【解説】
1、不動産を共有で相続する場合
遺産分割において、相続財産が不動産のみの場合は、その不動産を共有持分で相続することが考えられます。ただし、兄弟で不動産を共有した場合、売却等の処分に関しても共有者の同意が必要になり、また、将来財産が細分化されていく可能性があります。
仮に、あなたが妹とご自宅の不動産を共有で相続した場合、ご自宅の建替えや買換えをされるときは、全て妹の同意が必要となります。
2、小規模宅地等の特例
相続税の計算上、小規模宅地等の特例の適用に関しては、その不動産の取得者ごとに判定をするため、要件を満たさない相続人がその不動産を相続しても適用が受けられないことが考えられます。また、同居している親族がご自宅を相続した場合、一定の要件を満たせば、240㎡まで80 %の
減額を受けることができます。
仮に、あなたが妹とご自宅の不動産を1 /2ずつ共有で相続し、一定の要件を満たした場合、あなたが相続する持分のみが80 %減額の対象となり、妹が相続する持分については特例の適用がありません。
具体的には以下の計算となります。
<1> 全てあなたが相続した場合の相続税評価額の計算
8 ,000万円×(1−80 %)=1 ,600万円
<2> あなたと妹が1 /2ずつ共有で相続した場合の相続税評価額の計算
あなたの持分:8 ,000万円×1 /2×(1−80 %)=800万円
妹の持分:8 ,000万円×1 /2 =4 ,000万円
合計:4 ,800万円
3、代償分割
あなたがご自宅の不動産の全てを相続することで、将来の処分もご自身のみの判断で実行することができ、小規模宅地等の特例の適用を受けることが可能です。
妹にはその見返りとして、保険金やご自身の現預金などから代償金を支払うことで円滑な遺産分割を進めることが可能です。
留意点は以下の通りです。
<1> 代償分割を予定している場合には、生命保険金などで代償金に見合う財産を生前に準備しておきます。
<2>相続により取得した不動産を売却してその代金を分割した場合、換価分割と考えられ、売却に関する所得税等の負担が発生する可能性があります。
<3>代償財産として交付する財産が、その交付する相続人の所有不動産の場合には、その交付したときにおける時価でその不動産を売却したことになり、所得税等が課税されます。