有給休暇の取得は労働者の権利です。
しかし、そうはいっても、実際には、なかなか有給休暇を取得しづらいという人も多いのではないでしょうか(^^;
また、有給休暇が取得しやすい会社だったとしても、年度によっては、「仕事が忙しくて使えなかった」「今年は有給休暇をあまり取得していなかった」など、有給休暇の日数が残ってしまったまま、時間が過ぎてしまうこともあるかもしれません。
そういった場合に、残ってしまったままになっている有給休暇は、時間とともに消滅してしまうのでしょうか。
それとも、翌年度へと繰越すことができるのでしょうか。
そこで、ここでは、有給休暇の繰越制度について見ていきたいと思います。
また、未消化の分の有給休暇の繰越日数の上限や限度についても確認していきたいと思います。
目次
有給休暇とは、以下の条件を満たした労働者に付与されるものです。
そして、週所定労働日数が5日以上で、週所定労働時間が30時間以上の通常の労働者であれば、6ヶ月を経過した時点で、有給休暇は10日付与されます。
そして、そこから1年経過すると、さらに、11日付与されます。
そうすると、人によっては、有給休暇をあまり消化できずに、余らせてしまうということもあるかもしれません。
このような場合には、有給休暇は繰越すことができるのでしょうか。
労働基準法第39条では、有給休暇の時効は2年とされています。
そのため、付与されてから2年以内であれば、有給休暇は繰越すことができます。
それでは、有給休暇は無制限に繰り越すことができるのでしょうか。
有給休暇の時効は、付与された日から2年となります。
それまでは、前年度の未消化の分は翌年度へと繰越すことが可能です。
そうすると、2年間で相当な日数がたまってしまう可能性はないでしょうか。
有給休暇の繰越については、法律で上限が定められています。
繰越しできる有給休暇は20日が上限となっています。
つまり、時効は2年なので、繰越し後に使える有給休暇は、最大40日までとなります。
労働基準法では、勤続年数に応じて、付与される有給休暇の日数が定められています。
有給休暇が付与されるには、正社員・パート・アルバイトなどの雇用形態は関係ありません。
そして、所定労働日数が5日以上で、週所定労働時間が30時間以上の通常の労働者については、付与日数は以下となります。
継続勤務年数(年) | 0.5 | 1.5 | 2.5 | 3.5 | 4.5 | 5.5 | 6.5以上 |
付与日数(日) | 10 | 11 | 12 | 14 | 16 | 18 | 20 |
福利厚生が良い会社の場合には、会社のルールでこれよりも良い規定がある場合もありますが、6.5年以上勤めている場合には、最低でも、毎年20日が付与されるということになります。
以下で、6.5年以上勤めている人を例に、有給の繰越しについて見ていきたいと思います。
通常の労働者で、6.5年以上勤務している場合で、年度内に1日も有給休暇を消化しなかった場合には、翌年まで、有給休暇の20日分を繰越すことが可能です。
付与日数 | 昨年からの繰越し | 消化日数 | |
2020年 | 20日 | 20日 | 20日 |
2021年 | 20日 | 20日 | 20日 |
2022年 | 20日 | 20日 | 10日 |
2023年 | 20日 | 20日 |
この例の場合、2019年度の有給休暇を20日分残したまま、2020年度になると、繰り越した分20日+新たに20日分の有給休暇が付与されることになります。
2020年、2021年ともに、有給休暇を40日間使用できます。
万が一、20日間ずつしか消化しなかったとしても、消化するのは、基本的には、古い分からになるので、翌年には、20日間繰越し、また20日付与されるので、毎年40日使用できるということになります。
しかし、もし、2022年に10日しか消化しなければ、そのうちの10日は、時効で消滅してしまうので、2023年への繰越しは、20日だけなってしまうということになります。
法律の上では、繰越しが可能ではありますが、現実の課題としては、有給休暇を繰越しても消化しきれないことが多いという問題がありました。
上記の例を見てもわかるように、6.5年以上の勤務になった場合に、毎年、20日間の有給休暇が付与されることになります。
そのため、会社や労働環境によっては、消化するのが、困難な場合も多いでしょう。
そこで、法改正が行われ、有給休暇が年10日以上与えられる従業員のうち、付与日から1年間に有給休暇消化日数が5日未満の従業員に対しては、企業側から日にちを指定し、有給休暇を取得させることが義務付けられたのです。
それでも、有給休暇が消化しきれない場合というのもあるかもしれません。
そのような場合にはどうすれば良いでしょうか。
有給休暇の買い取りというのを聞いたことのある方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、法律では、以下の3つの例外を除いて、原則、有給休暇の買い取りは禁止されています。
上記の3つの場合のみ有給休暇の買い取りが認められています。
日本人の有給休暇の消化率は、世界的に見ても、圧倒的に低いです。
法律が改正されても、まだまだ、現実問題として、使用しにくい空気のある会社も多いのではないでしょうか。
しかし、近年では、働き方改革が推進され、労働への考え方は、大きく変化してきています。
古くから経営されている大規模な会社であったとしても、このような時代の変化を認められないようでは、将来が不安かもしれません。
2020年以降は、感染症拡大の影響で、リモートワークせざるを得なくなった会社も多くあります。
このような働き方に抵抗があったり、反対していた会社も、実際、やってみれば、出社する必要のない日・必要ない業務が多かったことは、認めざるを得ないのではないでしょうか。
当たり前ですが、オンオフのメリハリをつけて、やるときはやって、成果を出す方が、会社にも労働者にもプラスになるのではないでしょうか。
有給休暇とは、本来の趣旨では、労働者が心身ともにリフレッシュするためのものです。
そうすることが、仕事の効率を高め、労働効率が良くなり、会社へプラスに働くのではないでしょうか。