一般的に、会社の代表取締役というのは、会社の社長であることが多いかと思います。
そして、その会社のトップである、代表取締役というのは、会社内に1人だけが定められているというイメージを持っている人が多いのではないでしょうか。
しかし、会社によっては、代表取締役が2名など複数名を定めていることがあります。
法律の上では、代表取締役を複数名で登記することは可能なのでしょうか。
また、代表取締役が複数名いることに、メリットやデメリットはあるのでしょうか。
そこで、ここでは、代表取締役を複数名登記できるのか、メリットやデメリットはどのような点なのかについて、くわしく見ていきたいと思います。
目次
結論から言いますと、代表取締役は、何名でも登記することが可能となります。
そのため、極端なことをいうと、10名でも20名でも構いません。
しかし、会社に代表取締役を複数名登記する必要があるのでしょうか。
以下のような場合には、複数名の代表取締役を登記するのが良いと考えられます。
本社や支社などが複数あり、それぞれが、離れた地域にある場合などです。
このような場合に、それぞれの場所において、重要な契約などを行う必要があると、その都度、代表取締役がうかがうか、相手側に来てもらう必要が発生してしまいます。
このようなことを回避するために、複数名の代表取締役をそれぞれの場所におくことで、スムーズな取り引きが可能となります。
複数の仲間で会社を立ち上げた場合には、権限や報酬が変わってしまうと、トラブルの原因になりかねません。
そのため、同じ代表取締役としての権限を持つことで、もめずに、経営を行うことができます。
代表取締役を複数名置く場合には、定款もそのように変えておく必要があります。
代表取締役に関する定款は、通常、「代表取締役を1名定める」などのような記載となっていることが多いかと思います。
また、代表取締役は、取締役と異なり、氏名だけでなく住所も登記簿への記載が必要となります。
そのため、登記を変更し、登記簿に記載する必要があります。
代表取締役を複数名登記する場合に、以下の点に注意が必要です。
仲間同士で起業した場合に、代表取締役を複数名置くことがあります。
そのような場合に、共同代表となっていると誤解をされる方が多いようです。
代表取締役を複数名置いた場合でも、意思決定を行う際に、複数名の代表取締役で決定するわけではありません。
代表取締役というのは、各自がそれぞれ、単独で代表権を行使できるという状態となります。
会社の代表印、つまり、会社の実印というのは、代表取締役1人に対して、一つとなっています。
そのため、もし仮に、1人の代表取締役の分の実印しか登録していない場合には、その代表取締役しか、実印を使用することはできません。
このようなことを避けるためには、代表取締役1人ずつに対して、1本ずつの代表印を登記し、管理する必要があります。
代表取締役というのは、会社法における役職です。
しかし、それに対して、社長というのは、あくまでも社内における呼称となります。
そのため、代表取締役が複数名いても、全員が社長ではないというケースが多いです。
もちろん、2人とも、代表取締役であり、社長でもあるということにしても問題ありません。
しかし、通常では、1人が代表取締役社長で、もう1人は、代表取締役副社長、もしくは、会長などとなっているのが、一般的ではあります。
代表取締役を複数名登記することが可能であるとわかりました。
それでは、代表取締役が複数名いるということには、どのようなメリットやデメリットがあるのかについて、見ていきたいと思います。
代表取締役が複数名いることでのメリットは以下のようなものが考えられます。
それぞれについて、くわしく見ていきたいと思います。
代表取締役と取締役では、会社の意思決定に関しての権限が異なります。
代表取締役の場合には、契約を結び書類に印鑑を押すことを、自分の権限で行うことができます。
そのため、代表取締役が不在の場合には、会社は、意思決定を行うことができません。
このような場合には、複数の代表取締役がいると、迅速に処理することが可能となります。
支社がいくつかある場合や、海外に事業を展開している場合などには、メリットが大きいのではないでしょうか。
2人で会社を立ち上げた場合などには、共同で出資し、共同で経営することになります。
そのような場合に、どちらか一方を代表にしてしまうと、権限が偏ってしまうことで、もめたり、トラブルとなってしまったりすることがあります。
そのようなことにならないために、2人ともが同じ権限を持ち、収入も折半したほうが、気持よくビジネスを続けられるというメリットがあります。
業務において、得意な分野というのは、人それぞれ異なってきます。
各自が、得意な分野の専門家として、代表取締役の権限を用いて、意志決定を行うことで、最良な選択を行うことが可能となります。
代表取締役が複数名いることでのデメリットは以下のようなものが考えられます。
それぞれについて、くわしく見ていきたいと思います。
代表取締役が2人いると、2人の同意を元に意思決定を下すことになり、経営判断が遅くなってしまいます。
経営判断の意志決定が遅くなることによって、ビジネスチャンスを逃したり、会社の成長が遅くなってしまったりするというデメリットがあります。
また、責任の所在が不明となってしまうといったことも起こり得ます。
代表取締役複数人いて、対等な立場になると、意見の食い違いが生じたときに、その調整が難しくなってしまう可能性があります。
その場合には、関係性に亀裂が入ってしまったり、判断のスピードが遅くなってしまうといったデメリットが考えられます。
取引先などの外部から見た場合に、どちらの決済により、ビジネスを進めれば良いのかなど判断に混乱を生じさせてしまう場合があります。
また、社内においても、どちらの意見に従えば良いのかが不明確になってしまう可能性があります。
代表取締役を複数名置くことは、法律上問題ありません。
しかし、代表取締役が増えることによって、各自が自分の意志により、契約等を結んでしまうことが可能となります。
また、社内外から、権限の所在が不明確になってしまう部分もあります。
このように、メリットだけでなく、デメリットやリスクについても、よく考えたうえで、代表取締役を複数名置くことの可能性を検討するのが良いのではないでしょうか。