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裁量労働制とは?わかりやすく解説!残業代や休日手当はどうなるのか

裁量労働制とは、簡単にいえば、実際に働いた時間に関係なく、労使関係で定めた労働時間分を働いたとみなす制度になります。

この制度は、ライフスタイルが多様化している現代において、注目されているものの一つです。

特に、自分のライフスタイルに合わせて働きたい場合や、自分のペースで業務を遂行したい場合には、メリットが大きい制度といえます。

しかし、業務についての自由度が高い分、残業代や休日手当などの仕組みが複雑になっている部分があるのも事実です。

裁量労働制のメリットはわかりやすく、理解もしやすいけれど、デメリットまではあまり把握していない人も多いと思います。

ここでは、裁量労働制について、わかりやすく解説していきたいと思います。

裁量労働制はみなし労働時間制の一つである

裁量労働制は、「みなし労働時間制」の一つです。

裁量労働制について触れる前に、まずは「みなし労働時間制」について見ていきましょう。

みなし労働時間制とは、事前に定められている時間の労働をしたとみなす制度です。

これは、実際の労働時間の算定が難しい業種や、業務の遂行方法や時間配分を労働者の裁量に委ねる必要のある業種に認められている制度になります。

具体的には、以下のような制度があります。

  • 事業場外みなし労働時間制
  • 裁量労働制

このように、みなし労働時間制には、「事業場外みなし労働時間制」と「裁量労働制」の2種類があります。

また、裁量労働制には、「専門業務型裁量労働制」と「企画業務型裁量労働制」の2種類があります。

これらの制度を導入することで、労働時間の管理がしやすくなるだけでなく、作業効率を良くし、より良い成果につなげる可能性を高めることができます。

しかし、実際の労働時間とみなし労働時間の差が大きくなり、労働者の負担を強いてしまうこともあり得るので、注意が必要です。

裁量労働制について、わかりやすく解説!

ここでは、裁量労働制について、わかりやすく解説していきたいと思います。

裁量労働制の目的

労働基準法では、「1日8時間、週40時間」という勤務時間が定められています。

勤務開始時間や勤務終了時間は会社によって異なるものの、労働基準法の規定に従って、労働することになります。

これは、労働者の心身の健康を保ちつつ、効率良く業務を遂行することを目的としています。

しかし、特定の業務では、その目的が果たせない場合があります。

  • 土木・建設等の建設関係業務
  • 自動車の運転業務
  • 新商品・新技術の研究開発業務
  • 造船事業の船舶改造・修繕業務
  • 郵政事業の年末年始業務

上記のような特定の業務では、勤務時間が定められていることによって、かえって作業効率が悪くなり、仕事がやりにくくなる場合があります。

こういった問題を解決するために設けられたのが、「裁量労働制」です。

裁量労働制を設けることで、特定の業務の遂行方法は労働者の裁量に委ね、自分で時間を調整しながら業務を遂行できるようにしました。

完全に自由に業務を遂行できるわけではありませんが、大幅に業務の自由度を高めることで、作業効率を高め、より良い成果に繋げられるようにすることを目的としています。

少子高齢化の進行によって、働き方も多様化しているため、仕事の生産性を高めていくためにも、自分のペースで仕事ができる裁量労働制が注目されています。

裁量労働制の種類

裁量労働制には、以下の2種類があります。

  • 専門業務型裁量労働制
  • 企画業務型裁量労働制

それでは、それぞれについて、詳しく見ていきましょう。

専門業務型裁量労働制

専門業務型裁量労働制とは、業務の性質上、業務の遂行方法や時間配分を労働者に委ねる必要があり、具体的な指示を行うことが困難である職種が対象となります。

専門業務型労働時間制を採用するには、労働者と使用者の間で労働時間を調整して労使協定を締結し、労働基準監督署に書類を提出する必要があります。

労働基準監督署から承認を得た場合には、労使協定によって定めた時間分の労働を行ったとみなすことができます。

専門業務型裁量労働制が対象となる職種・業務には、以下のようなものがあります。

職種・業務内容
新商品・新技術の研究開発または人文科学・自然科学に関する研究
情報処理システムの分析または設計
新聞・出版・放送制作における取材または編集
衣服・室内装飾・工業製品・広告などの新たなデザインの考案
放送番組・映画などの制作におけるプロデューサーまたはディレクター業務
上記のほか、厚生労働大臣の指定する業務
① コピーライター
② システムコンサルタント
③ インテリアコーディネーター
④ ゲーム用ソフトウェアの創作
⑤ 証券アナリスト
⑥ 金融商品の開発
⑦ 大学の教授、准教授、講師の研究業務
⑧ 公認会計士
⑨ 弁護士
⑩ 建築士
⑪ 不動産鑑定士
⑫ 弁理士
⑬ 税理士
⑭ 中小企業診断士

