税制改正による節税が規制されることも
生命保険契約を活用した節税対策は、税制改正により規制されることがあります。まず平成20年2月28日付逓増定期保険の通達改正があげられます。
逓増定期保険とは、死亡保障額が一定率で毎年増えていく定期保険で、インフレや必要保障額の増加に対応できる商品です。
あくまでも定期保険なので、満期保険金はありません。保険料のしくみは、年齢が上がると死亡リスクが高くなるので、本来は毎年保険料が上がります。
逓増定期保険のように毎年保障額が増える場合も、当然、保障が増える分だけ毎年保険料が上がるわけですが、実際は保険期間中の保険料を同額にするように平準化して保険料を計算・徴収しています。
つまり、保険期間の前半に支払う保険料には、保険期間の後半部分に対応する前払い保険料が含まれていることになります。よって、保険期間の途中で解約するとこの前払いした部分の金額が、解約返戻金として戻ってくることになるわけです。
保険期間を長くすればするほど、その効果は高くなります。
このしくみを利用した節税対策で解約返戻率が、かなり高い対策が行われるようになったため、次のような通達改正による規制が行われました。

税制改正で「全額損金になる逓増定期保険」は加入が困難に
81ページの図表を見てみましょう。たとえば、改正前は50歳の社長が保険期間20年の逓増定期保険に加入した場合、保険期間満了時の年齢は70歳になります。しかし、加入時の年齢50歳に保険期間20年×2を加えても90でおさまりますから、全額損金算入が可能だったわけです。
ところが改正後は、保険期間満了時の年齢が45歳を超えるものはすべて損金算入が制限され、事例のケースでは1/2が損金になります。年齢制限が変更になったことにより、社長が全額損金の逓増定期保険に加入することは、むずかしくなったわけです。
 税制改正前の有利な契約条件は解約で終了。保険見直しは慎重に!
今回の税制改正は、平成20年2月28日以後の契約から適用されたので、平成20年2月27日以前の既契約については、今後支払う保険料についても従前の有利な取り扱いを継続できます(経過措置)。ところが、せっかくの経過措置も、保険を解約した時点で終了しますので、既契約の解約など見直しは慎重に行うべきでしょう。

 がん保険が改正されました
平成24年4月27日付でがん保険の取り扱いが改正され、平成24年4月27日以後の契約のがん保険の取り扱いは次のようになります(詳細は巻末資料を参照)。

「終身払込の場合」
加入時の年齢から105歳までの期間を計算上の保険期間とし、その保険期間開始の時から保険期間の50%に相当する期間を経過するまでの期間にあっては、各年の支払保険料の額のうち2分の1に相当する金額を前払金等として資産に計上し、残額については損金の額に算入することになりました。
※平成24年4月26日以前の契約は、今後も全額損金算入が可能です。

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