もしも、会社を退職したとなると、お金の面での不安というのは大きいですよね。
しかし、そのような場合でも、雇用保険の失業給付というものが受給できるということは、みなさん、ご存じかと思います。
この雇用保険の受給資格ですが、実は、退職した理由によって異なるのです。
退職理由が、自己都合退職なのか会社都合退職なのかによって、失業給付の受給条件や給付開始日が異なるのです。
そこで、ここでは、雇用保険制度の一つである失業給付の受給資格の、自己都合退職と会社都合退職の場合の違いについて、くわしく見ていきたいと思います。
目次
雇用保険には、失業給付以外にも、さまざまな受給などが受けられる制度があります。
その中でも、失業給付とは、一般的に雇用保険の被保険者が、失業した際に受給できる手当のことをいいます。
失業給付は、さまざまな理由で失業した人が、生活の心配をすることなく再就職に向けた活動ができるように支給されるものです。
それでは、そもそも、この雇用保険の失業給付の受給資格とは、どのようなものなのでしょうか。
失業給付の受給資格は、以下の条件を満たしていることが前提となります。
それぞれについて、くわしく見ていきたいと思います。
就職しようとする積極的な意思があり、いつでも就職できる能力があるにもかかわらず、失業状態にある必要があります。
就職する能力があることが要件なので、病気や怪我、妊娠などのために、すぐに就職できないようなときは給付の対象にはなりません。
また、失業状態にある必要があるので、就業中に次の転職先が決定した場合には、失業給付を受給することはできません。
すでに自営業を始めている場合や、役員に就任している場合にも、失業給付を受給することができないので注意が必要です。
離職日以前に、一定期間、雇用保険に被保険者として加入していたことが必要となります。
これは、失業給付の受給のために、転職を繰り返すといった不正受給を防ぐための要件となります。
この必要な雇用保険の被保険者期間は、自己都合退職なのか、会社都合退職なのか、退職理由によって異なります。
それでは、失業給付の受給は、どのように行われるのでしょうか。
流れで以下となります。
通常は、退職後2週間ほどで、会社から、離職票が送付されます。
退職から2週間ほど経過しても離職票が届かない場合は、会社に問い合わせてみるのが良いでしょう。
居住地の管轄のハローワークで求職申し込みを行い、離職票など必要書類を提出して受給資格の確認を受けます。
その際に、「雇用保険受給資格者のしおり」というものが渡されます。
指定された日時に出席します。
雇用保険受給資格者のしおり・印鑑・筆記用具等が必要となります。
このときに、「雇用保険受給資格者証」「失業認定申告書」が渡され、第一回目の「失業認定日」が伝えられます。
初回説明会で伝えられた失業認定日に、ハローワークに行きます。
その後は、4週間に1回、失業認定日にハローワークに行きます。
失業の認定が行われた日から、通常5営業日で、指定した金融機関の預金口座に基本手当が振り込まれます。
受給額や受給期間は、年齢や条件によって異なります。
それでは、失業給付の受給資格について、自己都合退職の場合と会社都合退職の場合の違いについて見ていきたいと思います。
自己都合退職の場合、離職日から以前の2年間で、雇用保険の被保険者期間が通算して12ヶ月以上あることが条件となります。
給付開始までは、受給資格決定日から7日間の「待機期間」があります。
そして、7日間の待機期間が明けてから、さらに3ヶ月の「給付制限」が設けられており、その期間が明けてからの給付となります。
また、自己都合退職の場合は、給付期間は、被保険者である期間に応じて、90日~150日となっています。
被保険者期間 | |||
10年未満 | 10年以上20年未満 | 20年以上 | |
65歳未満 | 90日 | 120日 | 150日 |
会社都合退職の場合は、離職日から以前の1年間で、雇用保険の被保険者期間が通算して6カ月以上あることが条件となります。
会社都合退職の場合は、「特定受給資格者」というものに該当し、7日間の待機期間が明けた翌日から失業給付が開始されます。
給付期間については、年齢や被保険者期間に応じて、90日~330日となっています。
被保険者期間 | |||||
1年未満 | 1年以上 5年未満 |
5年以上 10年未満 |
