【解説】
1、概要
収用等の場合の課税の特例は、対価補償金に限って適用があります。ただし、建物移転のために受取る補償金であったとしても、その建物を取壊した場合には、対価補償金として取扱い、5 ,000万円特別控除の対象となります。
また、移転補償金については、交付の目的に従って支出した場合には、非課税となり、交付の目的に従って支出しなかった場合、または支出後に残高が生じた場合には、一時所得となります。
2、収入金額
今回の事例では、土地の対価補償金9 ,000万円が該当することになります。
そのほか建物の移転補償金は、名目上は移転補償金であったとしても、取壊しているため、上記1の解説により対価補償金として取り扱うことができます。
したがって今回の事例では、9 ,000万円+2 ,000万円が対価補償金として、譲渡所得の計算上は、収入金額となります。
3、その他の移転補償金
今回の事例では、その他の移転補償金については、交付目的通りに支出していますが、支出後に残額があります。この場合には、その残額が一時所得として課税されることとなり、具体的には下記のように計算します。
<1>収入金額 500万円+200万円+100万円=800万円
<2>交付目的通りに使用した分 400万円+150万円+70万円=620万円
<3>一時所得の金額
(800万円−620万円−特別控除50万円)×1 /2 =65万円
一時所得は、総合課税の対象となります。したがって、サラリーマンの方の場合には、確定申告により給与等と合算して所得税・住民税を計算することとなります(一定の場合には申告不要)。
なお、上記の一時所得の金額は納税者の選択により、買い替えた資産の取得価額に計上した場合などには、次のように計算することもできます。
(800万円−特別控除50万円)×1 /2 =375万円
(注)平成25年1月1日から平成49年12月31日までの間は、復興財源確保法により、所得税に加えて、復興特別所得税がかかります。
本問の場合は、税率が
所得税15%、復興特別所得税 0 .315%、住民税 5% の合計20 .315%
となります。