会社の手続きとして、パート・アルバイトなど雇用形態に関わらず、給与を支払いの対象者がいる場合には、1年に1回、「給与支払報告書」というものを作成し、提出しなければいけません。
この給与支払報告書には、「個人別明細書」と「総括表」の2つの書類があります。
個人別明細書は、「源泉徴収票」と内容が同じなので、混同しがちです。
しかし、源泉徴収票は、税務署へ提出するもので、個人別明細書は、市区町村へ提出するものなので、区別に注意が必要となります。
非常にややこしいですよね。
そこで、ここでは、給与支払報告書とは何なのかをわかりやすく解説いたします。
目次
所得税の源泉徴収義務がある事業主(給与支払者)は、法人・個人を問わず、前年中に支払った(支払いの確定した)給与について、給与支払報告書(総括表および個人別明細書)を作成し、提出することが法令により義務付けられています。
所得税の源泉徴収票と異なり、給与支払額の多少にかかわらず、アルバイト・パート、役員等を含むすべての従業員の分を提出する必要があります。
給与支払報告書の提出を受けた市区町村は、それらをもとに、個人住民税の課税額の計算を行います。
このように、給与支払報告書は、個人住民税の課税額の決定に必要な書類となりますので、給与支払者は、対象者の分、全てを提出する義務があります。
そして、この給与支払報告書をもとに、従業員一人ひとりの特別徴収額決定通知書が市区町村から送付されてきます。
事業主は、これをもとに、各従業員の給与から個人住民税を差し引いて、市町村へ納入することが、地方税法において規定されております。
以前は、住民税の納付は、個人が納入する普通徴収と会社が天引きしてまとめて納入する特別徴収を選択することができましたが、現在は、特別徴収が義務化されています。
個人別明細書に記載する内容は源泉徴収票と同じです。
給与を受ける者の氏名・住所・生年月日・給与の金額・保険料控除の金額などを記入します。
源泉徴収票と異なるのは、提出先が税務署ではなく市区町村であることと、住民税の計算のためのものであることです。
個人別明細表を送付する際の表紙として使用するものです。
その市区町村には、会社から何人の従業員の個人別明細書が提出されたのか、うち退職した人は何人いるか、などを記入します。
そのため、従業員が住んでいる市区町村の数だけの総括表と個人別明細書を組み合わせた、給与支払報告書を作成することになります。
それでは、具体的に給与支払報告書の提出について見ていきたいと思います。
前年中に給与を支払った従業員(アルバイト・パート、役員等を含む)全員について、給与支払額の多少にかかわらず提出する必要があります。
3月末までに退職等により給与を支払わなくなった場合には、4月15日までに「給与所得者異動届出書」を提出する必要があります。
給与所得者異動届出書の提出がない場合は、特別徴収義務が継続したままとなってしまい、会社には督促状等が送付されることがありますので、注意が必要です。
退職者についても、退職日現在にお住まいの住所所在地の市町村に給与支払報告書を提出いただく必要がありますが、退職者のうち、退職した年の給与支払額が30万円以下である場合は提出を省略することが可能です。
給与支払報告書には、個人別明細書と総括表の2つがあります。
この2つを、それぞれの従業員が1月1日時点で住んでいる市区町村に1月31日までに提出しなければいけません。
たとえば、令和3年の給与支払報告書を提出する場合には、令和4年1月1日に各従業員が住んでいる市区町村に提出することになります。
また、住民税を特別徴収から普通徴収に切り替えるということが発生する場合には、個人別明細書に普通徴収をする理由を記載するとともに、「普通徴収切替理由書兼仕切書」というものを添付する必要があります。
普通徴収が認められる理由については、市区町村ごとに定められているので、それぞれの市区町村の様式を確認する必要があります。
以下のいずれかの方法によって提出します。
ただし、大口事業者(前々年に提出すべき所得税の源泉徴収票が1,000枚以上の給与支払者)は、インターネットを利用した電子申告(eLTAX:エルタックス)または光ディスク等による提出が必要となります。
※令和3年1月1日以後の提出分からは、前々年に提出すべき所得税の源泉徴収票の提出基準が「100枚以上」に変更となります。
給与支払報告書は、1月31日までに市区町村に提出しなければいけません。
万が一、提出が遅れてしまい、6月の住民税の賦課作業に間に合わなかった場合には、どうなるのでしょうか。
このような場合には、ペナルティなどはありませんが、その代わり、本来は1年分の住民税を12ヶ月に分けて納付するところが、11ヶ月や10ヶ月となってしまうため、1ヶ月あたりの住民税の金額が高くなってしまいます。
そうすると、従業員の1ヶ月あたりの住民税の負担が増えてしまうので、従業員が会社へ不満を抱いてしまいかねないので、注意が必要です。
給与支払報告書の提出は、年に1回、1月31日までとなります。
また、個人別明細書は、源泉徴収票と記載事項がほとんど同じなので、源泉徴収票の作成がきちんと行えている場合には、事務処理はスムーズに行えるはずです。
しかし、源泉徴収票を税務署に提出したということと、給与支払報告書を提出したということを混同してしまいがちなので、いずれも行わなければいけないということに注意が必要です。
提出が遅れた場合には、従業員の住民税の計算にも影響が出てしまいます。
そのため、このような手続き関係の業務は、確実に漏れのないように行うように心がけましょう!