雇用保険とは?わかりやすく解説!給付の種類・保険料率・加入要件は
普段、生活している中において、雇用保険という言葉を耳にすることはあるかと思います。
しかし、「雇用保険とは何かをわかりやすく説明してください」となると、少し難しいですよね^^;
イメージする人が多いのは、以下のような内容ではないでしょうか。
たしかに、主な内容はその通りかもしれません。
しかし、実は、雇用保険というのは、失業給付以外にも、給付されるものなどいろいろな種類があります。
このように、雇用保険にはいろいろな種類があることは、あまり知られていないのではないでしょうか。
そこで、ここでは、雇用保険とは何かをわかりやすく解説し、給付の種類や保険料率、そして加入要件について、くわしく見ていきたいと思います。
目次
雇用保険とは?雇用保険の加入要件・保険料率について
それでは、まず、雇用保険とはどのようなものなのかという概要や、加入要件・保険料率について見ていきたいと思います。
雇用保険とはどのような制度?
雇用保険とは、労働者が職を失った場合や雇用の継続が困難になったときに、生活や雇用の安定を図るために必要な給付を行うことを目的としています。
労働者が職を失ったときに、雇用保険によって、生活を支援や再就職の支援が行われるということをご存じの方も多いかもしれません。
しかし、雇用保険の役割はそれだけではありません。
育児や介護などで休業しなければならない場合にも、給付金を受けとることができます。
また、定年再雇用などで賃金が減った場合などにも継続して就労できるように給付を受けることが可能となります。
このように、雇用保険には、失業時以外にも、様々な社会保険としての役割を持っているのです。
それでは、この雇用保険ですが、会社などで働いている全ての人が加入することになるのでしょうか。
続いては、雇用保険の適用事業者や加入要件などについてみていきたいと思います。
雇用保険の適用事業者は?
労働者を一人でも雇用している事業者は、基本的に雇用保険の適用事業所となります。
しかし、ごく一部、雇用保険の適用事業とならない例外があります。
それは、個人経営の農林水産業で、雇用している労働者が常時5人未満の場合です。
このような場合には、雇用保険の適用は任意となり、雇用されている労働者の1/2以上が雇用保険への加入を希望する場合には、加入を希望していない労働者を含めた加入要件を満たす労働者全員分の加入する必要があります。
そして、雇用保険の適用事業所にて、雇用されている場合には、労働者は、雇用保険に加入する必要があります。
雇用保険に加入する労働者の要件は?
雇用保険の適用事業所で働く労働者は、雇用保険に加入する必要があります。
しかし、全ての労働者が加入するわけではなく、雇用保険の加入には以下のような条件があります。
- 1週間あたりの所定労働時間が20時間以上
- 31日以上継続して雇用されること
そのため、パートやアルバイトであったも、上記に該当する場合には適用されますので、正社員であることが要件ではないということに注意が必要です。
また、2017年度以前は、65歳以上の労働者は、雇用保険の加入対象外でしたが、現在は、65歳以上の高年齢被保険者も雇用保険の加入対象となっています。
雇用保険の保険料率は?
令和2年度の雇⽤保険料率は、令和元年度から変更はありません。
「雇⽤保険法等の⼀部を改正する法律案」が令和2年3⽉31日に国会で成⽴しまし、令和2年4⽉1⽇から令和3年3⽉31日までの雇用保険料率は以下の通りに決定しました。
事業種類毎の事業主・労働者の負担率 | |||
事業の種類 | ①労働者負担 | ②事業主負担 | ①+②の雇用保険料率 |
一般事業 | 3/1,000 | 6/1,000 | 9/1,000 |
※農林水産・清酒製造の事業 | 4/1,000 | 7/1,000 | 11/1,000 |
建設事業 | 4/1,000 | 8/1,000 | 12/1,000 |
※園芸サービス、⽜⾺の育成、酪農、養鶏、養豚、内⽔⾯養殖および特定の船員を雇用する
事業については一般の事業の率が適⽤されます。
事業の種類 | ①失業等給付の保険料率 | ②雇用保険二事業の保険料率 | ①+②事業主負担 |
一般事業 | 3/1,000 | 3/1,000 | 6/1,000 |
※農林水産・清酒製造の事業 | 4/1,000 | 3/1,000 | 7/1,000 |
建設事業 | 4/1,000 | 4/1,000 | 8/1,000 |
雇用保険料率は、年度によって改定される可能性があります。
そのため、最新のものを参考にするようにご注意ください。
雇用保険料率の労働者負担と事業主負担割合は?
