会社において、役員に就任した場合には、有給休暇を取得することは可能なのでしょうか。
有給休暇とは、労働基準法において、労働者に対して、付与される権利となっています。
しかし、法人の会社役員というのは、労働者としては扱われないことになっています。
そうすると、会社役員に就任すると、有給休暇は取得できなくなってしまうのでしょうか。
そこで、ここでは、会社役員は、有給休暇の取得対象ではないのかどうかということについて、くわしく見ていきたいと思います。
目次
従業員の場合は、会社と雇用関係にあり、雇用契約を結びます。
その場合には、労働基準法が適用され、有給休暇が付与される対象となります。
これに対して、取締役などの役員は、会社と委任関係を結んでおり、従業員のように雇用契約を結んでいません。
ですので、労働者に適用される労働基準法の対象にはなりません。
従業員の勤務時間や休日などは、それぞれの会社の就業規則の定めによるものとなります。
この就業規則も、労働者に適用されるものであって、役員には適用されません。
役員の場合は、役員規定という会社の定めに基づき、経営に携わることになります。
役員の場合は、従業員のように勤務時間が決められるのではなく、会社に何かが起こった場合には、時間に関係なく動くことが求められます。
役員の場合、休日に関しても、勤務時間と同じで、就業規則が適用されるわけではありません。
そのため、必要に応じて、働くということになります。
そうはいっても、誰も出勤していない会社に、一人だけいても、何もしようがないということにもなり得ますよね。
役員には、就業規則による勤務時間の定めがないため、残業という概念もないということになります。
そのため、会社の状況に応じて、1日に3時間だけ働くということもできますし、12時間以上働く必要がある場合もあります。
ただし、いくら働いても残業にはなりませんし、もちろん、残業代も支給されません。
上記で見てきたように、取締役など役員の場合には、労働基準法や就業規則が適用されず、有給休暇の対象となりません。
しかし、役員であっても、兼務役員の場合には、労働者と同じ扱いをされる場合があります。
役員の場合でも、法人の使用人としての職制上の地位を有し、かつ、常時使用人としての職務に従事する者を兼務役員といいます。
兼務役員であるかどうかというのは、他の労働者と同様の労働性が認められるかどうか、というのが判断基準となります。
兼務役員の場合には、雇用保険の適用にもなるため、通常の労働者と扱いは近いものとなります。
会社の事情などにより、役員として働いていた人が、従業員の扱いになる場合もあります。
このような場合には、従業員となってからは、有給休暇の取得対象となります。
そうすると、役員から従業員になってから、6ヶ月経過後に、有給休暇が10日付与されるということになるのでしょうか。
原則としては、そのような形になります。
しかし、この取り決めについては、会社で定めるのが良いのではないでしょうか。
もし、役員として10年以上働いているなど、会社に対して、大きく貢献している場合に、新入社員と同等の扱いをするのは、適切ではないと感じる可能性もあるでしょう。
2019年4月より、働き方改革の一環として、労働基準法の一部が改正されました。
そのことにより、年10日以上の有給休暇が付与される労働者に対して、会社は、年5日の有給休暇を取得させる義務を負うことになりました。
この場合、兼務役員も、この有給休暇取得義務対象者となるのでしょうか。
これは、年間の有給休暇の付与日数が10日以上付与されているかどうかの判断になるため、兼務役員としての割合に関わります。
兼務役員の中には、使用人としての割合と労働者としての割合が、日によって分かれている場合もあります。
例えば、週2日だけは役員扱いなどという場合です。
このような場合には、正社員のように、有給休暇が、年10日付与されていない可能性があります。
ですので、兼務役員が、有給休暇取得義務対象者となるかどうかは、年間の有給休暇付与日数による、ということになります。
通常の従業員と同等に、労働性が認められる場合を除くと、役員の場合には、有給休暇を取得することができません。
そもそも、役員は、労働基準法や就業規則が適用される立場ではないので、勤務時間などの概念もありません。
また、雇用保険の適用もありませんので、もし、役員へ就任することをお願いされている場合には、働き方や待遇というのが、自分に合っているのかをよく考える必要があります。