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標準報酬月額とは?わかりやすく解説!社会保険料の計算・決定のため

毎月の給料からは、社会保険料が天引きされています。

しかし、この天引きされている社会保険料というのは、毎月の給料をもとに計算すると、残業代などで給料が変動するため、非常にややこしくなってしまいます。

そのため、社会保険料の計算のためには、標準報酬月額というものが用いられます。

では、わかりやすくいうと、この標準報酬月額とは何なのでしょうか。

そこで、ここでは、標準報酬月額とは何なのか、どのように決定されるのか、社会保険料はどのように計算されるのかについて、わかりやすく見ていきたいと思います。

標準報酬月額はどのように決定される?

この社会保険料の計算のもとになる、標準報酬月額ですが、一体、どのように決定されるのでしょうか。

標準報酬月額の範囲となる報酬と決定のタイミングについて見ていきたいと思います。

標準報酬月額の範囲となる報酬とは?

報酬の対象となるもの(現金で支給されるもの)

  • 基本給(月額、時給、日給等)
  • 諸手当(通勤費、時間外手当、家族手当、住宅手当、役付手当、勤務地手当等)
  • 賞与、決算手当等(年4回以上支給されるもの)

報酬の対象となるのは、基本給以外にも、通勤費、時間外手当、家族手当などといった、会社からもらうお金は、大半が報酬の対象となります。

賞与など臨時で支給されるものについても、年に4回以上の支給の場合には、報酬の対象となります。

報酬の対象となるもの(現物で支給されるもの)

  • 通勤定期券、回数券
  • 社宅
  • 食事、食券
  • 被服(勤務服でないもの)
  • 自社製品

現物で支給された場合にも、上記のものは、金額相当分が報酬とみなされます。

報酬の対象とならないもの(現金で支給されるもの)

  • 賞与など(年3回までの支給)
  • 結婚祝金、病気見舞金、慶弔見舞金など
  • 退職金、解雇予告手当など
  • 出張旅費、交際費など
  • 傷病手当金、休業補償給付などの公的保険給付

年3回までの賞与は、別で社会保険料対象となるため、標準報酬月額には含まれません。

年3回までの賞与の社会保険料は、支給されるごとに計算されます。

結婚祝金、病気見舞金、慶弔見舞金など、労働の対価とは言えないものは報酬には含まれません。

出張旅費や交際費などの立替金を清算したようなものも報酬には含まれません。

報酬の対象とならないもの(現物で支給されるもの)

  • 制服や作業着(業務に要するもの)
  • 見舞い品
  • 食事(※本人の負担額が、厚生労働省が定める価格により算定した額の2/3以上の場合)

上記の場合の現物支給されるものは、報酬とはなりません。

標準報酬月額が決定されるタイミングとは?

社会保険料の計算のもととなる、標準報酬月額は、以下の4つの場合に決定・改定されます。

  • 資格取得時の決定
  • 定時決定
  • 随時改定
  • 産前産後休業・育児休業終了時の改定

それぞれについて詳しく見ていきたいと思います。

資格取得時の決定

会社に入社した時など、社会保険に加入して被保険者となる際に、標準報酬月額が決定されます。

資格取得から5日以内に、健康保険・厚生年金被保険者資格取得届という書類を管轄の年金事務所に提出します。

なお、資格取得時決定の適用期間は、1月〜5月に入社し取得した場合は、その年の8月まで、6月〜12月に入社し取得した場合には、翌年の8月までとなります。

定時決定

定時決定とは、毎年、7月に、4月から6月の3ヶ月間の給与の平均金額によって標準報酬月額を見直し決定することをと言います。

7月1日~7月10日に、「健康保険・厚生年金被保険者報酬月額算定基礎届」というものを管轄の年金事務に提出します。

この定時決定された標準報酬月額は、9月~翌年の8月までが適用期間となります。

随時改定

定時決定により決定された標準報酬月額は、原則として1年間適用されます。

しかし、この間にも、給与額に大きな変動があった場合には、随時改定というものを行う必要があります。

随時改定は、以下の3つの条件全て該当した場合、行わなければなりません。

  • 昇給・降給により固定的賃金の大幅な変動がある
  • 支払基礎日数が17日以上ある
  • 2等級以上の差が生じている

上記の3つの条件に該当した場合には、健康保険・厚生年金保険被保険者報酬月額変更届というものを、すみやかに管轄の年金事務に提出することになります。

1月〜6月に改定した場合は、その年の8月まで、7月〜12月に改定した場合には、翌年の8月まで適用されます。

産前産後休業・育児休業終了時の改定

産前産後休業や育児休業が終わって会社に復帰した後は、時短勤務などとなる可能性があり、報酬が大きく下がる場合があります。

このような場合に、届け出を出すことで、標準報酬月額を改定することができます。

下記の2つの条件にいずれにも該当した場合に改定の対象者となります。

  • 産前産後休業・育児休業に入る前と後で標準報酬月額に1等級以上の差が生じる
  • 休業終了日後3ヶ月のうち、1ヶ月は報酬の支払いの基礎日数が17日以上ある

産前産後休業終了時報酬月額変更届または、育児休業終了時報酬月額変更届をすみやかに、管轄の年金事務に提出します。

1月〜6月に改定した場合は、その年の8月まで、7月〜12月に改定した場合は、翌年の8月まで適用されます。

このように標準報酬月額は決定されますが、これを用いて、社会保険料をどのように計算するのかについて見ていきたいと思います。

標準報酬月額をもとにした社会保険料の計算方法やその他の用途

それでは、標準報酬月額を用いて、どのように社会保険料を計算するのでしょうか。

標準報酬月額をもとにした社会保険料の計算方法は?

