所定労働日数とは、就業規則や労働契約に定められている労働日数のことをいいます。
しかし、所定労働日数はなぜ定める必要があるものなのでしょうか?
それは、有給休暇の付与日数や割増賃金に大きく影響するからです。
所定労働日数の計算方法は定められていますが、正しく計算するためには、「休日」と「休暇」の違いを理解しておく必要があります。
また、雇用形態によって、所定労働日数の扱い方も異なるため、その点についても正しく理解しておく必要があります。
ここでは、所定労働日数の計算方法や、雇用形態による扱い方の違いについて、詳しく解説していきたいと思います。
目次
所定労働日数とは、社員が労働する必要のある総日数のことをいいます。
所定労働日数には、「年間所定労働日数」と「月間所定労働日数」、「月平均所定労働日数」があります。
所定労働日数の計算方法は下記で詳しく解説しますが、そもそも、所定労働日数はなぜ決める必要があるのでしょうか?
その根拠には、以下のようなものがあります。
それでは、それぞれについて、詳しく見ていきましょう。
有給休暇が付与されるのは、出勤している日数が所定労働日数の8割以上である労働者が対象になります。
また、実際に付与される有給休暇の日数は、所定労働日数によって変化します。
所定労働日数を決めていなかった場合には、有給休暇を付与するための条件を満たしているかが判断できず、有給休暇の付与日数を決めることもできません。
しかし、週5以上の勤務の労働者については、有給休暇の日数が定められています。
勤続年数 | 半年 | 1年半 | 2年半 | 3年半 | 4年半 | 5年半 | 6年半以上 |
付与日数 | 10日 | 11日 | 12日 | 14日 | 16日 | 18日 | 20日 |
上記のように、最初の6ヶ月が経過すると「10日」、その1年後には「11日」といったように、勤続年数の増加に伴って、有給休暇の日数も増加します。
そのため、所定労働日数が決まっていなかったとしても、そこまで影響はないかもしれません。
一方、週の所定労働日数が4日以下かつ週の所定労働時間が30時間未満の場合には、有給休暇の付与日数は、年間所定労働日数に応じて細かく決められています。
この場合には、所定労働日数を決めていないと、有給休暇の付与日数を正しく求められない可能性が高くなるので、注意が必要です。
労働者に時間外労働または休日労働、深夜労働をさせた場合には、労働基準法により、割増賃金の支払い義務が定められています。
割増賃金の計算方法は、以下の通りです。
上記のように、割増賃金を計算するためには、「1時間当たりの賃金」を求める必要があります。
「1時間当たりの賃金」を計算するためには、月平均所定労働時間を求める必要があります。
1ヶ月の平均所定労働時間を計算するためには、年間所定労働日数が必要になります。
つまり、割増賃金を計算するためには、所定労働日数が決まっていることが大前提です。
割増賃金を正しく計算することができないと、賃金不払いとなり、労働者とのトラブルが起こってしまう可能性が高くなるため、所定労働日数は決めておくことが非常に重要です。
ここでは、所定労働日数の計算方法などについて、詳しく解説していきたいと思います。
所定労働日数の計算方法について、詳しく見ていきましょう。
所定労働日数を計算する時の注意点は、休日・休暇の数え方を理解することが重要です。
休日には、「法定休日」と「法定外休日」がありますが、就業規則上では「労働する義務がない日」として定められます。
つまり、年間休日に該当するため、所定労働日数には含まれません。
一方、休暇には、「法定休暇」と「法定外休暇」があります。
法定休暇とは、日数や取得条件が法律で定められている休暇のことであり、以下のようなものがあります。
法定外休暇とは、企業が任意で定める休暇のことであり、以下のようなものがあります。
どちらの休暇においても、就業規則上では「労働する義務が免除されている日」として定められています。
つまり、年間休日には該当しないため、休暇は所定労働日数に含まれます。
所定労働日数に含まれるか含まれないかは、休日であるか休暇であるかによって異なります。
年間休日を数え間違えてしまうと、所定労働日数の計算に影響が出るため、違いを正しく理解しておくことが重要です。
年間所定労働日数の計算式は、以下のようになります。
年間所定労働日数は、1年間の暦日数から年間休日を引くことで求めることができます。
1年間の暦日数は365日ですが、うるう年である場合には366日になります。
また、年間休日についても、土日祝日の位置によって休日数は変わります。
このように、1年間の暦日数や年間休日が毎年異なるため、必ず計算しましょう。
月平均所定労働日数の計算式は、以下のようになります。
月平均所定労働日数は、年間所定労働日数を12ヶ月で割ることで求めることができます。
所定労働日数には、法的な上限は定められていません。
ただし、法定休日には、「毎週少なくとも一回の休日を与えなければならない」という定めがあります。
1年間だと52週間になるため、365日のうち52日が法定休日だと定めると、313日(うるう年だと314日)が所定労働日数となります。
しかし、労働基準法で定められた労働時間を踏まえると、年間休日は105日が最低日数となるため、これでは半分程度の休日しかありません。
年間休日が少なすぎると、労働者の心身の不調につながるほか、離職率が急激に増加したり、最悪の場合には過労死の原因になる可能性も大いにあります。
それを避けるためにも、年間休日を適度に設けて、労働者にとって無理のない所定労働日数を決めることが重要です。
雇用形態が異なる場合の所定労働日数の扱い方について、ご紹介します。
それでは、それぞれについて、詳しく見ていきましょう。
アルバイト・パートの場合の所定労働日数は、正社員と同様の基準が適用されます。
ただし、有給休暇の付与日数を計算する場合には、週の所定労働日数によって、有給休暇の付与日数の計算方法が異なります。
具体的な計算方法は上述していますが、週の所定労働日数が5日以上または4日以下かによって計算方法が異なるので、注意しましょう。
派遣社員の場合の所定労働日数は、正社員と同様の基準が適用されます。
有給休暇の付与日数についても、パート・アルバイトの場合と同様、週の所定労働日数によって、計算方法が異なります。
週の所定労働日数に従って、有給休暇の付与日数を計算しましょう。
会社の役員・管理職の場合は、労働基準法の適用から除外されるため、所定労働日数には制限がないのが一般的です。
具体的に、労働基準法の適用から除外される立場とは、以下の通りです。
ただし、労働性が認められる兼務役員である場合または労働基準法上の管理監督者に該当しない場合には、就業規則が必要になります。
つまり、労働基準法により、正社員と同様の基準が適用されます。
この場合には、上述した通り、週の所定労働日数に従って、有給休暇の付与日数を計算しましょう。
所定労働日数は、有給休暇の付与日数や割増賃金の計算には必要不可欠です。
所定労働日数を決めていないと、有給休暇の付与日数が決められなかったり、割増賃金の計算ができないといったデメリットがあります。
また、所定労働日数の数え方や計算方法を間違えてしまうと、賃金の不足や過払いが発生する可能性があります。
労働者とのトラブルにつながる可能性も大いにあり得るので、上記を参考に、所定労働日数を適切に決めておくことが非常に重要です。