【事例02】種類株式について知らなかった

リサイクルショップを開業しようと思っている者です。初期投資に1000万円近くかかるので、自己資金(400万円)ではまかなえず、親戚や知り合いに出資してほしいと声をかけました。数人が出資してくれることになり、そのうち一人の親戚が500万円の出資をすると言っています。「経営には口出ししないから安心して」と言うのですが、いつ気が変わるかわかりませんし、心配です。500万円の出資は、喉から手が出るほど欲しいのです。でも、断ろうと思います。

失敗のポイント
種類株式について知らなかったので、経営権確保のために出資を断ろうとしてしまいました。
正しい対応
「議決権制限株式」の発行を検討します。会社法改正により、中小企業にとって種類株式の活用方法が大幅に広がりました。使い分けたり組み合わせたりすることで、さまざまな経営上の効果を得ることができますので、知っておきましょう。

【解説】

株式が分散して、多くの人が株主になると、経営権が希薄化してしまいます。また、「株主総会における議決権」は株主の基本的な権利であり、普通株式には1株に1つずつ、平等に議決権が付されています。多くの株を持つほど、経営に口出しができるわけです。
 そこで、経営の安定化をはかるために種類株式の発行を検討することになります。
 種類株式とは、配当や議決権などの点で普通株式とは異なった定めをしている株式のことです。2006年の会社法改正で、「種類株式制度」の活用方法が広がりました。
 現在発行可能な種類株式は次の9つです。

1.剰余金の配当に関する優先株式

 会社が株主に配当する剰余金の金額や順位について、普通株式よりも優先権を持つ株式

2.残余財産の分配に関する優先株式

 
 会社が清算したときに、残余財産の分配を受ける金額や順位について、普通株式よりも優先権を持つ株式

3.議決権制限株式

 株主総会の全部または一部について、議決権を行使できない株式

4.譲渡制限株式

 株式を譲渡する場合に、発行会社の承認を必要とする株式

5.取得請求権付株式

 株主が発行会社に株式を買い取ることを請求できる株式

6.取得条項付株式

 予め定めた一定の事由が生じた場合に、発行会社がその株式を強制的に取得することができる株式

7.全部取得条項付株式

 2種類以上の株式を発行する会社が、株主総会の特別決議によって、その株式の全部を強制的に取得することができる株式

8.拒否権付株式(黄金株)

 一定の事項について特定の株主に拒否権を付与する株式。この株主が同意しない限り、その事項は決定することができないので「黄金株」と呼ばれ、会社を防衛するための切り札として使われることがある

9.選解任株式

 取締役や監査役の選任・解任について議決権を有する株式

 このうち、「議決権制限株式」を活用すれば、少ない自社株でも安定議決権を確保することができます。以前は、発行済株式総数の2分の1までという制限がありましたが、会社法改正によって無制限にこの「議決権制限株式」を発行できるようになりました。
 今回のケースでは、この「議決権制限株式」を発行すれば、心配はなくなりそうです。
 種類株式を発行するには、各種類株式の発行可能総数と内容について定款で定めます。「議決権制限株式」の場合、

・議決権を行使することができる事項
・議決権の行使の条件を定めるときはその条件

 を定款に定めます。まったく議決権のない、いわゆる「無議決権株式」の発行も可能です。

[定款記載例]
(A種類株式)
第〇条 A種類株式を有する株主は、株主総会において決議すべきすべての議案につき、議決権を有しないものとする。
マリオ教授

株式と一言で言ってもこんなに種類がありますね。きちんと理解しておきましょう。

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