退職金制度を導入している会社では、定年退職を迎えた場合や、様々な事情で会社を退職することになった場合には、退職金が支払われます。
しかし、最近では、退職金制度から確定拠出年金制度に切り替える会社が増えてきています。
どちらの制度についても、退職後や老後のための資金形成を行うという重要な役割を担っている制度になります。
また、確定拠出年金制度とは老後に年金として受け取ることも可能ですが、企業型DCであれば退職金として受け取ることも可能です。
しかし、それぞれの制度がどのような内容のものであるのか、どのような違いがあるのかは、意外と把握していないものですよね(^^;
ここでは、確定拠出年金とは、退職金とどう違うのか、企業型DCの掛け金や運用方法、税金の違いについて詳しく見ていきたいと思います。
目次
会社を退職した後に受け取ることができる退職金は、今までに積み立てた資産を一括で支給されますよね。
確定拠出年金には、以下の受け取り方があります。
このように、今までに積み立てた資産を年金として毎月少しずつ受け取るか、一時金として一括で受け取るか、年金と一時金を組み合わせて受け取るかを選択することができます。
しかし、確定拠出年金と退職金との大きな違いは、確定拠出年金は原則として60歳以降でなければ引き出しができない(=給付されない)という点です。
退職金の場合は、定年退職以外の転職などによる退職の場合でも、退職金規定等に従って給付額が決定され、退職金が支給されます。
つまり、退職金の場合は60歳以前であっても受け取ることができるというわけですね。
一方で、確定拠出年金の場合は、60歳以降にならなければ上記の受け取り方を選択することはできません。
そのため、60歳以前で転職などを行った場合には、確定拠出年金からなんらかの支給が行われることはなく、転職先に今まで運用してきた資産を移管することになります。
また、転職先に確定拠出年金制度がない場合には、個人型確定拠出年金(iDece)に資産を移管することができます。
ここでは、企業型確定拠出年金(企業型DC)と退職金はどう違うのかについて、掛け金・運用・税金のそれぞれに焦点を当てて、詳しく見ていきましょう。
確定拠出年金の掛け金は、基本的には企業負担になります。
ただし、規定に定めている場合には、加入者が掛け金を拠出することも可能です。
そのため、掛け金を増やしたい場合には、企業の担当部署に聞いてみることをおすすめします。
また、掛け金には上限(拠出限度額)が設定されています。
他の企業年金(確定給付年金・厚生年金基金など)を導入している場合には月額2万7500円、導入していない場合には月額5万5000円となります。
加入者が掛け金を拠出する場合にも、企業の拠出分と合わせて拠出限度額を超えることはできないため、注意しましょう。
退職金の掛け金は、企業負担になります。
掛け金の決定方法は企業の方針によって異なりますが、賃金や勤続年数などを基準に決めるのが一般的です。
社内積立と社外積立の2パターンがあり、いずれも予定した給付額に対して積立金が不足した場合には、企業が掛け金を追加負担する必要があります。
確定拠出年金の運用は、従業員が行います。
従業員が自分自身で運用商品を選んだり、どれくらい購入するのかを決めて、運用の仕方を指示する必要があるため、運用責任は従業員側にあります。
掛け金は企業が負担してくれるほか、リスクを抑えながら運用することが可能になったり、運用次第では将来に受け取れる年金資産を増やすことが可能になります。
しかし、運用によっては、今までに積み立ててきた掛け金よりも年金資産が下回るリスクもあるため、注意が必要です。
退職金の運用は、企業が行います。
従業員が運用商品を選んだり、運用の仕方を指示したりすることは基本的にないため、運用責任は企業側にあります。
運用に対して責任を負う必要がないため、従業員側からすればメリットが大きいといえますが、会社業績や運用結果次第では、退職金が減額されたり、なくなってしまうリスクも存在するため、注意が必要です。
確定拠出年金の場合は、3つの税制優遇を受けることができます。
1つ目は、企業型DCで運用した時の運用益が全額非課税となることです。
一般的な金融商品で運用すると、運用益に対しては約20%の税金がかかるのが当たり前ですが、確定拠出年金の場合は、その税金が全額非課税となります。
2つ目は、今までに積み立ててきた年金資産を受け取る場合、一時金であれば退職所得控除、年金であれば公的年金等控除の対象となり、税金を抑えることができます。
3つ目は、従業員が拠出する分の掛け金が全額所得控除の対象となり、所得税と住民税を抑えることができます。
しかし、3つ目の税制優遇を受けるためには、マッチング拠出という、企業型DCの場合において、企業が拠出する掛け金に従業員自身が掛け金を上乗せする制度を利用している必要があるので注意しましょう。
退職金の場合は、退職金を受給する時に退職所得として扱われるため、退職所得控除の対象となります。
しかし、それ以外の所得控除などの控除を受けることはできません。
確定拠出年金と比べると節税できる機会は少なくなりますが、結果としては、退職金として受け取る方が税金の負担が軽くなる場合もあります。
最近では、退職金制度から確定拠出年金制度に切り替えている企業が増えてきています。
また、確定拠出年金制度を導入しており、退職金制度と併用して利用しているケースや、退職金制度や確定拠出年金制度に一本化するケースも多くなっています。
企業型DCを利用するには、会社が掛け金を負担するだけではなく、掛け金の拠出を選択するほか、従業員自身が運用する必要があるため、正しい知識を持っておくことが重要となります。
老後の資産準備をかしこく行うためにも、上記を参考に、それぞれの制度の違いについて正しく理解しておきましょう(^^♪