企画業務型裁量労働制

企画業務型裁量労働制とは、事業運営上の重要な決定が行われる事業場において、企画、立案、調査、分析を行う職種が対象となります。

専門業務型のように対象業務が限定されているわけではありませんが、主に、会社でも事業運営の中心である本社や管理部門での業務に適用されます。

企画、立案、調査、分析を行う場合、時間単位での成果が見えにくいため、裁量労働制の対象となっています。

企画業務型裁量労働制を採用するには、労使委員会を作り、企画業務型裁量労働制を実施するための決議を行う必要があります。

決議後は、労働基準監督署に届け出を提出し、労働者本人からの同意を得ることで、制度を採用することができるようになります。

専門業務型裁量労働制と比べると、手続きは複雑になるので、注意しましょう。

裁量労働制の会社側のメリット

裁量労働制の会社側のメリットは、以下の通りです。

  • より良い成果が得られる可能性が高くなる
  • 人件費のコントロールがしやすい

それでは、それぞれについて、詳しく見ていきましょう。

より良い成果が得られる可能性が高くなる

裁量労働制は、自分のペースで業務を遂行できるのが最大のメリットといえます。

特に、会社の運営を左右する重要な業務を遂行するには、状況に合わせて臨機応変な対応が求められます。

時間に縛られることもないので、効率の良い働き方ができるようになり、より良い成果が得られる可能性を高めることができます。

人件費のコントロールがしやすい

裁量労働制は、原則として、時間外労働による残業代が発生しないのが特徴です。

そのため、みなし労働時間分を固定給として処理することが可能です。

固定給として処理した場合には、人件費の総額を算定することも可能になります。

人件費を見直したい場合にも、人件費の予測値を早く計算することができるので、コントロールがしやすいのもメリットといえます。

このように、労働者一人一人の時間外労働の給与を計算する必要がなくなり、労務管理の負担を軽減することができます。

裁量労働制の会社側のデメリット

裁量労働制の会社側のデメリットは、以下の通りです。

  • 採用するまでの手続きが面倒である
  • 時間管理の徹底が必要になる
  • 社員の現状が把握しづらい

それでは、それぞれについて、詳しく見ていきましょう。

採用するまでの手続きが面倒である

裁量労働制には、「専門業務型」と「企画業務型」の2種類があります。

手続きの方法は専門業務型と企画業務型とで異なりますが、どちらも複雑なものになります。

裁量労働制を採用するまでの手続きに手間がかかってしまうので、それを面倒に感じて、採用に踏み切れない会社もあるようです。

時間管理の徹底が必要になる

裁量労働制は、業務の遂行方法や時間配分を労働者の裁量に委ねますが、会社には労働者の時間管理をする義務があります。

裁量労働制を採用している場合には、労働時間の自由度が高いため、労働者の時間管理を徹底する必要があります。

また、制度の特性上、みなし労働時間よりも実際の労働時間が長くなり、長時間労働につながる恐れがあります。

長時間労働を防ぐためにも、労働者の時間管理を徹底することが重要になります。

社員の現状が把握しづらい

労働者の労働時間の管理を行うのは会社の義務なので、労働時間については問題ありません。

しかし、業務の遂行方法についても労働者の裁量に委ねられており、現場に出向くことができないなどの理由から、社員の現状が把握しづらいというデメリットがあります。

業務の進捗状況を報告する仕組みを設けるなど、社員の現状を把握することができるような工夫をすることが重要です。

裁量労働制の社員側のメリット

裁量労働制の社員側のメリットは、以下の通りです。

  • 生産性を高めれば労働時間が短縮できる
  • 自分のライフスタイルに合わせて仕事ができる

それでは、それぞれについて、詳しく見ていきましょう。

生産性を高めれば労働時間が短縮できる

裁量労働制が採用されれば、労使協定で定めた労働時間の中で仕事をすることになります。

自分のペースで業務を遂行することができますが、業務の時間配分を上手に行わないと、実際の労働時間がみなし労働時間を超えてしまう場合があります。

