いったいいくらの資金が必要か~「時価貸信対照表」を作成する
社長に万が一の事態があったときなど、会社の継続が困難になることもあります。 その場合には、会社の財産を整理し、借入金などの債務を返済すると同時に、会社を清 算するまでの運転資金や、社長の遺族保障のための死亡退職金の手当てもしなければなり ません。 そんなときのために生命保険が必要になりますが、どれくらいの資金が必要なのか、見 積もるのはむずかしいところです。ここでは、資金の基本的な考え方を確認しましょう。 まず、会社の財産、債務の内容を検討する必要があります。帳簿上では財産として決算 書に計上されていても簿価では売却できないもの(仮払金や繰延資産など)もあります。また、簿価以上で売却できる含み資産のある財産(優良な土地や上場株式などで値上がり しているもの)もあるので、換価性(売れる可能性)を考慮した時価貸借対照表を作成し てみる必要があります。 それにより、債務返済に必要な不足資金を算定し、社長の死亡退職金に会社清算までの 運転資金を加えた額の保障が必要になります。ただし、死亡保険金には法人税等がかかる ので、税負担も加算して保障額を算定します。 つまり、必要保障額は、
必要保障額=債務返済必要額+清算中の運転資金+死亡退職金+法人税等
となります。
時価貸信対照表作成のポイント
たとえば、商品在庫は簿価で売却できるとは限りません。長期貸付金、仮払金も回収不 能なときが多いようです。前払費用(家賃の前払いなどて繰延資産等(ノウハウの権利 金など)の科目は会計上だけの資産であって財産性はありません。 含み資産のある土地などは簿価以上で売却できますが、売却益に対する法人税等の支払いを控除して計算しなければなりません。 これらの財産の換金性、負債の要支払額を見積もって時価貸借対照表を作成します。
加入する保険選択のポイント
繰り返しになりますが、この保険の加入目的は、あくまで社長に万が一のことがあった ときの準備です。ですから、割安な保険料(終身保険と比較して)の定期保険が適してい ます。 具体的な保障期間ですが、社長の引退予定年齢までで、保険期間を通した保障金額は、 将来の必要保障額の見込みが予想しづらいため、基本的には一定のものになります。 ただし、必要保障額が年々増加する見込みの会社の場合には、毎年保障金額が増加して いく逓増定期保険を応用で使う方法が考えられます。 また、不動産購入のための借入金がある場合など、毎月約定で返済していく借入金部分 には、毎年保障額が減少していく逓減定期保険(くわしくはP花参照)を応用して使う方 法も考えられます。 保険に加入するに際し、生命保険が万が一のときの命綱になるという可能性も考慮して、義理や人情ですすめられるまま加入したり、また、社長や会社の状況の十分な理解もなく、 提案書を持ってくるような保険セールスマンは、絶対に避けることも大切です。