債務の履行の特例は、当初主たる債務者に弁済能力がないことを知りつつ連帯保証をした場合には適用がされません。したがって借り換えた場合に、その弁済能力の判定時期が、当初なのか、借り換えた時点なのか判断に迷うところとなります。
この問題に対し、さいたま地裁平成16年4月14日判決は、債権者が異なり、新たに抵当権を設定した場合であってもこの特例を認めています。
つまり、当初の契約時において、求償権の行使が可能であると認識できる場合にはこの特例の適用があることとされています。
(注)平成25年1月1日から平成49年12月31日までの間は、復興財源確保法により、所得税に加えて、復興特別所得税がかかります。
本問の場合は、税率が
所得税15%、復興特別所得税 0.315%、住民税 5% の合計20.315%
となります。