雇用保険料の負担は、労働者と事業主では異なるのですが、労働者が負担している分は、失業給付の保険料率のみとなっています。
それに対して、事業主の負担は、失業給付の保険料率と雇用保険二事業の保険料率を合わせたものとなっています。
この雇用保険二事業とは、雇用安定事業、能力開発事業があり、その内容は以下となります。
雇用安定事業
・事業主に対する助成金
・中高年齢者等再就職の緊要度が高い求職者に対する再就職支援
・若者や子育て女性に対する就労支援
能力開発事業
・在職者や離職者に対する訓練
・事業主が行う教育訓練への支援
・ジョブ・カード制度の構築
また、雇用保険料率は、事業の種類によって異なるだけでなく、労働者と事業主の負担も異なるのが特徴となります。
雇用保険によって給付される種類にはどのようなものが?
それでは、労働者が雇用保険料を納めることで、給付されるものにはどのような種類のものがあるのかについて見ていきたいと思います。
大きく分けると、求職者給付・就業促進給付・教育訓練給付・雇用継続給付に4つに分かれますが、それぞれの中にも種類がありますので、以下にて、くわしく見ていきたいと思います。
求職者給付
求職者給付とは、雇用保険被保険者が、失業した場合に、就職活動をする間の生活安定を目的として給付されるものです。
一般の被保険者が失業した場合には、基本手当・技能習得手当・寄宿手当・傷病手当が支給されまる。
高年齢継続被保険者が失業した場合には、高年齢求職者給付金、短期雇用特例被保険者の場合は、特例一時金、日雇労働被保険者の場合には、日雇労働求職者給付金が支給されます。
基本手当(失業保険)
一番耳なじみのある失業保険です。仕事を辞めた際に給付されるものです。
技能習得手当
技能習得手当とは、ハローワークで公共職業訓練を受ける際に、失業保険に加えて支給される手当てです。
受講すると貰える受講手当と訓練を受けるための交通費として貰える通所手当があります。
・受講手当
受講手当とは、技能習得手当の1つで、公共職業訓練等の受講日数に応じて支給されます。
・通所手当
通諸手当とは、公共職業訓練に行くときの交通費として支給されます。
寄宿手当
寄宿手当とは、失業期間中に公共職業訓練を受講する際に、同居の配偶者や親族と別居せざるを得ないときに、宿泊費として支給されます。
家族と別居して寄宿していた日数分を計算して支給されます。
傷病手当
傷病手当とは、失業保険の受給資格者が疾病や負傷により、求職活動をできない期間が15日以上になった場合に受給できます。
15日未満の場合は、通常通り失業保険を支給されます。
高年齢求職者給付金
高年齢求職者給付金とは、65歳以上の人が離職したけれど、労働の意志と能力があるにも関わらず就労できない場合に受け取れる給付金です。
失業保険とは違って、申請後に一括で支給されます。
特例一時金
特例一時金は、短期雇用特例被保険者に失業保険の代わりに支給されるものです。
期間が定められていて、雇用期間が1年未満である仕事をする人は、失業保険の「離職日以前の2年間に被保険者期間が12カ月以上ある」という要件に該当せず、短期雇用特例被保険者となります。
日雇労働者給付金
日雇労働者給付金とは、日雇労働者が失業したときに受給できる給付金です。
事前にハローワークに雇用保険日雇労働被保険者資格取得届と住民票のコピーを提出して、日雇労働者被保険者手帳を受け取っている必要があります。
就業促進給付
就職促進給付とは、失業者が再就職することを支援するための制度となります。
就業促進手当
就業促進手当とは、失業保険を受給している間に就職が決まり、受給期間が規定の日数分が残っている人を対象とする給付金です。その中にも以下の4種類があります。
・再就職手当
再就職手当とは、失業保険の受給期間中に就職したことで、失業保険の給付日数が残ったときに受け取れる手当てです。再就職手当の金額は、給付日数が2/3以上残ってる場合と1/3以上残っている場合で異なります。
・就業促進定着手当