厚生年金、健康保険、介護保険それぞれの計算方法について見ていきたいと思います。

厚生年金の計算方法

現在の厚生年金の保険料率は18.3%となりますが、社会保険料は、労使折半なので、被保険者の負担は9.15%となります。

例えば、標準報酬月額260,000円、厚生年金第17等級で見ていきたいと思います。

給料から天引きされる厚生年金保険料は以下となります。

260,000円×9,15%=23,790円

健康保険料の計算方法

健康保険の保険料率は都道府県ごとに決められています。

例えば、現在の大阪府の保険料率は、10.22%となっています。

日本年金機構「令和2年度保険料額表」

大阪府で標準報酬月額260,000円、健康保険第20等級で見ていきたいと思います。

260,000円×10.22%=26,572円

1ヶ月の健康保険料は26,572円となり、これを会社と労働者が折半するので、被保険者の負担は13,286円となります。

介護保険料の計算

また、40歳からは、介護保険料を払わなくてはいけません。

介護保険料率は、全国統一で、令和2年では、1.79%となっております。

標準報酬月額に1.79%掛けた額が1ヶ月の介護保険料で、それを会社と労働者が折半します。

上記同様、大阪府で標準報酬月額260,000円、健康保険第20等級で見ていきたいと思います。

260,000円×1.79%=4,654円

1ヶ月の介護保険料は4,654円とり、これを会社と労働者が折半するので、被保険者の負担は2,327円となります。

社会保険料を控除した給料はいくら?

大阪府で報酬が260,000円の場合には、40歳以上で介護保険料も必要な場合は220,597円となります。

260,000円ー(23,790円+13,286円+2,327円)=220,597円

40歳以下で介護保険料が不要な場合には、222,924円となります。

260,000円ー(23,790円+13,286円)=222,924円

厚生年金、健康保険、介護保険のそれぞれの保険料の計算方法について見てきましたが、日本年金機構のホームページにある表に照らし合わせると、計算しなくても、いくらになるのかを見ることができます。

標準報酬月額のその他の用途は?

標準報酬月額は、社会保険料の決定以外にも、以下の用途で使われます。

傷病手当金、出産手当金の算定

病気やけがで休業している期間に生活保障を行う制度として、傷病手当金という制度があります。

この傷病手当金の金額の算定には、標準報酬月額が用いられます。

また、出産のため会社を休み、その間に給与の支払いを受けなかった場合には、出産手当金が支給されますが、この金額の算定のためにも使われます。

老齢厚生年金の算定

老齢厚生年金の受給額の算定には、加入期間全ての標準報酬月額の平均を算定した平均標準報酬月額が使われます。

休業中には標準報酬月額はどうなる?

病気やけがで休職するとき

休職期間中に、会社からの給与が支給されない場合も、社会保険料は徴収されます。

このときの社会保険料の計算のもとになる標準報酬月額は、休職前のものをそのまま使用するので、社会保険料の負担額は同じとなります。

介護で休業するとき

介護休業期間についても、上記と同様となります。

出産、育児で休業するとき

産前産後休業及び育児休業期間中は、標準報酬月額は同じままですが、社会保険料は会社負担分も本人負担分も免除となります。

健康保険(協会けんぽ)・厚生年金保険 産前産後休業取得者申出書/変更(終了)届というものを提出する必要があります。

養育期間に標準報酬月額が低下した場合

子どもが3歳までの間に、時短勤務などで働くことで、標準報酬月額が低下した場合に、将来の年金額に影響しないようにするための措置です。

時短勤務を行う前の標準報酬月額を、その期間の標準報酬月額とみなして年金額を計算します。

厚生年金保険 養育期間標準報酬月額特例申出書・終了届というものの提出が必要です。

標準報酬月額のことを理解して損をしないようにしましょう!

標準報酬月額の定時決定は、4月~6月の報酬をもとにして、その後9月からの1年間の社会保険料の金額が決定されます。

そうすると、例えば、4月から6月の間に、残業を多くしてしまうと、その後の社会保険料が上がってしまうため、社会保険料の負担が大きくなり、損をしてしまう可能性があります。

また、社会保険の等級については、220,000円からは20,000円ごとの幅となっております。

昇給に伴い、給料とともに等級が上がれば、社会保険料の負担は上がっていきます。

そのような場合に、等級の幅の一番下の金額にすると、社会保険料は上がってしまうけれども、給料の額は下の等級と変わらないので、少し損した気分になってしまいます。

このあたりのことを踏まえて、会社も労働者も損をしないように対応したいものですね。

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