10年以上 20年未満 |
20年以上 | |
30歳未満 | 90日 | 90日 | 120日 | 180日 | – |
30歳以上35歳未満 | 90日 | 120日 | 180日 | 210日 | 240日 |
35歳以上45歳未満 | 90日 | 150日 | 180日 | 240日 | 270日 |
45歳以上60歳未満 | 90日 | 180日 | 240日 | 270日 | 330日 |
60歳以上65歳未満 | 90日 | 150日 | 180日 | 210日 | 240日 |
退職理由以外にも、雇用保険の被保険者期間や離職時の年齢によっても給付期間に違いがありますが、自己都合退職に比べて、会社都合退職の場合の受給資格の条件や期間にメリットがありますよね。
それでは、失業給付に関しては、会社都合退職のほうが自己都合退職よりもメリットがあるようですが、どのような場合に、会社都合退職になるのでしょうか。
失業給付には、自己都合退職の場合より、会社都合退職の場合のほうがメリットがありそうですが、どのような場合に、会社都合退職になるのかについて、見ていきたいと思います。
基本的には、大半の退職が自己都合退職となります。
転居・結婚・介護・病気療養のための退職はもちろんですが、自分が望む仕事内容・待遇などを求めて転職する場合も、自己都合退職となります。
これらに対し、会社都合退職に該当するのは、以下のような場合となります。
上記のような場合には、会社都合の退職となります。
しかし、退職の際に、会社側が、会社都合退職として処理してくれれば良いのですが、会社側は、会社都合退職にしたくないという場合があります。
会社側が会社都合退職にしたがらない理由とは、会社が、助成金を受け取れなくなってしまうためです。
対象となる助成金には以下のようなものがあります。
では、本来、会社都合退職なのに、自己都合退職にさせられてしまった場合は、会社都合退職は認められないのでしょうか。
雇用保険の受給資格が変わってきてしまうので、本来、会社都合退職なのであれば、会社都合退職を認めてもらいたいですよね。
退職時に会社側に自己都合退職とされていた場合でも、のちにハローワークで会社都合退職だと認められるケースもあります。
以下のような場合は会社都合退職に変更することが可能です。
ただし、自己都合退職を会社都合退職に変更する場合には、証拠となる資料がない場合には難しいです。
そのため、上記の例であれば、タイムカードのコピー、給与明細、雇用契約書、セクハラ・パワハラの証拠の音声などがあると良いでしょう。
会社都合退職の場合の方が失業給付の給付開始日も早く、給付期間の長さや給付額の多さなどを比較しても、自己都合退職よりも失業給付にメリットがあるといえるでしょう。
そのため、退職理由が倒産やリストラなどの会社都合であるなら、ハローワークに提出する離職票の退職理由に「会社都合」と記載してもらうことが重要です。
しかし、会社から、「会社都合ではなく自己都合退職にしてほしい」と言われる場合も少なくありません。
このような場合には、会社から以下のように言われます。
このように、自己都合退職にするように促されたとしても、自己都合退職にされるのが嫌だという意思があるのであれば、私たちにはそれを断る権利があります。
自分にメリットのあるように失業給付を受給することで、前向きに再就職活動ができるようにしたいですね。
会社都合退職のデメリットとしては、履歴書の退職理由に、会社都合退職と書く必要があるということです。
倒産など、自分自身による理由ではない場合は良いですが、解雇などといった会社都合での退職ということが、経歴として残ってしまいます。
そのため、今後、転職活動を行っていくのであれば、採用面接の際に、会社都合退職のことと、その内容について、質問される可能性が高いということを理解しておく必要があります。
上記で見てきたように、自己都合退職よりも、会社都合退職の場合のほうが、雇用保険の失業給付の受給においては、メリットがあるのではないでしょうか。
しかし、会社都合退職の場合でも、デメリットがないわけではありません。
自己都合退職とされたものを、会社都合退職へと退職理由を変更する必要がある場合にも、そのあたりのことをよく考える必要があります。
ただし、本来、もらえるものをもらうことや、受けられるメリットを受けることは、権利となります。