就職先や転職先を探す時には、福利厚生が充実している会社に就きたいと考えるものです。
しかし、実際に福利厚生とは何なのかを説明できる人は少ないのではないでしょうか。
福利厚生とは、従業員の生活や健康を向上させることを目的とした制度になります。
社会保険である厚生年金や雇用保険なども福利厚生の一部になりますが、社会保険と福利厚生の違いはどのようなものなのでしょうか?
ここでは、福利厚生について、わかりやすく解説していきたいと思います。
また、制度の内容や種類、社会保険との違いについても、一緒に見ていきましょう。
目次
福利厚生という概念は、第二次世界大戦以前から生まれていました。
戦前では、労働者を確保する目的で、宿舎や食堂などの施設を用意するのが一般的でした。
戦後に高度経済成長期を迎えて、ライフスタイルが多様化するにつれて、寮の提供や住宅購入の支援など、サービスの内容が変化し始めます。
バブルが崩壊するまでは、多くの企業が福利厚生を自社内で整備していました。
しかし、バブルが崩壊して不景気になったことにより、保養施設・社宅の維持や、福利厚生に関する事務手続きを自社ですべて行うのが厳しくなりました。
そのため、福利厚生にかかる費用と事務手続きの負担などの軽減を目的とした外注化(アウトソーシング化)が進みました。
それが、現代になって、会社での負担軽減の目的だけではなく、「従業員の生活の質を向上させる」ことが求められるようになっています。
これは、終身雇用制度がなくなったことにより、優秀な人材を確保するためには、福利厚生を充実させることが重要だと考えられているからです。
それでは、現代での福利厚生の内容や種類、社会保険などの違いについて、詳しく見ていきたいと思います。
ここでは、福利厚生について、わかりやすく解説していきたいと思います。
福利厚生とは、従業員とその家族の生活や健康を向上させることを目的に、経営者側が設けた制度や施設、サービスなどの総称のことをいいます。
福利厚生には、以下のような種類があります。
それでは、それぞれについて、詳しく見ていきましょう。
法定福利厚生は、企業が従業員を雇用する際に、従業員の加入や費用負担が法律上で義務付けられている、社会保障制度のことをいいます。
具体的な法定福利厚生の内容については、以下の通りです。
雇用保険や健康保険、介護保険、厚生年金保険については、企業だけではなく、従業員にも費用を負担する義務があります。
労災保険や子ども・子育て拠出金については、企業が費用を全額負担する義務があります。
法定外福利厚生の中でも、自社で提供している福利厚生は、以下の通りです。
それでは、それぞれの項目について、詳しく見ていきましょう。
住宅手当・家賃補助は、持ち家のローン返済の一部、もしくは、家賃の一部を企業が負担する制度です。
住宅手当・家賃補助として負担する金額は企業によって異なりますが、月1~2万円程度を負担するのが一般的です。
また、企業によっては、引越し費用も住宅手当に含まれます。
通勤にかかる交通費を一部または全額負担する制度です。
定期券代の補助や、遠方手当などがこれに当たります。
従業員の心身の健康を守るために会社が負担する費用には、以下のようなものがあります。
主に、従業員のヘルスケアサポートを目的として、一部または全額負担する制度になります。
ライフサポートの福利厚生には、以下のようなものがあります。
項目 | 内容 | |
食費 | 食堂の運営、食事券等の補助 | お弁当の購入補助 |
被服 | 制服・作業着等の購入補助 | クリーニング代への補助 |
保険 | 団体長期所得補償保険(GLTD) | |
介護 | 時短勤務制度 | 介護相談会の開催 |
育児 | 事業所内託児施設の運営 | 保育施設の斡旋 |
財産形成 | 財形貯蓄制度 | 投資教育の提供 |
通勤 | 無料駐車場の用意 | 社員用バスの手配 |
休暇 | 介護休暇 | 育児休暇 |
これらの福利厚生は、ライフワークバランスの推進や少子高齢化対策という社会的視点でも注目を集めています。
「働き方改革」の実現のために、企業独自の制度を設けているところが多いのも特徴です。
慶弔関係の福利厚生には、以下のようなものがあります。
これらの項目は、企業から、お祝い事や弔事・不幸に対して支給される制度になります。
文化・体育・行事の福利厚生には、以下のようなものがあります。
文化・体育・行事については、社内イベントと福利厚生の区別がつきにくいですが、社内での運動会や部活動への補助金支給も、法定外福利厚生に含みます。
共済会とは、企業と従業員のそれぞれから資金を捻出し、財源を設立したものの中から、慶弔給付や福利厚生を提供する仕組みのことをいいます。
費用の負担方法は企業によって異なりますが、従業員の毎月の給料から天引きして費用を負担するのが一般的です。
法定外福利厚生の中でも、外部サービスが提供している福利厚生は、以下の通りです。
法定外福利厚生のうち、外部委託(アウトソーシング)による福利厚生サービスには、上記の他にも非常に多くの種類があります。
福利厚生サービスとして、主要なものは以下のものがあります。
それでは、それぞれについて、詳しく見ていきましょう。
専業福利厚生とは、福利厚生サービスを専業で展開している会社に外注することです。
パッケージサービスとは、定額料金で、従業員一人一人が自分の好みで提携しているサービスを利用できるスタイルのことをいいます。
個人利用よりも割安で、高いサービスを受けられるというメリットがありますが、福利厚生サービスは他社と同じ内容になるというデメリットがあります。
カフェテリアプランとは、従業員に補助金(ポイント)を支給し、補助金の範囲内でサービスを選択できるスタイルのことをいいます。
宿泊や旅行、育児・介護、スポーツジムなどの補助が用意されているため、従業員が自分のニーズに合わせて選択できるというメリットがあります。
ただし、従業員が用意した補助を利用しない場合には、コストに合わなくなる可能性があるというデメリットもあります。
それでは、福利厚生と社会保険の違いとは、一体何なのでしょうか?
福利厚生とは、従業員とその家族の生活や健康を向上させることを目的に、経営者側が設けた制度や施設、サービスなどの総称のことをいいます。
一方、社会保険とは、ケガや病気、失業、退職したときなど、国民の生活が不安定になってきた場合に国が支援してくれる制度のことをいいます。
つまり、福利厚生は従業員の生活や健康を向上させることを目的としているのに対して、社会保険は、従業員の生活や健康が不安定になった場合に支援することを目的としています。
福利厚生のうち、社会保険に該当するものは、以下の通りです。
これらの項目は、法定福利厚生のほとんどに該当するものになります。
福利厚生と社会保険の内容は似ていますが、本質的な目的は異なるので、それぞれの違いについてしっかりと理解しておきましょう。
福利厚生が一体どのような制度であるのかは、意外と知らない人が多いのが現状です。
しかし、福利厚生の内容をしっかりと理解しておくと、自分にとって最適なサービスが利用できる会社を選ぶことができます。
特に、法定外福利厚生については、会社によって受けられるサービスが異なります。
中には、会社独自のユニークなものがあったり、福利厚生サービスがたくさん用意されている会社もあります。
自分の生活および健康を充実させるためにも、上記を参考に、就職または転職をする場合には、福利厚生についてしっかりと確認しましょう。