社会保険に加入していない場合には、必ず、国民健康保険に入る必要があります。
会社を退職して無職の場合にも必ず加入しなければいけません。
そのため、退職などによって、収入が減少したとしても、国民健康保険料を納めなければいけないので、状況によっては支払いが困難な可能性があります。
しかし、災害、退職、廃業などによって収入が大幅に減少した場合といったように、やむを得ない理由で支払いに困ってしまうこともあります。
このような場合には、救済の措置として、保険料の軽減・免除などの制度や条件は設けられていないのでしょうか。
そこで、ここでは、国民健康保険の軽減・免除制度や条件について見ていきたいと思います。
目次
そもそも、国民健康保険料の額はどのようにして決められるのでしょうか。
会社員が加入する社会保険の健康保険料は、収入によって金額が決められます。
基本的に、国民健康保険料も収入で決定されるのですが、それ以外による部分もあるため、社会保険と比較してより複雑な制度となっています。
国民健康保険料を決定する際の項目としては以下の3つがあります。
この3つによって、計算された金額を合計したものが、国民健康保険料となるのです。
それでは、それぞれについて、詳しく見ていきたいと思います。
国民健康保険の所得割とは、名前の通り、所得額、つまり、年収によって決定されます。
この際の年収ですが、前年度の世帯総所得をもとに計算されます。
夫婦ともに働いている場合には、夫婦の所得を合算して計算したものとなります。
所得割の金額の求め方は、以下のような計算式になります。
保険料率については、市区町村によって定められており、毎年度見直しが行われています。
そのため、保険料率は最新のものを確認しておくことが重要です。
また、所得税には様々な種類があります。
世帯総所得を計算する上では、遺族年金や障害年金等の非課税所得や退職所得については計算に含まないので注意しましょう。
国民健康保険の均等割とは、世帯の人数によって決定されます。
均等割の金額の求め方は、以下のような計算式になります。
1人あたりにかかる均等割の金額は、市区町村によって定められています。
そのため、現在の均等割の金額がいくらになるかを確認しておくことが重要です。
また、均等割の金額は、所得のある人だけにかかるものではなく、国民健康保険に加入しているすべての人が対象となります。
これは、国民健康保険が社会保険とは異なり、扶養の概念がないためです。
収入のない配偶者や子どもであっても、世帯人数に含めるため、上記の計算をする場合にはその点に注意しましょう。
国民健康保険の世帯割とは、全世帯が平等に負担する金額のことを指します。
国民健康保険に加入している全世帯が平等に同じ保険料を負担するため、平等割とも呼ばれます。
世帯割は、世帯単位で金額が計算されています。
ただし、世帯割の金額については、所得割と均等割とは異なり、市区町村で定められている場合と定められていない場合があります。
そのため、お住まいの市区町村の制度を確認することが重要です。
国民健康保険料は、上記のように3つの項目によって決定されることがわかりました。
それでは、国民健康保険料の軽減・免除はどのような場合に行われるのでしょうか。
前年度の所得が一定基準以下の場合や、災害、退職、廃業などによって所得の減少等で国民健康保険料を納めるのが困難な場合には、国民健康保険料の軽減・免除ができる場合があります。
それでは、国民健康保険料の軽減・免除制度や条件とは、どのようなものなのか見ていきたいと思います。
やむを得ない事情によって収入が大幅に減少した場合には、条件を満たしていれば、国民健康保険の軽減・免除制度を利用することができます。
軽減制度については、前年度の所得をもとに適用されます。
雇用されている方は会社での年末調整を、自営業者の方などは確定申告を行っていれば、軽減を受けるための申請手続きは不要となります。
しかし、年末調整、確定申告ともに行っていない場合には、年収(所得)について自治体への申告が必要になるため、注意しましょう。
保険料の軽減の割合については、所得が低くなればなるほど、かつ、世帯人数が多くなればなるほど、大きくなります。
また、軽減制度だけでは保険料の負担が大きい場合には、免除制度が適用されます。
国民健康保険料の免除というのは、退職、災害、廃業にあった場合など、前年とは状況が大きく変化した場合に適用されます。
なお、免除については、軽減と違い、申請手続きが必要になります。
国民健康保険が軽減される場合には、以下のようなものがあります。
それでは、それぞれについて、詳しく見ていきましょう。
前年中の世帯所得額が一定額以下の世帯について、保険料の世帯割、均等割が軽減されます。
軽減割合 | 軽減基準額 |
2割 | 世帯全員の所得合計額が33万円+(52万円×被保険者数) |
5割 | 世帯全員の所得合計額が33万円+(28万5千円×被保険者数) |
