銀行も大きな額のお金を気軽に貸してくれる訳ではありません。
以下の審査のチェックポイントは自分たちの会社の資質を自分たちで見極めるうえでも参考になります。
金融機関が起業間もない会社に融資を行なう上で最も重要視するものは、「事業計画」です。金融機関は事業計画書から、どのくらいの資金が何のために必要か、返済財源はあるのかを検討します。事業計画書からその会社の収益性、成長性、実現の可能性を判断して審査結果を出すのです。
会社の価値を図る指針はいろいろありますが、融資をする際に金融機関が重視している指標は以下の3点です。
①収益性 ②財務の安定性 ③成長性
あなたの会社が利益を出せる会社かどうかということです。利益とは売上から売上を上げるために使った経費を差し引いたもののことです。中でも金融機関は「経常利益」を重視します。経常利益とは本業で稼いだ利益(営業利益)から、営業外収益を加え、さらに金融機関に支払う利息等が含まれる営業外費用を差し引いた利益のことです。この経常利益が黒字であると、通常、収益性には問題が無いと判断されます。
…会社が安全かどうかは手元の現預金とすぐに払わなければならない支払いとのバランスで考えます。それを見る指標のひとつに自己資本比率というものがあります。自己資本比率は、実質自己資本を総資本で割って算出します。自己資本比率が30%以上あれば財務内容は健全であるとみなされます。
しかし金融機関は、貸借対照表に隠れている不良資産にも目をつけて、実質自己資本という考え方で安全性を見極めています。例えば、売掛金の中に回収不能な手形があったり、棚卸し資産の中のデットストック(不良在庫品)のような、不良資産を資産から外して考えるのです。こういった不良資産を資産から差し引き、代表者借入、不動産担保提供額を加えた実質自己資本で安全性を見ている金融機関がほとんどです。よって実質自己資本比率が高ければ、安全性に懸念はないと判断されることになります。
自己資本比率 = 自己資本 ÷ 総資本
また、手元資金が潤沢にあるかどうかも安全性の指標として用いられています。「流動比率」「当座比率」は自転車操業をしていないかを図る指標に使われています。一般的に流動比率は200%以上あると健全だと言われています。当座比率が100%を下回っている会社は、支払いが追いつかず、運転資金が不足している状況だと想像できます。金融機関にとってはこれらの比率は高いに越したことはありません。
流動比率 = 流動資産 ÷ 流動負債
当座比率 = (現預金+売掛債権+有価証券) ÷流動負債
しかし、経営者視点で考えたとき、流動比率や当座比率が大きいと言うことは、余剰資金を次のビジネスに投資できない、将来性の乏しい会社ということになります。
一方、儲かってないのに会社にお金があると言う場合もあります。たとえば、設備を売却したとか、体力以上に借入をしたとか、前月より売上が減少したときも、一般的に手元資金は潤沢となります。いずれにしても会社は非常に危険な兆候ですが最も危険なのは次のような状況のときです。手元資金に余裕があるために、会社が危険な状況にあることに気づいていない。
特に危険なのは金融機関に体力以上の融資を受けている場合です。債過多となると、毎月の返済資金の捻出が困難となるだけではなく、資金が本当に必要となったときに融資を受けることができません。
金融機関からの借入状況から財務の安全性を見る指標に「有利子負債依存度」があります。体力以上に借入をしていると、この割合が高くなります。毎月の返済が滞り、3ヶ月以上の延滞状況となると、保証協会付借入の場合、金融機関は保証協会に代位弁済を依頼します。そうなってしまうと、会社の信用は著しく低くなり、新たな借入は当面出来なくなります。
有利子負債依存度 = 有利子残高 ÷ 総資
…今後企業が発展していく可能性があるかどうかというのが成長性です。金融機関は売上高と会社の実力を示す経常利益の伸び率に注目します。いずれもプラスが望ましいのですが、売上高伸び率がマイナスでも、業態が変わったなどの理由で、経常利益伸び率がプラスになっていれば問題ありません。
売上高伸び率 = (当期売上―前期売上) ÷ 前期売上
経常利益伸び率 = (当期経常利益―前期経常利益) ÷ 前期経常利益
創業計画は予定にすぎないため、必ず計画通りに行くという保証はありません。そこで金融機関が次に判断材料とするのは、社長や従業員の性格を把握することが、会社の実態把握には不可欠だと考えています。
中小企業は株主と経営者が同一の場合が多いことから、社長の資質や考え方が事業の勝敗に大きな影響をおよぼします。そこで金融機関は、社長の経営能力はもちろん、気質や性格、年齢や健康状態、社長になる前の経歴、家族構成など多種多様な側面から、社長の人間性を把握しようと考えます。
金融機関が考える素晴らしい経営者とは、信念を持って会社経営を行い、従業員を管理するマネジメント能力があり、戦略的に将来のビジョンを描ける人物です。
会社の規模が大きくなると、社長一人の力では会社経営は行なえません。経営者を支える役員の構成や、経営陣の各能力、役員としての資質が見られます。同族というだけで実力はないが、役員になっている人はいないか、役員間の対立はないか、業績不振の立て直しのため親会社から役員が送り込まれていないかなど、将来、あなたの会社の業績に悪影響を及ぼす要素がないかチェックするのです。
大株主と社長一族の間に内輪もめがないか、株主間に相続の争いはないかなど、会社の業績にマイナスになる要素がないか注目されます。特に、オーナー以外の法人株主に対して重大な関心を寄せてきます。上場企業などの大手の企業が株式の一部を保有していれば、それだけ会社の信用は高まります。
一方で、金融機関はあなたの会社に貸出した融資で、他社の赤字を補填することを嫌います。法人株主がいる場合は、破綻しそうな親会社が資金調達のために子会社を作ったのではないか、法人株主はいなくても、株主やその親族が別会社を持っているのではないか、その別会社が資金難に陥っていないかという目線で見られているのです。
少しでも規模が大きくなれば、実際に営業活動を行なっていく従業員を雇うことになります。従業員が活き活きと働いているか、能力の高い人材がそろっているか、適材適所に必要な人材が配置されているか、社員全員がモチベーション高く働いているか、職場に活気はあるか、電話対応に問題はないかといった点で評価されます。
求められる社長像
一人のずば抜けた能力よりも、組織全体として強みをいかにして発揮させるのかが重要です。組織として固有の競争力をつけていくことで、競合他社に負けることなく、企業を維持していくのです。その企業が固有に持っている有形無形の資源を組織として活用する能力である組織能力を高めることが重要です。外部からわかりにくい、裏の競争力である長年かけて積み上げた組織全体が持つ競争力が、独自の強みとして威力を発揮するのです。
いっぱい項目がありましたが、会社のこれからのあり方を考えるうえでも参考になったのではないでしょうか?