個人住民税において、特別徴収が義務化されることになりました。
従来は、個人住民税においては、個人が自分で納付を行うという普通徴収が一般的でしたが、現在では全国的に特別徴収が義務化されています。
特別徴収においての税額は会社側が算出する必要はありませんが、給与から天引きすることを考慮して給与計算を行わなければならないとなると、意外と面倒ですよね。
また、ただ単に市区町村から算出された税額を給与から天引きしたら良いのかというとそうではなく、いくつか注意すべき点があります。
しかし、なぜ、特別徴収が義務化されるようになったのでしょうか?
また、特別徴収が義務化されるようになったのはいつからなのでしょうか?
ここでは、個人住民税の特別徴収のしくみや、なぜ・いつから特別徴収が義務化されたのか、会社側の手続きを徹底して行うための注意点などについて、詳しく解説していきます。
目次
住民税の特別徴収が義務化したのがなぜかを考えるためには、住民税の特別徴収のメリットを考えればわかるのではないかと思います。
このように、会社などで働く従業員にとっては、住民税を納期ごとに、納付しに行く手間が省け、納付忘れによる滞納などの心配もなくなります。
また、普通徴収の場合は、納期は年4回ですが、特別徴収の場合は、12回に分割されるため、1回あたりの納付額の負担も少なくなります。
自治体にとっても、個人での納付よりも、納付してもらえる確率が確実に向上します。
そのため、現在では、住民税の特別徴収が義務化されています。
住民税の特別徴収には、メリットだけではなくデメリットもあるのではないでしょうか。
住民税は会社負担などはありませんので、特別徴収というのは、実質的に、本来は必要のなかった業務を代行している形となります。
そのため、その分の業務がすべて、会社側への負担となってしまうのです。
個人住民税の特別徴収は、地方税法第321条の3によって義務付けられています。
市町村は、納税義務者が前年中において給与の支払を受けた者であり、かつ、当該年度の初日において給与の支払を受けている者(支給期間が一月を超える期間により定められている給与のみの支払を受けていることその他これに類する理由があることにより、特別徴収の方法によつて徴収することが著しく困難であると認められる者を除く。以下この条及び次条において「給与所得者」という。)である場合においては、当該納税義務者に対して課する個人の市町村民税のうち当該納税義務者の前年中の給与所得に係る所得割額及び均等割額の合算額は、特別徴収の方法によつて徴収するものとする。(中略)
また、こちらの特別徴収をさらに徹底させるために、2014年8月に「個人住民税特別徴収推進宣言」が全国地方税務協議会によって採択され、法令遵守の徹底が改めて確認されました。
そのため、現在では全国的に特別徴収が義務化しているわけです。
しかし、特別徴収が実施されるようになったのは、実は全国一斉に同じタイミングというわけではありません。
平成24年以前では、北海道、岐阜県、静岡県、高知県、佐賀県の5団体しか特別徴収が実施されていませんでした。
上記の法令に伴い、各都道府県でも特別徴収を実施する団体が年々増加してきたことにより、現在に至るというわけです。
このように、特別徴収が義務化されたタイミングは各都道府県によって異なります。
具体的なタイミングが知りたい場合には、各都道府県で義務化された年度を確認すればわかりますが、現在では全国的に特別徴収が義務化されているので、会社側は上記の手続きをしっかりと行って正しく徴収・納付する義務があります。
このように、現在では、住民税は特別徴収が義務化されていますが、特別徴収とはどのような仕組みなのかについて見ていきたいと思います。
住民税の特別徴収とはどのような仕組みなのでしょうか。
特別徴収とは、会社が給与を支払う際に、毎月の給料から個人住民税を天引きし、従業員に代わって納付する徴収方法のことを指しています。
よって、会社側が従業員の代わりに手続きを行う必要があるわけですが、その仕組みとはどうなっているのでしょうか。
特別徴収の流れは以下の通りです。
会社は、所属しているすべての従業員に支払っている、前年1月から12月までの1年間の給与支払額を各従業員の住んでいる市区町村に報告する必要があります。
そのため、会社では、1月31日までに、各従業員の給与支払額を記載した給与支払報告書を作成し、各市区町村に提出する必要があります。
この給与支払報告書をもとに、各市区町村が各従業員の特別徴収額を算出します。
給与支払報告書をもとに算出した、従業員一人ひとりの特別徴収額決定通知書が市区町村から送付されます。
こちらの通知書は、毎年5月頃に会社宛てに届きます。
通知された各従業員の個人住民税の月額を給与から天引きするように、給与計算を行います。
毎年5月頃に通知された分を、翌月6月から反映するように計算する必要があります。
個人住民税を含めた必要な分の金額を給与から天引きし、残りの額を従業員に支払います。
給与から天引きした住民税額を、給与支払いの翌月10日までに納付書を用いて納付します。
金融機関、もしくは、市区町村の窓口で納付することができます。
上記の流れを経て、個人住民税を納付するわけですが、給与から天引きするまでの事務処理はすべて会社側が行うことになります。
特別徴収が義務化されるまではこういった事務処理はなかったわけですから、いちいち行わないといけないと考えると、確かに面倒ですよね。
しかし、事務処理を行うことなく、かつ、住民税を期日までに納付しなかった場合には、事業主宛に督促状が届くほか、滞納処分が課せられる場合もありますので、注意が必要です。
個人住民税の特別徴収は、役員やパート、アルバイトも対象になるため、会社で雇用しているほとんどの従業員が対象となります。
また、原則として、従業員や会社の都合で普通徴収に切り替えることはできません。
そのため、会社側が事務処理が面倒などの理由から特別徴収を拒否し、なおかつ、納付期日を過ぎても支払わなかった場合には、事業主に滞納処分(財産差し押さえ)が課せられます。
会社側だけではなく、納税義務者である従業員にも、納税証明書を取得できなくなるなどの悪影響が及ぶ場合があるため、注意が必要です。
また、手続きを行う際には、市区町村から送付される特別徴収税額決定通知書の内容が正確であるかどうかも確認することが重要です。
まれに、通知書の中に退職者が含まれている場合があります。
市区町村への連絡を行わず、会社側で訂正して納付してしまうと、一部未納として処理されてしまうので、そこも注意したいところですね。
上記の内容に気を付けて、適切かつ正確に特別徴収の手続きを行うことが、実質的な会社側の負担を軽減することにも繋がります。
会社としての義務をしっかりと義務を果たすようにしましょう(^^♪