起業するうえで知っておくべき制度の一つとして、国からの「補助金」というものがあります。
ここではその概要と、受けるにあたってのポイントについて述べていきます。
補助金って何?
「補助金」とは、政府や地方自治体、外郭団体などが、一般市民や民間企業などに対して交付する金銭的な給付のことです。ある一定の政策的な意図を持っており、返済不要の資金です。企業だけではなく、民間団体、個人、自治体、個人なども交付を受けることができます。
政府には達成したい目標があり、補助金を交付すればその目的にあった事業に取り組む人が増えるため、国は補助金に力をいれています。また特定の事業を補助金の対象とすることで、その事業の拡大を後押しすると共に、国の政策目標を達成するのがねらいとなっています。
補助金の3ポイント
①それぞれの補助金ごとに目的と仕組みがあります。
・ 補助金は、国のさまざまな政策ごとに、いろいろなジャンルで募集されています。
・種類は3,000 を超えます。
・ それぞれの補助金の「目的・趣旨」といった特徴をつかんで自分の事業とマッチする補助金を見つけましょう。
②補助を受けられるのは事業全部または一部の費用。
・ ただし、必ずしもすべての経費が交付される訳ではありません。事前に募集要項等で補助対象となる経費・補助の割合・上限額などを確認しましょう。
③補助の有無やその額については審査があります。
・ 補助の有無・補助金額は「事前の審査」と「事後の検査」によって決定します。審査には「申請」が必要です。ポイントをわかりやすくまとめて申請しましょう 。
・ 補助金は後払い(精算払い)です。事業を実施した後に報告書等の必要書類を提出して検査を受けた後、はじめて受け取ることができます。
ネットなどもうまく活用して、是非調べてみましょう。
誰がもらえるの?
誰がもらえるの?
補助金には予算があるため、応募した会社の数が多ければ、選別され交付先が決まります。審査の過程を通過し選ばれた応募者が、補助金を受け取ることが出来るのです。審査はまず書類審査によってふるいわけられます。その後、優秀と思われる企業に対して面接が行なわれることもあります。補助金の応募期間は3週間から1ヶ月程度であり、補助金の種類は年間3,000 以上もあるため、自分の会社に適した補助金を見つけるのがなかなか大変です。
近年は役所出身者や有識者による専門コンサルタントも出てきていますので、相談するのもひとつでしょう。
どれくらいの期間でもらえるの?
どれくらいの期間でもらえるの?
補助事業に対する経費を支払った後でお金がもらえる後払いが多いため、受給するまでに時間がかかります。また事業に対して全額が補填されるわけではありません。そのため対象事業の経費を前払いするため、つなぎの資金を準備しておく必要があります。
あくまで「補助する」お金だということを忘れないようにしましょう。
補助金のしくみ
補助金のしくみ
補助金の多くは認定支援機関と一緒に取り組む事となっています。認定支援機関とは税理士・公認会計士・中小企業診断士・金融機関等の専門家の中から国から、相談窓口として認定された個人や会社のことです。
補助金受給までの流れ
補助金受給までの流れ
知る
インターネットで自分の事業に合った補助金の情報をさがします。
※中小企業庁サイト:「補助金等公募案内」ページなどを参照ください。
STEP.1
申請する
申請したい補助金を見つけたら募集要項・申請書をダウンロードし、必要な内容を記入して事務局に提出します。
※ 自身の事業が補助対象となるかについての確認、補助対象になる経費とならない経費の確認をチェックします。
STEP.2
決定する
選定結果を受け取り、補助金が交付される事業者に決定したら(採択されるといいます)「交付申請書」を事務局に提出します。
STEP.3
事業の実施
交付決定された内容で事業をスタート!
途中で実施状況について事務局のチェックを受けます。
※交付時の計画を、勝手に変更してはいけません。また補助金の対象となる経費については、領収書や証拠書類をすべて保管しておく必要があります。
STEP.4
補助金の交付
実施した事業の内容やかかった経費を報告します。
きちんと実施されたと確認されると補助を受けられる金額が確定し、補助金を受け取ることができます!