就業促進定着手当とは、再就職手当を受けた人が、その再就職先に6カ月以上雇用されて、その間の賃金が前の企業の賃金より低かったときに受け取れる手当てです。
・就業手当
就業手当とは、再就職手当の支給条件に当てはまらない人で、失業保険の給付日数が1/3以上残ったときに受け取れる手当てです。
・常用就職支度手当
常用就職支度手当とは、身体障害者、知的障害者、精神障害者、65歳以上の高年齢被保険者のような就職困難者が安定した職業に就いたときに受け取れる手当てです。
移転費
移転費とは、ハローワークが紹介した企業に就職したり、公共職業訓練を受けるために、引っ越しする必要がある場合に受け取れるものです。
求職活動支援費
・広域就職活動費
広域就職活動費とは、受給資格者が広域にわたって、就職活動をするときに交通費や宿泊費が支給されるものです。
・短期訓練受講費
短期訓練受講費とは、雇用保険の受給資格者が再就職のために受けた、すでに支払った1カ月未満の教育訓練費を受け取ることができるものです。
・求職活動関係役務利用費
求職活動関係役務利用費とは、企業説明会、筆記試験、面接などの求職活動、もしくは公的職業訓練の受講のために、保育サービスに子供を預けたときに受け取れるものです。
教育訓練給付
教育訓練給付とは、一定の条件を満たす一般被保険者、または、一般被保険者でなくなったときから1年以内の方が厚生労働大臣の指定する教育訓練を受講し、終了した場合に教育訓練給付金が支給される制度となります。
教育訓練給付金
教育訓練給付金とは、労働者のキャリアと能力開発を支援し、雇用の安定や就職の促進を目的とした給付金です。
・一般教育訓練給付金
一般教育訓練給付金とは、雇用保険の被保険者期間が3年以上ある在職者や離職者が、厚生労働大臣が指定する一般教育訓練を修了したときに受け取れるものです。
・専門実践教育訓練給付金
専門実践教育訓練給付金とは、雇用保険の被保険者期間が3年以上ある在職者や離職者が、厚生労働大臣が指定する専門実践教育訓練を受講、もしくは修了したときに受け取れるものです。
教育訓練支援給付金とは、専門実践教育訓練給付金を受け取る45歳未満の離職者で、基本手当の支給条件を満たさず、基本手当が受け取れない人が対象となるものです。
雇用継続給付
雇用継続給付とは、再雇用などで賃金が減った場合や、育児や介護等の理由で雇用の継続が難しくなった場合に給付金が支給される制度です。
高年齢雇用継続給付
高年齢雇用継続給付とは、60歳以上65歳未満の人で、60歳時点と比べて賃金が75%未満に下がった人を対象とする給付金となります。
・高年齢雇用継続基本給付金
高年齢雇用継続基本給付金とは、雇用保険の被保険者期間が5年以上あり、60歳時点と比べて賃金が75%未満に下がったときに受け取れます。
・高齢者再就職給付金
高齢者再就職給付金とは、雇用保険の被保険者期間が5年以上ある60歳以上65歳未満の人が、再就職したときに受け取れるものです。
育児休業給付
育児休業給付とは、育児休業の際に、80%以上の賃金が支払われないときに受け取れる給付金です。給付期間は出産日、8週間の産休を経て、育休が開始したときから、子供が1歳になる前日までとなります。
介護休業給付
介護休業給付とは、介護休業で賃金が80%以上が支払われないときに受け取れる給付金となります。
職業訓練受講給付
職業訓練受講給付金
職業訓練受講給付金とは、雇用保険を受給できない人が職業訓練を受講するときに受け取れる給付金となります。交通費である通所手当や宿泊費である寄宿手当を受け取ることも可能です。
雇用保険の制度を知っているかどうかで損得が決まる?
雇用保険には、これだけたくさんの種類があることを知っている人は少ないのではないでしょうか。
仕事を辞めた際の、失業給付以外にも、受け取れる制度はたくさんあります。
働いている期間に給与から雇用保険として天引きされていた保険料なので、制度を利用し、受け取ること自体は、何も悪いことではありません。
知らなければ損をし、知っていれば得をします。
制度を正しく知って、受け取れるものをしっかりと受け取りましょう♪