現金納付ができない場合は、相続税申告時に延納または物納の 手続きをとりましょう!

(1 )原則は金銭一括納付
相続税の納税は、相続開始の日の翌日から 10ヶ月以内に金銭で一括納 付しなければなりません。しかし、現実には相続人が相続税に見合った 現金を有している、もしくは相続財産に相続税を払えるだけの現金があ るとは限りません。
そこで、現金納付が困難な相続人のために、納税方法の例外として延 納と物納の制度があります。

(2)延納は可処分所得で納付=今負担は重い
延納は、担保提供を条件として相続税の元金均等年払いにより行うこ とができます。相続財産に占める不動産の割合によって最長20年の年賦 払いが可能です。しかし、利子税も払わなければなりません。

(3)物納
相続税を納めることが延納によっても困難な場合は、一定の条件のも とに相続財産を現物で国に納付する物納により相続税を納付することが できます。この物納財産は以下のように順位が決まっています。

第一順位:国債、地方債、不動産、船舶
第二順位:社債、株式、証券投資信託および貸付信託の受益証券
第三順位:動産

(4)物納の要件
物納により納付する場合は、以下のような要件を満たす必要があります。

1.金銭納付が困難
下記の式に当てはまる額を記入して、その額が相続税額よりも小さ い場合は、金銭納付が困難と認められます。

納税義務者が納期限に保有する現預金等
→ 納税義務者とその親族の生活費×3ヶ月
→ 事業継続に当面必要な運転資金
『算定金額』|<『相続税額』なら金銭納付困難

2.物納許可基準
平成18年度の税制改正により、物納不適格として限定されている 財産以外については、原則として物納が認められるようになりました。

管理処分不適格財産・・・・管理文は処分するのに不適格な財産
物納劣後財産・・・・・・・・他に物納適格財産がない場合に限り物納を認める財産

3.物納申請書等を提出し、税務署長の許可を得ること
物納しようとする相続税の納付期限までに、一定の必要事項を記載 した物納申請書と物納手続関係書類を提出しなければなりません。

しかし、遺産分割が決まっていないものや分割に争いのあるものは物 納できません。さらに土地を物納する場合、基本的に家が建てられる土 地でなければなりません。また土地の物納では隣地の方から境界確認の 際に印を頂くこととなります。

(5)物納の手続
まず、納期限又は納付すべき日(物納申請期限)までに物納申請書に

「物納手続関係書類」を添付して提出する必要があります。ただし、物 納申請期限までに物納手続関係書類を提出することができない場合は、「物 納手続関係書類提出期限延長届出書」を提出することにより、1回につき3ヶ月を限度として、最長で l 年まで物納手続関係書類の提出期限を 延長することができます。また、提出した物納手続関係書類の提出後に 書類に不備があったり、一部未提出があった場合にはその訂正や提出を 書面により求められます。この期限も「物納手続関係書類補完期限延長届出書」を提出することにより、一回につき3ヶ月を限度として、上記の最長期間まで延長することができます。

(6)物納の許可等までの審査期間
物納申請書が提出された場合には、税務署では、その物納申請に係る 要件の調査結果に基づいて、物納申請期限から3ヶ月以内に許可又は却 下を行います。
なお、申請財産の状況によっては、許可又は却下までの期間を最長で9 ヶ月まで延長する場合があります。

(7)物納を行う際のポイン卜
物納を行う際のポイントは、下記のとおりです。

・物納条件が整っている場合どの財産を物納するか選ぶ権限は納税者に あること 。
・現金納付が困難かどうかの判断は各相続人ごとに行われること。
・借入金と預金が両方ある場合には借入返済のための預金であるとして 預金は無いものとして取り扱われること。

(8)貸宅地の物納
貸宅地は一般的に物納することができないと思われがちですが、管理 処分不適格財産にも含まれておりませんので、物納することは可能です。 その主な要件はⅠ契約書があること、Ⅱ底地を物納することに対して借地人の同意を得られること、Ⅲ地代として固定資産税等相当額の 2~3倍を得ていることの3つです。

(9)延納伶物納
物納の申請は、取り下げて延納に切り替えることができます。また、延納中のものが延納による納付が困難となった場合には、申告期限から10年以内に限り、延納から物納に切り替えることが出来ます(平成18年4月1日以降開始相続分に限る)。この場合、物納財産の収納価額は、その物納にかかる申請時の価額で収納されます。

(10)改正前後の物納手続きの流れ
Ⅰ 改正前(平成 18 年 3 月 31 日以前の相続)の流れ
相続開始→納税方法の検討→物納申請書の提出・相続税の申告→税務署等の立会い→保管事項の通知→許可→物納財産の収納
相続開始~物納申請書の提出・相続税の申告まで:10ヶ月以内
1.財務評価 2.相続税の算出 3.遺産分割 4.物納財産の選定

物納申請書の提出・相続税の申告~物納財産の収納:6ヶ月~3年程度
*物納財産は納税者側からは変更できません。
*延納から物納に変更できません。
*物納から延納には変更が可能です。

Ⅱ 改正後(平成 18 年 4 月 1 日以後の相続)の流れ
相続開始→納税方法の検討→物納申請書の提出・相続税の申告→書類の精査(補正通知)→現地調査(却下)→保管事項の通知→許可か却下→許可の場合物納財産の収納・却下の場合物納最申請(1回限り)/延納申請

*納税方法の検討:今後は生前の事前準備が必要!
*物納申請書の提出・相続税の申告:必要書類の提出!

相続開始~物納申請書の提出・相続税の申告まで:10ヶ月以内
1.財務評価 2.相続税の算出 3.遺産分割 4.物納財産の選定

物納申請書の提出・相続税の申告~物納財産の収納:原則3ヶ月以内
*物納許可基準が明確になりました。
*延納から物納に変更が可能です。(申告期限から10年以内)

新しい物納制度は、短期間に物納の適否を判断しなければなりません。
→したがって、今後は生前の準備が絶対的に必要となります。

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