STEP.5
(終了後5年間)
補助金の対象となる領収書や証拠書類は、補助事業の終了後も5年間は保管しておく必要があります。この間に一定以上の収益が認められた場合は、補助金の額を上限として国に納付して頂くものもあります。
STEP.6
もらえる補助金の検討方法
補助金は支給されると非常に有難いものですが、頻繁にシステムが変わるので、事前にwebサイトで情報をアップデートすることをお勧めします。
中小企業庁のサイトは一番確かなので、まずこれをみましょう。
創業補助金の申請方法
創業補助金の申請方法
「創業促進補助金(通称:創業補助金)」とは新しい産業の創設や雇用を通じて地域を活性化しようとする人を応援するのが目的です。店舗や設備を借りるための費用、マーケティングに必要な経費、広告費、人件費、弁護士・弁理士などの専門家との顧問契約のための費用等、補助金の最高受給額が200 万円となっています。また補助率は補助対象経費の3分の2となっています。
後でがっかりしないように、補助金の最高受給額と補助率は少なくとも把握しておきましょう。
必要書類
創業補助金の申請をするうえで必要な書類はたくさんあります。
各ステップごとに順を追って確認しましょう。
必要書類
①申請
申請とは、事業者(みなさま)が、補助金を申し込むことです。補助金を希望する事業の内容・必要な費用・実施の効果についてまとめ、申請書という形で事務局に提出します。
提出書類は下記のとおりです。
提出書類
応募申請書/事業計画書/経費明細書/事業要請書
②採択時
採択とは、事務局が補助金の交付を受ける事業者を選ぶことです。
申請のあった全事業者に採択か不採択の結果を通知します。
受取書類は下記のとおりです。
受取書類
選定結果通知書/補助金交付規程/交付申請書
③交付時
補助金を受けることが決定した事業者が、必要な経費等を申請します。
それが事務局に受理され、交付決定通知書の記載内容で補助金が受けられる事業内容、費目と金額(概算)が決まります。
提出書類は下記のとおりです。
受取書類は下記のとおりです。
補助金交付決定後
実施した事業の内容やかかった経費を報告します。きちんと実施されたと確認されると補助を受けられる金額が確定し、補助金を受け取ることができます。
④実施時
補助事業者※が、申請した内容で事業を実施することです。途中、事業が問題なく進行しているかの、事務局による中間審査(監査)や状況報告などを行う場合があります。
提出書類は下記のとおりです。
⑤報告時
補助事業の実績について、どんなことをしたか、どういう効果があったかを写真や文章で報告する報告書を補助事業者が作成することです。また、
補助金の対象となる経費についての支払い実績のわかる領収書、契約書や証拠書類などのエビデンス(証憑)の用意も必要です。
提出書類は下記のとおりです。
⑥確定時
補助事業が適正に行われたと認められると補助金額が決まります。
補助事業者には補助金額確定通知が送られます。
受取書類は下記のとおりです。
⑦請求時
請求とは、補助事業者が、補助確定金額を事務局宛てに請求することです。
提出書類は下記のとおりです。
結構ありましたね。
「後で確認したら書類が足りない!」なんてことにはように書類の管理はきちんとしましょう。
助成金とは?
補助金に似たものとして助成金というものがあります。
もらえたら良いに越したことはないので、気になったら迷わず相談しましょう!