7割 | 世帯全員の所得合計額が33万円以下 |
世帯全員の所得合計額が低ければ低いほど、かつ、世帯の人数が多ければ多いほど、軽減の割合が大きくなります。
また、これらの軽減の判定をするためには、世帯全員の所得額が判明している必要があります。
未申告の場合には、必ず、年収(所得)の申告を忘れずに行いましょう。
倒産・解雇などの理由で離職した方(特定受給資格者)や、雇い止めなどの理由で離職した方(特定理由離職者)について、保険料の所得割が軽減されます。
保険料の軽減については、以下の要件を満たしている方が対象になります。
軽減条件を満たしている場合には、申請手続きが必要になります。
申請手続きを行った場合、離職の翌日から翌年度末までの間、保険料が軽減されます。
所得割については、前年の給与所得を100分の30とみなして計算されます。
世帯の中で後期高齢者医療制度に移行する人がおり、国民健康保険が一人の世帯となる場合には、保険料の世帯割が軽減されます。
保険料の軽減については、以下の要件を満たしている方が対象になります。
なお、これらの要件を満たしている場合には、申請手続きは不要です。
世帯割については、最初の5年間は2分の1が減額されるほか、その後の3年間は4分の1が減額されます。
それでは、国民健康保険が免除される場合には、以下のようなものがあります。
また、免除制度を受けるためには申請手続きが必要になるため、忘れないようにしましょう。
それでは、それぞれについて、詳しく見ていきましょう。
失業や廃業などで所得が大幅に減少し、保険料の納付が困難になった場合には、保険料の所得割が免除されます。
保険料の免除については、世帯主および世帯の国保加入者の所得を合計した「世帯所得」が、昨年と比較して30%以上減少している場合に、所得割額を減免率に基づいて減額します。
具体的な減免率については、以下の通りです。
所得の減少率 | 所得割額の減免率 |
100% | 100% |
90%以上 100 %未満 | 90% |
80%以上 90 %未満 | 80% |
70%以上 80 %未満 | 70% |
60%以上 70 %未満 | 60% |
50%以上 60 %未満 | 50% |
40%以上 50 %未満 | 40% |
30%以上 40 %未満 | 30% |
ちなみに、所得減少率は、以下の計算式に当てはめることで算出することができます。
災害で住宅などに著しい被害を受けたことにより、保険料の納付が困難になった場合には、保険料の所得割が免除されます。
災害にかかる保険料の免除要件と減免率については、以下の通りです。
損害の程度 | 減免率 |
全壊・全焼(損害の程度が70%以上である場合) | 100% |
大規模半壊(損害の程度が50%以上70%未満である場合) | |
半壊・半焼(損害の程度が20%以上70%未満である場合) | 70% |
火災による水損または床下浸水 | 50% |
上記の減免割合は、あくまでも目安になります。
具体的な損害の程度や減免率などの基準は、市区町村によって異なるため、所轄の市区町村役所に確認してみましょう。
社会保険等の被保険者本人が後期高齢者医療制度に移行すると、旧被扶養者に対しての保険料が免除されます。
旧被扶養者とは、国民健康保険に加入している65歳以上の方を指しています。
旧被扶養者にかかる保険料の免除については、以下の通りです。
対象保険料 | 減免額 | 減免期間 | |
平成30年度以前 | 令和元年度以降 | ||
所得割 | 全額 | 資格取得日から当分の間 | 資格取得日から当分の間 |
均等割 | 2分の1 | 資格取得日から当分の間 | 資格取得日の属する月以降2年を経過する月までの間 |
世帯割 | 2分の1 |
国民健康保険の被保険者が刑務所・少年院等に収容されている場合、保険料の所得割、均等割が免除されます。
また、対象となる期間に他の被保険者がいない月は、世帯割も免除されます。
ただし、対象となる期間が1ヶ月に満たない場合には、減免の対象にはならないので注意しましょう。
被保険者が債務返済のために住宅を譲渡した場合には、譲渡所得にかかる保険料の所得割が免除されます。
被保険者が生活保護法の規定による扶助を受けた場合、扶助を受けた後に到来する納期にかかる保険料を免除されます。
国民健康保険は、社会保険と比較すると内容が難しいですよね。
国民健康保険料は所得割・均等割・世帯割の3つの項目からなりますが、それぞれの制度によって、軽減・免除される項目は異なります。
軽減・免除制度を利用する場合には所得確認を行う必要がありますが、所得確認が済んでいる場合には、制度の内容によっては申請の手続きが必要ないものもあります。
その他にも、被保険者だけではなく、世帯全員の所得確認が必要な場合もあるため、新たに申告する必要がある場合もあります。
上記を参考に、制度の条件などの内容、申請の有無などについて、しっかりと確認した上で、制度を利用しましょう。