「子どもが受取人の保険」でも父親が支払えば相続財産とみなされる
わが子に保険契約を残したい。そんな思いから保険料の支払能力のない小さい子どもを契約者および受取人とする保険を、父親が保険料を支払って契約し、毎年の保険料も負担しているケースがよく見受けられます。
このような契約の場合、毎年の保険料を子どもに贈与していた証明ができなければ、子どもが契約した保険にはなりません。将来、父親の相続の際に、みなし相続財産として相続税の課税対象になってしまうので注意が必要です。
相続税の税務調査で思わぬ追徴を受けないように、事前の準備をしっかりしておくようにしたいものです。
保険料贈与を有効に活用しよう
相続人が多いケース、特に子どもが多ければ、贈与を積極的に活用すると節税対策になります。もちろん、贈与を活用する場合には基礎控除の110万円にこだわらず、少なくとも最低税率(10%)ぎりぎりの310万円の金額は贈与するようにしましょう。
さらに現金を贈与された相続人は、贈与された資産を単に自分名義で運用するのではなく、贈与された金銭を被保険者を親にした生命保険契約の保険料に充当すれば、贈与をさらに有効に活用できます。
親を被保険者とした生命保険契約では、被保険者の死亡によって子どもに支払われる生命保険金は相続税の対象となりません。所得税・住民税の課税対象となり、なおかつ一時所得扱いとなるため、所得税・住民税合わせて最高でも25%以下の負担ですむことになります。
このように子どもが親に保険を掛ける場合には、将来必ず保険金を受取り、それを納税資金にあてるわけですから、保険の種類としては終身保険が賢い選択です。
被保険者となる親が年をとればとるほど、終身保険の保険料は累進的に高くなってしまいますので、できるだけ早めにこの対策は実行しておくようにします。
相続税の非課税限度額の利用とは異なり、この対策は親が75歳や80歳になってから実行したのでは、保険料に対して支払われる保険金額もそれほど大きくないため、なおさら早めの実行が望まれます。
「金銭贈与契約書」の作成は必須事項
ところで、税務署から保険料贈与があったと判定してもらうためには、「過去の保険料支払い資金は父親から贈与を受けた現金を充てていた」旨の証明を子ども自身がする必要があります。
ポイントとしては、贈与を受けたときに保険料の金銭贈与契約書を作成しておくこと、金額が基礎控除(年間110万円)を超える場合には、贈与税の申告書・納付書を保管しておくことは必須です。
税務署からあとで思わぬ申告漏れを指摘されないように、有効な相続税の納税資金準備ができるように、手続きしておくことを忘れないようにしましょう。