申請書 様式1
申請書は、補助金を受けるにあたって肝になる部分。
ここでは抑えるべきポイントについて書きます。
申請書 様式1
「行ないたい事業の核心は何なのか」をまとめることがポイントとなります。
①事業テーマ名
「テーマ名を見ただけで事業の内容がわかるように、30 字程度で記載」する。
業種名だけの平凡な名称はNGです。読む気を喚起するようなテーマ名で審査員をひきつけます。採用されると、記載したテーマが中小企業庁等のホームページで公表されることになります。
②事業計画の骨子
「事業テーマに記載した事業を実現するために何をどう行なうのか、イメージしやすいように100 字程度で記載」することがポイントとなります。
様式2の「事業内容」を要約する形で記入するといいでしょう。
やみくもにいっぱい書くのではなく、シンプルに分かりやすく伝えることを目標にしましょう。
申請書 様式2
申請書には、事業の必要性についてはもちろんのこと、それを行う人の熱意も伝わるようにかかなければなりません。
以下の項目を参考にしながら書きましょう。
申請書 様式2
「熱意をこめて書いた事業計画」が審査で重要なポイントとなります。
創業補助金は地域経済を活性化するために新しい事業を支援することが目的となっています。商品、サービスのセールスポイント、特徴は何なのか、既存の商品との違いは何なのかという点がわかりやすく記載できているかがポイントになります。特に、その地域におけるニーズに対して、既存の商品や事業者との異なる点はどんなことなのか、またどのような取り組みによって、ニーズの拡大を図っていくのかをアピールするのがいいでしょう。
①事業の具体的な内容
商品やサービスの特徴や強みを記載すると共に、ターゲットは誰か、どうやって取り組んでいくのかを具体的に書きます。
記載する際に、補助金の審査員にわかりやすいように、図、グラフ、画像を活用するのがいいでしょう。
事業の継続性も重要なポイントとなるので、具体的に記載する必要があります。原材料や商品の仕入計画・生産計画、価格の設定、販売計画等を細かく記載し、事業が継続的に続く理由を記載します。またその事業展開の体制をどのように構築していく予定なのかもあわせて記入します。
さらに事業を行なう上で想定されるリスクや問題点も具体的に記入し、それらの課題の解決方法を考えているかも記載しましょう。
②本事業の動機・きっかけおよび将来の展望
事業を通じて実現したい環境、将来的にはどのような可能性を実現したいと思っているのか、そのためにどのような準備をしてきたのか等を記載します。また、事業を始めようと思ったきっかけや背景、この事業を行なうのが自分でなければならない理由を書きます。
③本事業の知識、経験、人脈、熱意
職歴を書く際に事業の内容とつじつまが合うように、この事業を行なうための知識や経験をどのように積んできたのか記入します。また、これまでに構築した人脈でこの事業を展開する上で、どのような支援や協力を得ることができるのかについてもアピールするといいでしょう。
④本事業全体にかかる資金計画
交付決定日~事業完了予定日の間に必要と想定される全ての資金と、調達方法を記載します。まだ事業を始めていない場合は、準備期間の資金も加えて算出することもできます。
・ 必要資金は「設備資金」と「運転資金」の2つ
・ 設備資金とは…会社の土地・建物、敷金・保証金、建物の内外装工事、機械装置、工具、器具、営業車等。
・ 運転資金とは…設備資金以外の資金。例えば、人件費、店舗の賃借料、商品、材料の仕入れ、広告宣伝費、水道光熱費等です。
・ 調達方法とは…必要な資金をどうやって調達するかを、自己資金・金融機関からの借入金・親族からの借入金・売上金、補助金交付希望額に分けて記入します。
・ 補助金交付希望額相当額の手当方法とは…補助金が支払われるのは補助事業期間が終了したあとです。そのため、補助事業期間内に「補助金交付希望額」に相当する金額を、自己資金や借入金等の別の方法で用意する必要があります。
⑤事業スケジュール
実施時期(1年目、2年目…)の期間は個人事業主の場合は1~ 12 月、法人の場合は決算期で考えます。よって個人事業主なら開業した年、法人なら設立した年が1年目にあたります。会社の設立前に行なった取組みを1年目の取組みに記入してもかまいません。
今後実際に行なう予定の取組みについて、具体的に箇条書きにします。数年にわたって継続的に行なうものは、繰り返し記入しましょう。
記載内容例
事業開始前 | 市場調査や事業の検討、法人設立準備、事業場所の検討、人材募集、設
備の購入、内外装工事、広告の作成、ウェブサイト立上げ、PR活動等 |
事業開始後 | 販路開拓方法の検討、販売先との交渉、新規取引先への営業、次の事業
展開への準備等 |
⑥売上・利益等の計画
設立した月によっては初年度が12 ヶ月未満となる可能性もあります。1年目が終わっている場合は実績値を記入します。積算根拠の欄には、計算根拠を具体的に記入します。多数の商品を取り扱っている場合は、商品ごとの売上高、主要売上先、主要仕入先の情報も加えます。
⑦経費明細票
設備資金、運転資金の中から、補助対象となる経費を抽出して記入します。
今後の会社の方向性を考えるよいきっかけにもなるので、しっかり考えながら書きましょう。