しかし、逆をいえば、業務の時間配分を上手に行い、生産性を高めることができれば、みなし労働時間よりも実際の労働時間を短縮することができます。

つまり、仕事が早く終われば早く帰って良いということになるので、労働者にとってのメリットは大きいといえます。

自分のライフスタイルに合わせて仕事ができる

男性、女性に関わらず、ライフスタイルは人によって様々です。

裁量労働制が採用されれば、みなし労働時間が設定されているため、自分のライフスタイルに合わせて仕事ができるようになります。

そのため、子育てや介護などが必要な場合には、裁量労働制が採用されている会社を探すと良いでしょう。

裁量労働制の社員側のデメリット

裁量労働制の社員側のデメリットは、以下の通りです。

  • 労働時間の際限がなくなる
  • 労働時間に対しての給与に不満が出やすい

それでは、それぞれについて、詳しく見ていきましょう。

労働時間の際限がなくなる

裁量労働制のデメリットとして問題となるのが、実際の労働時間とみなし労働時間の差が大きくなるという点です。

作業効率を良くし、生産性を高めることができれば、みなし労働時間よりも実際の労働時間を短縮することはできます。

しかし、成果を出すことを目的とするあまり、実際の労働時間がみなし労働時間を超えてしまう場合もあります。

実際の労働時間とみなし労働時間の差が大きくなればなるほど、長時間労働となってしまうため、注意が必要です。

労働時間に対しての給与に不満が出やすい

裁量労働制では、残業代という概念がありません。

そのため、実際の労働時間とみなし労働時間の差が大きくなればなるほど、労働時間に対しての給与に不満が出やすくなります

業務によっては仕方のない部分もありますが、作業の効率化を図ること、時間配分を調整するなどして、長時間労働を回避するような工夫が必要になります。

裁量労働制では割増賃金は発生しない?

裁量労働制は、原則として、時間外労働に対する割増賃金は発生しません。

これは、1日の勤務時間が8時間以上になったとしても、事前に定められた時間分だけの労働を行ったとみなすためです。

しかし、以下のような場合には、割増賃金が発生します。

  • 休日手当
  • 深夜手当
  • 時間外手当

それでは、それぞれについて、詳しく見ていきましょう。

休日手当

裁量労働制を導入していても、休日手当については、割増賃金を支払う義務が発生します。

ちなみに、休日手当とは、法定休日に労働をした場合に発生する割増賃金のことを指します。

また、法定外休日(所定休日)に労働をした場合に、週の所定労働時間が40時間を超えた場合にも割増賃金が発生します。

深夜手当

休日手当と同様、深夜手当についても、割増賃金を支払う義務が発生します。

ちなみに、深夜手当とは、夜22時から朝5時までの間に労働をした場合に発生する割増賃金のことを指します。

深夜手当の他に、休日手当または時間外手当が発生する場合には、それぞれで発生する割増賃金を合計した金額を手当として支給する必要があるので、注意しましょう。

時間外手当

裁量労働制を導入していても、法定労働時間(1日8時間、週40時間)が適用されます。

みなし労働時間が1日8時間以上となる場合、休憩時間を除く労働時間が8時間を超えた場合には、超えた分の割増賃金が発生します。

つまり、みなし労働時間が1日9時間の場合には、1時間が時間外労働になります。

この場合、1時間分の割増賃金を時間外手当として支給する必要があります。

裁量労働制はうまく機能させることが重要

裁量労働制を採用すれば、自分のペースで業務を遂行することができるほか、自分のライフスタイルに合わせて働くことができるようになります。

作業効率を良くし、生産性を高めることができれば、みなし労働時間よりも短い労働時間をこなすだけで、早く帰宅することもできます。

給与もみなし労働時間分はしっかりと支払われるため、労働者にとってのメリットは大きいといえます。

しかし、裁量労働制を採用するための手続きが複雑であるほか、長時間労働の恐れがあり、給与面での不満が出やすいというデメリットもあります。

上記を参考に、デメリットと向き合い、より良い成果を出すためにも、裁量労働制をうまく機能させることが重要です。

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